開いたドアから入ってきたのは2人の男の子

何やら談笑しながらドアを勢いよく開けたのはオールバックで元気の良い子(私の記憶が正しければ足がすごく速かった気がする)

もう一人は何だか柔らかい雰囲気の子だった(こちらも記憶が正しければすごくボールコントロールが上手だった気がする)

オールバック君(仮名)と目が合った

そして


勢いよくドアが閉められた

・・・訂正

ドアから入ってきた、じゃなくて入ろうとした、だ




本日ハ晴天ナリ





(あれ?)

私の気のせいじゃなければ目が合った

合った上でドアを閉められた

「・・・不破君、今のって同室の人?」

「ああ。小岩と杉原だ」

ならば少年達よ。この部屋で間違いはないんじゃないのかね?

「何で閉めたの?小岩君」

「だ、だ、だって今誰か居たって!!

 誰かっつーか女!あの三人目のマネージャーが不破と一緒にいたぞ!!」

・・・明らかに私、歓迎されてないね

ちらり、と不破君を見ると不破君の表情はいつもと変わらず。何を考えてるのかよく分からなかった

うーん・・・

(そりゃ歓迎はされないって分かってたけど)

何を考えているのか表情からは伺えない不破君

何だかとっても申し訳なく思えた

(私を部屋に入れた事でさっきの人達と喧嘩になったりしたらどうしよう・・・)

いっそ、窓から逃亡を図ってみてはどうだろう、今ならあの人達も「おや、今のは夢だったんだな」で済むかもしれない

何て考えていると私よりも先に不破君が動いた

真っ直ぐドアに近づくと躊躇なくその扉を開いたのだ

もちろん。声を上げる暇もなかった


「うおっ不破・・・!」

突然ドアが開いたことに驚いたのかオールバックの少年はどもりながら声を上げた

「何故入らない?」

疑問系なのに有無言わせぬ圧迫感

それを人は脅しと呼びます

無言の圧迫ならぬ無表情の圧迫で勝利を得た不破君は二人を従え部屋の中へと戻ってきた

やっぱり窓から出るべきだったと心の中で後悔した

(・・・うわ、ぁ)

入ってきたオールバックの男の子は露骨に怯えていた

そして自分だって初対面の人ににこにこと笑顔を振りまけるような性格じゃない

それでも精一杯、今の時間にふさわしい挨拶をしてみた

「こ、こんばんは」

「こんばんは」

返事を返してくれたのはもう一人の男の子の方だった

目が合うとにっこり笑ってくれた

「・・・・あ、あの私、その、し・・・風祭君にね、ちょっと用があって・・・
 
 えーっと・・・あ、のすぐ出て行きますので・・・・」

そこで笑い返せないのが私

笑顔の隣で怯えてる人がいるのも原因かもしれないけど(いや人の所為にしちゃいけないか)

とりあえず私がここにいる理由を話して不破君の汚名を返上しなければ!と思ったんです

それにしてもどもりすぎだろ、私

頭の中でリピートさせても文章になってるのかも定かでない

不審者だ。

もう私ってばどうしようもない不審者だ・・・

居たたまれなくなりただ俯くことしか出来なかった(本当にごめん。不破君)

ガチャッ

「ただいま・・・あれ?みんなどうしたの?」

思い沈黙が続いていたこの部屋にドアの開く音はとても大きく響いた

「将くっ ゴンッ

思いっきり立ち上がったのがいけなかったんだろう

ベットの柱に思いっきり頭を打ち付けてしまった。

痛さの余り声にならない悲鳴をあげて頭を抑える。将君が驚いた声で私の名前を呼ぶのが聞こえたけど返事も出来なかった

今望むものは一つ

穴。穴があったら入りたい・・・!

ちゃん・・・大丈夫?」

慌てて駆け寄ってくれた将君。う、あ・・・恥ずかしい

そして思わずしゃがみ込んでしまっていた私を不破君が立たせてくれた

「あ、ありがとう・・・二人とも」

痛いのと恥ずかしいのと穴に入りたいのと。色んな感情がぐるぐる回って結局俯いたままお礼を言う羽目になった

「痛いよね?ごめんね、僕が吃驚させたから・・・」

「えっ!?いや将君は関係ないよ!私が勝手にぶつけただけだから!!」

一体何しに来たんだ私!?将君に謝らせに来たのか!?

そして後ろの男の子二人は呆然という感じでこっちを見てるぞ!?(どうする?戦う?)

「ほ、本当に大丈夫だから」

もう一度そういうと将君は不安げながらも謝るのを止めてくれた

ほっとしたのもつかの間。これ以上ここにいて迷惑をかけてはいけない

そう思い持っていた包みをそのまま差し出した

「え?」

「・・・おにぎりなの。将君、今日晩ご飯食べてないでしょ?

 本当はもっとちゃんとしたもの持ってきたかったけどおかずとか殆ど残ってなかったから・・・」

こんなので悪いけど・・・と心の中で続けた

そんな両手に触れてくるものがあった

「ありがとう」

将君の手

私の手からおにぎりとそっと取ってそしてあの、笑顔を向けてくれた

つられて私も笑顔になる

「実はすっごくお腹空いてたんだ」

「昼間いっぱい動いたもんね」

あぁ、良かった

将君の笑顔が見れて。ひどく安心できるその笑顔

そうして後2,3言話そうと口を開き掛けて・・・そのまま固まった

何故ってこぼれ落ちそうなほど目を見開いてこっちを凝視してるオールバック少年を見てしまったから

・・・ご、ごめんなさい

「わ、私そろそろ戻るね。ごめんね、遅くに来ちゃって・・・」

にじりにじり、と出来るだけオールバック少年と距離を保ちながらドアへ近づく

将君が「え、もう?」と言ってくれたのが嬉しかった

「明日も色々大変だろうけど頑張ってね?」

ドアの前まで来て将君にそっとそう告げる。

「うん」

大きく頷いてくれた将君にまた笑みが零れた

「え。あ・もちろん不破君もね。

 不破君、前よりずっと上手くなってて吃驚した。明日も楽しみだね」

ぬっと将君の後ろから現れた不破君に驚きつつもそう告げる

不破君もまた「ああ」と返事をくれた

それじゃあ、と部屋を去ろうとしたが・・・その足をちょっとだけ止めた

「あの・・・二人も頑張って・・・下さい・・・」

将君と不破君越しに部屋の中にいるオールバック少年とニコニコ少年にもやっとの思いでそれだけ言った

言った矢先すごく居たたまれなくなって逃げるように部屋に戻った




----------後書き-----------------------------------------------------------------------------------

淡々としてるね・・・。
将君の素敵スマイルで元気になったちゃん
あれ、予定ではここで小岩君と杉原君とは仲良くなるハズだったんだけど・・・
あれ?

・・・まぁ次回はね。一応新しい子と触れ合う予定っすよ?(予定は未定〜)

                                   8月28日 砂来陸

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