ここに来たのはの頼みに他ならない

・・・まぁ確かに朝から様子は変だと思ってたからに泣きそうな顔をされて丁度良かった、とも思わない自分がいる

・・・なのに何でこんな今にも噛みつきそうな顔してるのさ




本日ハ晴天ナリ





ちゃん?」

「・・・・」

ちゃん」

「・・・・」

ちゃん!」

「え、あ、はいっ」

返事を返した拍子に持っていた歯ブラシが落っこち見事にコップを直撃しカランと甲高い音を立てた

「・・・さっきからボーっとしてるけど大丈夫?

 ずっと炎天下の中にいたから日射病にでもなっちゃった?」

心配そうな顔のさん。も必死で頷いてる

・・・申し訳ないなぁ

「大丈夫です。すみません・・・ちょっと色々考えてて」

「何を?」

「あー・・・ほら、もうこれでココともお別れなんだなぁって感傷に浸ってました」

「そうね。確かにちょっと寂しい感じがするわねー」

顔の筋肉を無理矢理動かして笑って見せるとさんが納得したように相槌を返す

はまだ心配そうな顔してたけど

試合が終わって各好きなように過ごしている

と、言っても大抵シャワーを浴びに行ったり荷物の整理をしてたり談話したり、とそんなところだ

そしてマネージャー3人もコートの片づけを一通り終わらせて部屋の荷物整理をしていた

だけど私の手は出来の悪いブリキおもちゃのようによく止まる

原因は分かってる 分かってるけど認めたくない

何か手を動かせば忘れられると思ってボール磨きを頑張ったら頑張りすぎて予定よりもずっと早く終わってしまった

だからみんなと一緒に部屋で荷物整理してるんだけど・・・

さっきから一向に進まない

じわじわと暗闇から手が伸びてくるようなそんな感覚

それでもどうにかこうにか鞄に詰め込んであとは持って帰るだけ、という状態にする

荷解きするときさぞかし大変だろう・・・

「あっ。」

みんな黙々と荷物整理してた中だったのでの声はよく響いた

びくっと肩が上がるのが分かる

自分の携帯を開いて画面を指さしてる

待ち受けが翼の寝顔なのは突っ込むべきかつっこまないべきか。

しかもそれがまたすっごい可愛い寝顔なんだよね。そうか、翼は白地に赤のチェックのパジャマで寝てるのか・・・どうみても女の子にしか見えない麗しい寝顔

さん、これって盗撮じゃないですよね?

しかしはそんな眼差しに気付いてるのか気付いてないのかにっこり笑顔だった

「もうすぐ時間だよ」

あぁ、もう逃げられない

***

?」

「何?」

「どうかしたのか?」

・・・どうしてみんなこんなに鋭いんですかね

「どうもしないよ。そんなに変な顔してる?私」

なんだなんだ、と五助もロクも除きこんでくるもんだから苦笑い

ミーティングルームに入るとまだ玲さん達監督は誰もいなかったけど選手はほとんど集まっていた

邪魔にならないように、と3人で合わせて一番後ろに座った所だった

「人のことより自分達のことでしょ?もうすぐ発表じゃない」

ギクっとロクの動きが鈍くなる

おー、やっぱり緊張してるんじゃないか

「ロク」

名前を呼べばぎこちなく振り返る

「やるだけやった。どんと構えときなさい」

「お、おう」

人には言えるのにな

背中が見えるのに何も言えない私の心は矛盾だらけだ、と机に突っ伏したくなった

ガラリ、とそんなに大きくはないドアの開く音がして玲さん達監督群が入ってきた

それまでのざわめきがピタリと止まる

が「お姉ちゃん格好いい〜」とのほほんとした感想を言い、「ほんと。憧れる〜」とさんものほほんとした返事を返した

私は

ただ黙って玲さんの選考結果を聞いていた

「MFから」

あぁ始まってしまった

キィン、と耳鳴りのような音がする 玲さんの声も聞こえてるのに器用な耳だ

じっと身動きせずに時間が過ぎるのを待つ

「DF・・・」

ぐっと唇を噛みしめる

泣いちゃ駄目だ。

ただ静かに椅子を引く「ちゃん?」驚いたの声

「ごめん、ちょっと外出てるね」

「えっ」

「ほんとにごめん」

そこまで言うとは反論しない。ただ何か言いたそうな顔で黙って椅子を少し避けてくれた

「ありがとう」

一人にしてくれて。

扉一つ挟んだだけなのに廊下はとても静かだった






--------------後書き-----------------------------------------------------------------------

もう何も言いますまい・・・

                                  1月19日 砂来陸

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