『諦めるのか?』

『まだ早いだろう』

まるでこんぺいとうだ、とは思った

降ってくる言葉はとても優しく、甘くキラキラと輝いていて幸せな気分になるから

そんなこんぺいとうに埋もれてしまわないように

きちんと父親と向き合うためにまずは知ろうと思ったのだ







い*ち*と*せ-土潤溽暑-





まるでお伽話話に出てくるような世界だった

飾ってある絵画も天井から吊されているシャンデリアも給仕をしているボーイ達も

それからこのパーティ会場にいる全ての人が眩しい

。あ、あのさ・・・」

「は、はいっ」

気を抜くとすぐにツナと距離が空いてしまう

慌てて返事をしつつ顔を上げるとツナの赤い顔があった

何故かツナは赤い顔で手をグーパーと繰り返している。そしてその後ろでは獄寺がまるで応援するような表情で見守っていた

・・・?

「あ、あの・・・」

「・・・?はい」

「は、はぐれるといけないから手を「ボンゴレデーチモ!!」

ビクリ、と肩が跳ねる

クラシックよりも大きな声の男の人は足早に近づいてきた

思わずツナの陰に隠れる

「ようこそおいで下さいました!ボンゴデーチモ!」

「こちらこそ招待いただき光栄です。とても素敵なパーティーですね」

にこやかに挨拶を交わすツナには熱っぽいため息をついた

優雅、とはこういう時に使う言葉なんだろう

突然話し掛けられて笑顔で応対する

自分にはとても出来そうにない・・・

「ボンゴレデーチモ。先程から気になっていたのですが・・・そちらの可愛らしいお嬢さんは・・・?」

「紹介が遅れました。娘のです」

名前を呼ばれて心拍数が上がる

恐る恐る顔を上げるとこぼれ落ちそうな目玉が2つこちらを見ていた

「っ!」

「失礼、驚かせてしまいましたか?ボンゴレの姫君」

思いっきり後退りしてしまいました・・・

挨拶をしないといけない。しかし、言葉が何も思い出せない

お嬢様、」

そっと背中を押され、大丈夫ですよ。と囁かれた

安心させるように獄寺が微笑んでいた

やっと挨拶の言葉を思い出し、慌てて頭を下げた

「沢田、です。初めまして」

「お辞儀はジャポーネ式の挨拶ですね。どうかお顔を見せて下さい」

まだ心臓はバクバクいっているがそっと顔を上げた

目が、合った

あまりにもじっと見つめてくるものだからも動くに動けない

「・・・本当に愛くるしい」

どれくらい時間が経ったのか、実際は数秒のことだったのか目元を和ませた男性はしみじみという風に呟いた

「あ、ありがとうございます」

顔に熱が集まるのが感じられた

きっと真っ赤に違いない

はまだイタリアに来て間もないんですよ。こういった社交の場も初めてなもので・・・」

やんわりと執り成すようにツナが言った

ちなみにこの言葉をボンゴレ式に直訳すると「そんなところも可愛いでしょ?」である

・・・

さん」

「は、はいっ」

「もしよろしければ私の息子にエスコートさせて頂けませんか?」

「え、」

こちらが返事をする前に我ながら名案だ、と言わんばかりに満悦の笑みで頷いていた

え、と・・・

「セシル」

名前を呼ばれて現れたのはよりもいくつか年上の金色の髪に碧い瞳の少年だった

「紹介します。息子のセシルです」

「こんばんは!セシルです」

キラキラと輝く淡い金色の髪が揺れる

「こ、んばんは・・・」

たどたどしい挨拶になってしまったがニコリ、とセシルは微笑んだ

「セシル。こちらはボンゴレのご令嬢でさんだよ。」

?」

「は、はいっ」

無遠慮な視線にしばらく固まっているとスイ、と手が伸びてきた

「きゃっ」

「こっちに美味しいケーキがあるんだ!」

引っ張られる力に逆らえずはただ右足と左足を交互に動かす

やっとの思いで首だけ後ろに向けるとツナと獄寺と目が合った

二人しておんなじ表情。あ、って顔をしている

その横でセシルの父親だけがニコニコとしている

。おとなはおとなの話があるんだぞ」

ぐいっと引っ張られて耳元で告げられた言葉は雪崩のように心を侵食してきた

「・・・」

身体中のエネルギーを使って表情を作った

笑いなさい、と

もう一度3人と目が合ったのを確認してはセシルに向き直った

これも一つの家族の形なのだ、とは自分に言い聞かせる

上手く言葉にできないから思いやる

それがの精一杯だった

繋がれた手にほんの少しだけ力を込める

本当はずっと一緒にいたかったけど・・・

少し離れたところからでもツナの姿が見えるなら

どんどん欲張りになる気持ちに蓋をしては必死にセシルの足並みに合わせた