目に見て分かる程にボンゴレデーチモはソワソワしていた

そして同じ部屋にいるトッティも妙に扉を気にしていた

コンコン、とノック音がした瞬間、二人は一斉に走り出した

「トッティ!俺が出るから!!」

「何をおっしゃいますか。客人を迎えるのは私の勤めでございます!」

扉の向こうにいるであろう少女のために

「「(お嬢様)!!」」

「・・・悪かったな。俺で」

引き攣った笑顔のリボーンがそこに立っていた

見るからにがっかりした成人男性2人にリボーンまで溜息をつきたくなった

そんな中だがどうにかこうにか話し合いをもたれた

ひとつ、








い*ち*と*せ-鷹乃学習-





がボンゴレ本部へ来て一週間

は一日の殆どを部屋の中で過ごしていた

一番の遠出が庭というインドアっぷりである

「リボーン君」

伺いをたてる癖がついたのはノックの音がすると不機嫌になることに気付いたからだ

「・・・開けてやれ」

応の返事にはホッとしと扉に向かう

コンコンッ少し早く大きなノック音

きっと・・・

ゆっくりとドアを引けば

「よっ!いい子にしてたか?」

くしゃりと髪をなでてくる山本が立っていた

「こんにちは。山本さん」

「また小僧と本読んでたのか?たまには外に出たほうが良いぞー?そうだ!キャッチボールでもするか?」

ニコニコと笑顔を向けてくる山本にが返事をするより早く冷ややかな声が飛んでくる

「そう言って昨日全力投球したのは何処のどいつだ?」

も苦笑いである

一昨日、生まれて初めてのキャッチボールでトラウマになった。

野球初心者のにとって山本の投球は十分殺傷力があった

危機を察したリボーンがの首根っこを引っ張ってくれなければ間違いなく顔面強打したに違いない

「そっかー。じゃ、また今度な!」

・・・彼はめげない人種らしい。そしてにマカロンを差し出す

「わぁ・・・!」

「おやつだ。一緒に食おうぜ」

「ありがとうございます・・・!」

壊れ物のように慎重なマカロンの入った箱を運ぶ

読みかけの本にしおりを挟んでやり、リボーンも席を立った。

に飲み物を準備するためである


山本武とが会ったのはイタリアに来て3日目の夜だった

彼は一もニもなくただ、を歓迎した

大きくなったな

元気だったか

会えて嬉しい、と

くまなく抱きしめながら山本はそう話した

そしてもう一人

「あ」

「・・・どいつもこいつも」

カフェオレを持ったリボーンが呆れたような声で呟く

そしてて目が合うと諦めたように頷いた

マカロンをテーブルの上に置くと急いで扉へ向かう

高いノック音が等間隔で3回

「御機嫌如何ですか!?お嬢様!」

「こんにちは。獄寺さん」

両手一杯に花を抱えた獄寺が満悦の笑みで立っていた

「本日はお花をお持ちしました!」

色とりどりの花束はまるで野原をそのまま運んで来たようでは顔を綻ばせた

「ありがとうございます」

彼はにただただ敬愛を示した

お会いできて光栄です

お元気そうで何よりです

今後もどうぞよろしくお願いいたします、と

深く頭を垂れる姿にのほうが困ってしまった

花を花瓶にいけてくれる獄寺とマカロンの包みを開けてくれる山本

毎日部屋を訪れてくれる二人は優しい人達だとも思う



名前を呼ばれ、顔を上げればふわりと香る

ミルクとコーヒーの香り

「冷めるぞ」

「ありがとうございます。リボーン君」

両手で包みこむようにカップを受け取る

そんな様子をつぶさに見ていたリボーンはをテーブルのほうへ促す

このメンバーが揃うのは珍しいことではない

毎日この優雅な昼下がりを狙ってやってくる二人とティータイムを過ごすのがここのところ日課になっていた

3人分のエスプレッソと1人分のカフェオレを用意することにももう慣れてしまったリボーンである

ほくほくと笑顔を浮かべながら指定の席・・・自分の隣へ腰掛けるを見てリボーンもつられて顔がゆるむ

引きこもりがちだがはこれでも笑うようになった

イタリアに戻ってから意地でツナの手伝いをしなかったリボーンは(2週間は絶対に書類すら見るものか)常にと一緒にいた

ふわりとしたわたあめのような笑みを浮かべる。酷く優しい笑顔

少なくてもこのメンバーの時はまだこの表情を見ることが出来る

朝は駄目だ

すでに起きていようが眠っていて起こされようがメイドの姿を見ただけで委縮する

トッティの姿をみた時はまだぎこちないが笑える

ツナと会った時は照れたような笑みを浮かべ

自分と会った時は満面の笑みを見せてくれる

・・・こうやって比較すると俺が一番懐かれてるな

「リボーン君・・・?」

「ん」

覗きこむようにが見上げていた

「どうかしたんですか?リボーンさん」

「どうしたんだー?小僧」

・・・どうやら自分は思った以上に考え込んでいたらしい

「何でもない。気にするな」

一応は3人に向けての言葉だが顔は無意識にを向いている

いやいや本当に無意識で

まだ心配そうな顔だっただが安心させるようにそっと手を伸ばした

顔に手を添えて撫でるようにそっと滑らせる

「何て顔してんだ」

「だって、んっ・・・」

くすぐったそうに身をよじるに満足げに笑いかける

・・・そんな光景に獄寺はカップを落としてしまい、山本は持っていたマカロンを思わず握り潰した

((なんだ、この甘ったるい恋人のような空気は))

それが、ここ数日のボンゴレ本部のある日々だった