泣きながら文句を言う

昔から変わってないなとつくづく思う

泣き止んでから喋れば良いのに泣きながら喋るのだ

おかげで変に言葉が途切れて何を言ってるのか聞き取るのに苦労する

我ながら、コイツには…

「お、にいちゃんの馬鹿ぁ…」

…我ながら妹には甘いのだ

コートのど真ん中で他の選手から大注目を浴びようとも。しょうがないなぁ、という気分にさせられる






本日ハ晴天ナリ






自覚をしたのはきっとそう、直樹と話しをしたとき

「私、はもうサッカーしないから」

気付いてしまったらもうダメなんだ

マネージャーをしてて、常々気づかなかったのが不思議だ

私にとってサッカーはいつだって男の子と混じってやるものだった

今はまだ良い。

みんな私を受け入れてくれるから

だけどこれからは?


きっとみんなは私よりずっと上手になる

背が伸びて力だってずっと強くなるだろう

ずっと対等でいられる訳ない

私にとってサッカーは

ゴールキーパーが好きなのはみんなのプレーが見える特等席だったから


ねえ、亮覚えてる?

私がサッカーを始めたのは亮と一緒に遊びたったからなんだよ

涙は私の腕を伝ってぼたぼたと地面に落ちていく

喋るのを止めたら本当に幼子のように声をあげて泣くだろう

だから無理にでも喋り続ける拙い言葉

「ば、かぁ」

組み合わせればかろうじて『馬鹿』と聞こえる言葉

これだけ涙を流していれば顔はぐしゃぐしゃなはず

いっそシャツの裾で拭くか

「っ」

次の言葉が出て来なかったのは亮がいきなり引っ張ったから

目の前にあるのは亮が着ているシャツ

なんで

思わずしがみついてしまう

そのまま頭を肩に押し付けた

なんで

ぐしゃぐしゃの酷い顔してるのに

「あ、きらのっ馬鹿ぁ」

わかってますよ、と言うよに頭を撫でる手もとまらなかった

涙は更に溢れた

サッカーをするなら一番になりたい

だけど違うでしょう?

直樹はすごい

自分でそれに気づいたんだから



一番になるのは自分じゃなくても良い



一緒のコートに立てなくても頑張れって言える距離にいられるなら


「お前子供のまんまだな」

かちん、と来る言葉に思わず顔をあげて抗議

「うる、さいっ!」

超至近距離でにらみ合う羽目になったがの顔をじっと見つめていた亮が耐えかねたように噴き出した

ひ、人の顔見て噴き出すって失礼にもほどがある!!

「っ・・・ブサイクな顔」

溜めて笑いながら言う言葉がそれ!?

ドラマみたいな声も殺してほろほろ涙だけ零すなんて芸当できるわけない

そんな泣きかたは100%嘘泣きだ泣いたら普通嗚咽が零れるし目だって赤くなる

盛大に泣いたらそりゃ酷い顔にだってなりますよ!

「亮だって子供じゃないっ!」

言い負かされるのが嫌で思わず噛みつく

もう、顔がどうだとか言ってらんない!

「少なくてもよりは大人だけどな」

うっ

何も言い返せない…

だって亮が言ってることはほんとのことだから

もう落ちたことは割り切れてる亮

それに対して引きずって泣いてる自分

誰がどう見たって私の方が子供だ

「どうせ子供だよ」

思い通りにいかないと不機嫌になってスグ泣くしすぐ怒る 苦手だからって嫌な事からは逃げる

そんな子供だ

「亮は大人なんでしょ?だったら子供の戯言くらい叶えてみせてよ。」

我ながら可愛げのカケラもない言い方だったと思う


「こんなところで諦めないで 負けないで

 ・・・サッカー選手になってみせろ」


私は信じて疑わなかったのだ

亮はきっとサッカー選手になるんだ、って

子供の我儘でも戯言でも何だっていい。これを戯言っていうんだったら

それでいて自分は大人だっていうんだったら



大人なら、子供の戯言くらい叶えてみせろ!








------------------後書き--------------------------------------------------------------------------------
無駄に長くなりました。
絶対ここまで入れたい!子供の戯言くらい〜の下りは絶対言わせたい!と、こんなことになりました。
あれー?この麗しき(?)兄妹愛はどこまで続くのでしょう

                                4月20日 砂来陸

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