ぽろぽろ涙を流すを必死で慰めるスクアーロ

「何してくれてんだぁベル!人がどんだけ頑張って泣き止ませたと思ってんだあ!!」

「今泣いてんのはスクアーロの声にびびってんじゃね?」

「!ち、違います・・・うさぎさんが・・・」

「うさぎぃ?」

「スクアロさんがくれたうさぎさんが・・・(じわっ)」

「泣くなぁぁぁあ!!」


ピクっ

ほぼ同時に3人は動きを止めた

伏せろぉ!」

言葉が早かったか行動が早かったか気がつけはは床に押し付けられていた

と同時に轟音が鳴り響く

(な、なに・・・)

「人の部屋の前で何騒いでやがるんだカス共」

骸さんウ゛ァリアーは突然ドアが粉々になるみたいです






い*ち*と*せ-玄鳥去-







何やら破片をいっぱいくっつけたスクアーロの頭にそっと手を伸ばす

「ススクアーロさん怪我してないですか」

「っ俺は平気だぁ」

お前こそ大丈夫だろうなぁ

は無傷である

何せスクアーロに覆いかぶされてドアを吹っ飛ばした人物を見てすらいない

「・・・おいカスそいつは何だ」

威圧感のある声というのはこういうのを言うんだろう

ずぐんとお腹に響く声には驚き小さな身体をさらに縮こませた

「・・・沢田綱吉の娘だぁ」

ゲッともうひとつ声がする多分金色の髪をした笑ってるのに笑ってなかった人

「どういうことだ」

ピリピリ、する

空気が痛い

「・・・それを説明する途中だったんだぁ・・・」

うんざり、諦め、どこか疲れたような声でスクアーロは呟いた

***

油断すると沈んでしまいそうなフカフカソファには座っていた

手には綿が飛び出して今にも首がちぎれそうな、痛々しい姿になったうさぎのぬいぐるみがある

スクアーロには「・・・そいつは天命を全うしたんだあ。置いとけぇ」と言われたがは頑なに手放さなかった

「ボンゴレから浚ってきたのか」

「そんな訳あるかぁ!は自分の意思で来たんだあ!」

うさぎに瀕死の重傷を与えた人は「俺カンケーねぇし」といなくなってしまった

だから今この部屋にはとスクアーロそれから・・・

「何の用だドチビ」

(わ、私に話しかけてます・・・)

赤い瞳が真っすぐ睨みつけてきてはあからさまにビクリとしてしまう

舌打ちが返ってくる

・・・悪循環である

「コイツは」

「あ、あのっザンザスさん」

はうさぎを横に置いてお辞儀をした

「初めましてザンザスさん。沢田です。えぇっと・・・お仕事中お邪魔してごめんなさい」

「・・・」

あ、あれぇ?

「・・・間違えましたか?」

骸から与えられた知識。それからスクアーロがボスに会いに行くと言った言葉

そこから彼がウ゛ァリアーのボス、ザンザスなのだと推測したのだ

「・・・ドチビ」

「(名前言ったのに・・・)は、はいっ」

「何の用だ」

「あ、あの・・・フランさんに・・・会いたくて」

手はいつの間にかスクアーロの服の端っこを掴んでいる

「フラン?」

「は、はいっ。フランさんも助けてくれたから・・・えっと、お礼を言いたくて」

スクアーロもいきなりキレて発砲しないことを祈っていた

「おい。ドカス」

「(ここで俺にふるのか!?)なんだぁ」

「呼んでこい」

「は?」

「(イラッ)さっさとしろドカス」

「あ、あのっ呼ばなくても私が」

「てめぇは動くな」

「はいっ!」

お、置いていかないでぇ・・・!

そんなの心境がヒシヒシと伝わっているスクアーロだったがボスには逆らえない・・・すぐ戻るから耐えろ!と願いつつスクアーロは部屋を出て行った

「・・・」

「・・・」

スクアーロさんがドアの向こうへ消えてしまったと同時に椅子が傾いた

「わっ」

慌ててバランスをとって・・・固まった

さっきまでスクアーロが座ってた場所にザンザスが座っていた

思わず見上げるとバッチリ目が合った

(こ、怖い!)

「初めましてじゃねえ」

「え?」

赤い瞳は真っすぐを見つめている

「お前が赤ん坊の時、何度か会ってる」

「・・・じゃあザンザスさんは私のこと知ってるんですか?」

「あぁ」

覚えてなくてごめんなさい、と言うべきだろうか?

確かに何もしてなくても謝りたくなる威圧感を感じるが・・・

「怪我はもう良いのか」

降ってきた言葉にきょとんとする

怪我?なんのことだろう

「部屋から出られない大怪我だったんだろ」

何故か伝言ゲームを思い出した。数日寝て完治したというのに大怪我だなんて誤解も甚だしい

「そ、んなに大きな怪我はなかったです。すぐに治りました。大丈夫です」

ふるふる首を振ればぐいっと何かに止められた

「沢田綱吉は相当な過保護みたいだな」

鼻がくっつきそうなくらい至近距離にザンザスさんがいて息を止めた

「てめぇの披露宴話があったが例の誘拐騒ぎのせいで白紙になった」

赤い瞳は射ぬくように

「・・・知りませんでした」

「だろうな。元々ジャポーネにやるっつう話自体俺は反対だった。

 手元に置かねぇなら縁を切れば良いものを落ち着いたらまた呼び戻すなんざ流石は沢田綱吉だ。甘い上に何も分かっちゃいねぇ」

「・・・」

「知性がついてからマフィアの子供として育てるなんざ不可能に決まってる。それとも完璧に隠し通すつもりかもしれねぇがな」

口元だけが弧を描く。何かを試すような面白がるような奇妙な笑顔だった

「・・・知って、ます」

「あん?」

「ツナ君は教えてくれませんけど教えてくれた人がいます。最初はマフィアってお仕事をしてるって聞いてもよく、わかりませんでしたけど」

『懺悔と同じですよ』

骸さんは嘲笑いながらそう言った

『イタリアに向かいながら教えられたのでしょう?元々に拒否権なんてなかったんです』

知ってて欲しかった。赦して欲しかった

アルコバレーノの自己満足ですよね。・・・くだらない、と彼は小さく呟いた

ヤクザのような仕事と言われてもピンとこなかった

最初は、何も知らなかった。知らなくてもただツナ君に会えるだけで舞い上がっていた

何も考えていなかった

「ツナ君達がどんなお仕事をしてて、スクアーロさん達が・・・人を殺すことがあるって・・・」

言葉にするのも辛いのだろう泣きそうな顔で、しかし必死に堪えながらは続ける

「でも私はここにいます」

駄々をこねて、泣いて、骸さんを困らせて、ようやく前を向いた

ここにいたいと願ったのは自分だ

目を逸らしてはいけない。は直感的にそう思った

傍からみたら小動物と肉食獣のような二人はただ睨み合っていた

「ハッ」

先に視線を外したのは大きな獣の方だった

え、笑われ・・・

手を離され視線が外れる

「沢田綱吉より根性がありそうだな」

面白いものを見た、そんな瞳だった

の方が困惑して首を傾げる

しかし、ザンザスはそれすら面白そうに笑ってみせた

「悪くねぇな」

「?」

何がですか?という言葉は扉の音に遮られた

「う゛ぉぉい!連れてきたぞぉ!!」

扉が開いてスクアーロさんが入ってきた。その後ろから見覚えのある淡い色の頭が付いてくる

「何なんですかー。ミー今日非番なんですけどー。パワハラですかー?」

「仕事じゃねぇつってんだろぉ!!フラン」

「だったら尚更休みまで顔合わせたくないですー」

「悪かったなぁぁあ!!」

「うるせぇ。カス共」

ビュン、と目の前をすごいスピードで何か通りすぎた

「・・・う?」

何か壊れるような音が聞こえたが見えなかった

「ボスやっぱりパワハラですー・・・」

「・・・フランさん?」

スクアーロさんと一緒に現れた人がこっちを向いた

エメラルドグリーンの瞳

「おぉー。運命の再会ですねー」

「おいフラン。コイツの面倒見てやれ。カス鮫は仕事だ」

「なっ」

「え」

「りょーかいですボスー」

どうすれば・・・まごまごしているとフランさんが手招きをしていた

付いてきなさいって事でしょうか・・・?

「おい

ザンザスさんに初めて名前を呼ばれた

目を丸くして振り返る

と、何故かザンザスさんは瀕死のぬいぐるみを片手に持っていた

皮一枚、否布一枚で繋がったウサギの頭を

可哀相にも程がある

「これは俺が預かる」

「えっ」

「文句は聞かねぇ」

「・・・」

「代わりにしばらく置いてやる」

「・・・、ありがとうございますっ」

何がお気に召したのか分からないけど追い返されないということは分かった

慌てて頭を下げてフランさんの元へ急ぐ

途中スクアーロさんに捕まった

「・・・ザンザスにはイジメられなかったかぁ?」

「大丈夫です!ザンザスさん優しいです、よ?」

「・・・目をやられたのかぁ?」

「?」