コンッ・・・
ふっと意識が浮上した
目を擦るとさらに意識がはっきりしてくる
コンッ・・・
そうして扉がノックされていることに気づいた
急いで布団を引きはがし扉に走る
誰かが迎えに来るまで寝過ごすなんて・・・!
手櫛で必死に髪を宥めながら返事をする
「は、はいっどうぞ!」
カチャ・・・
遠慮がちに開いた扉から現れたのは未だに苦手なメイドさん達でも大好きな父の家庭教師でもない
「・・・?」
大きな一つ目が印象的な女性だった
い*ち*と*せ-桐始結花-
「わ、とっ」
「・・・大丈夫?」
スカートが広がりすぎて足元が見えないなんて初めての事ではまるで綱渡りをしているかのような足取りだった
「・・・手」
差し出された白い手に怖ず怖ずと掴まる
顔を上げると瞳が合って少しドキドキしてしまう
ひとつ目の女性、クロームさんは口数な女性だった
無愛想という訳ではなく落ち着いた大人の人というのがの印象である
・・・お近づきのしるしに
そう言って差し出されたムギチョコには少し驚いたが
「・・・緊張してる?」
繋いだ手が僅かに震えていたのだろう
に合わせて緩やかになっていく歩調に溶けるような優しい声だった
「す、こし」
だから思わず正直に答えてしまう
繋いだ手は温かい
「・・・大丈夫。すごく可愛いから」
「・・・」
むしろ服が可愛すぎるので着られている、と思う
歩く度にふわりふわりと裾が揺れる
スカートの下に履いているパニエというものがくすぐったい
リボンで髪を結っているので首はスースーする
ヒールを履くなんて大人になってからだと思っていたのに今、私の足元を彩っている
つまり、上から下まで着慣れない物なのだ
コーディネートはクロームである
「へ、変じゃありませんか?」
ふるふるとクロームは首を横に振る
「似合ってる」
真っ直ぐにそう言われは少しだけ緊張を解いた
「・・・ありがとうございます」
ふいに隣の空気を緩む
クロームさんが笑ったのだと分かった
***
「!す、すごく可愛「良く似合ってるぞ」
「あ、ありがとうございます」
すい、と掬いあげるように頬を撫でられては照れたように笑った
そしてリボーンは満足げにを抱き上げる
抱き上げる手つきはいつも以上に丁寧だった
きっと服にシワが寄らないようにとの配慮だろう
「は白色がよく似合うのなー」
頭を撫でようとした山本の手は獄寺によって叩き落とされた
「お嬢様のお櫛が乱れたらどうするんだ!この野球馬鹿!!あ、お嬢様。ポニーテールも大変よくお似合いです!!」
「ありがとうございます。山本さん、獄寺さん」
「クロームとは仲良くなったのか?」
「はい。クロームさんとっても優しいんです」
「そうか。良かったな」
チュッと頬にキスを落とされ思わず目を閉じてしまう
キス、という習慣だけは未だに慣れない
「リボーン!!」
くわん、と耳に響く声に身体が浮いた
「何するんだツナ」
「それはこっちの台詞だよ!・・・、大丈夫?」
「は、はい」
・・・特に、心配されるようなことは何もなかったと思うんですが・・・
濃紺のハンカチーフで頬を拭われ噛まれた、と勘違いされたのかとは一人で納得した
「大丈夫で、す」
近すぎる距離にほんのりと頬を染めては改めてツナを見た
格好良いです・・・
「どうしたの?」
ふるふる首を横に振っては赤らめた顔を俯かせた
もし、これがリボーン相手だったら迷わず言葉にしていただろう
親子とは何だろう
は最近そればかり考えている
どこまで近づいて良いのか
どこまで話しをして良いのか
その距離をまだ測りきれないでいた
ツナももう一度を褒めてやれば良いものをリボーンに遮られて心が折れてしまっている
俯いたに一人慌てて、しかし何も言えないままそっと床に下ろした
(・・・ダメツナめ)
両者の思惑が手にとるように解るリボーンだけが密かにため息をついた
つまり二人は似た者同士で同じようなところに躓き悩む
更には空気の流れに敏感でツナは無駄に勘が良い
色々なものが裏目に出ていた
「・・・ボス。のこと、ちゃんとエスコートしてね・・・」
そんな空気を打ち破るようにクロームがぽつりと呟いた
「え、あ。あ、うんっ!もっもちろん!!」
「よ、よろしくお願いします」
「こっ、こちらこそ!」
・・・この親子が真っ当な親子らしくなるのはいつのことやら
リボーンはまたため息が零れた
***
「楽しんでこいよ。」
車に乗り込む直前まで浮かない顔をしていただったがリボーンの言葉に少しだけ笑顔を見せた
「いってきます」
ツナが煩く喚くのでハグに留めて見送った
「・・・行っちまったなー」
「・・・と・・・もっと一緒にいたかった・・・」
今回、パーティに参加するのはツナ、。守護者からは獄寺のみである
古くからボンゴレと付き合いがあるマフィアグループの内々的なパーティーで先代からの信頼も厚い
イレギュラーなのはのほうでボディーガードと称して人員を増やすのは相手方にも失礼にあたる
故にツナと獄寺にくれぐれもから目を離すなと言い付けて今回は見送る側に立った
「俺も一緒に行きたかったなー」
「・・・私も」
再三聞いた駄々っ子のような言葉にリボーンも飽き飽きしていた
一緒に行きたかったのは自分とて同じだ
贔屓目なしでが一番懐いているのは自分なのだから
「今更ぐちぐち言ってもしょうがないだろ」
ほっとくといつまでもそこに立ち尽くしてそうな二人を引きずってリボーンはアジトへ入った
空には明るいにも関わらず白い月が浮かんでいた
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