アラームよりも早く目が覚めて気分は爽快

でもあれ?私どうやってベットまで戻ってきたっけ?




本日ハ晴天ナリ





さんの話によると、昨日の夜はふらふらと、でも確かに自分の足で部屋まで戻ってきたらしい

そしてそのまま会話らしい会話もしないまま寝たらしい

それもペットボトルを握りしめたままで

「そんな力一杯握ってると危ないわよ?って言っても「んー・・・」って返事しか返してくれないからちょっと悲しくなったわ」

「・・・すみません」

全く覚えてないんですけど・・・私の睡魔はそんなに限界だったのか・・・

ちゃんもう平気?」

更に横から上目遣いでから問われる・・・うん、何か母性本能をくすぐられるよね

「心配かけてごめんね?」

「ううん。ちゃんが元気になってくれて嬉しい!」

にっこり笑顔でいわれてしまって私もつられて笑顔になる

の笑顔は人に伝染しちゃうから素敵なんだなぁ

ちなみにその横でさんが

ちゃんって天然タラシなのかしら・・・たまに笑顔を見せるってポイント高いし

 ちゃんって自制心強いのね〜私だったらこういうの我慢しなーい・・・って言うかできなーい・・・)

何て感想を持ったのは私の預かり知らぬ所である


「えっちゃんもう行くの?」

「あ、二人は良いよ。ゆっくり食べて」

一足早く朝ご飯を食べて早々に食器を片づけるは目を丸くした

(だって昨日のあの態度はやっぱりマネージャーとして最悪だった!)

昨日だけじゃなくて一昨日も最悪だったことは言うまでもないが出来るだけ考えない様にしよう

それに少しでも早く出ればまともに顔を合わせる選手も少ないはず

そんな考えもありは慌てて残りを口に詰め込む二人を落ち着かせ一人先に席をたった

廊下を早足で進む。

(えーっとまずビブス準備してラインカーも出しといた方が良いかな?ボールはいくつくらい・・・)

思考を巡らせながら廊下を歩く

と、丁度角を曲がろうとした瞬間、人の話し声が意外にも近くで聞こえて思わず足を止めた

「あ」 「げっ三号!」 「・・・」

多種多様な反応をありがとう

ところで三号って何ですか?

「お、おはようさん」

「・・・おはようございます」

唯一挨拶をしてくれたのはかじゅま君だった。あとの二人は無反応で・・・というか一人に至っては一歩引いてたよ

目が合うとこまったような顔をするかじゅま君。なので私もつられてこまったような顔になる

(だからってここで太陽のような笑顔を見せられても引きつった笑顔しか返せないから私の顔って不思議)

「・・・あ「一馬飯喰いに行くぞっ!!」

かじゅま君が何か言い出そうとした瞬間、一歩下がってたはずのMFの人がかじゅま君を引っ張って歩き出してしまった

「ちょ、痛てぇよ結人!」

「馬鹿!お前なに呑気に三号と挨拶してんだよ!カツアゲされるぞ!!」

しませんから!!

遠ざかっていく二人の背中にそう叫びたかった

え、私って選手のみんなの間でそんなイメージ?ヤンキーなイメージ?カツアゲとかしちゃってそうなイメージなの?

朝っぱらからショックが大きい・・・目覚めの良さなんて何の其のだ

軽く放心状態でその場に立ち尽くすしかなかった


「・・・ごめん。結人には後できつく言っておくから」


はっと気付く。そう言えばこの場にはもう一人いたということを

呆れた様なため息と共に濡れた様に眉を寄せる

「い、いいんです。私の方こそ驚かせてしまってすみませんでした」

あのMFの人は悪くないですよ、と続けると今度はほんの少し、驚いた様な顔になった

あれ?私何か変なこと言った?

「本当にみんなのポジション覚えてるんだ」

「え、や、あ」

えっと、いや、あの・そのと続く予定だったけどどれも言葉にならなくて謎の発声練習のようになってしまった

だって全員じゃないんです。上手な人だけです。練習見てて名前は覚えられなかったけどポジションは覚えられたんです

それもやっぱり言葉に出来なくて(というかそんなこと考えてる間にかじゅま君達はどんどん遠くへ行ってしまっている!)

少し悩んで代わりに出てきたのは「昨日はありがとうございました」だった

・・・何より最初に言わないといけない言葉だったよね

「今日は顔色良いね」

「・・・昨日はちょっと寝不足で・・・」

そんな端から見ても非道い顔色だったんだろうか・・・そんなんで一日過ごしてたんだからいっそ泣きたくなる

そして体調管理も出来ないマネージャーのレッテルを貼られそうでさらに凹む

「・・・さん?」

「はい?」

名前を呼ばれたので思わず返事を返したけど・・・あれ?私名乗った?

「一馬がそう呼んでたから」

一馬=かじゅま君

「あ、あぁ か・・・ずま君」

そうか、そうだ。そういう名前だったんだよさんの弟さん。頑なに『かじゅま君』って連呼してたよ私

そして私はこの人の名前をしらない

恩人の名前を知らないってどれだけ恩知らずなんだ私!!

「あの「おーいっ英士!早く来いよ!!飯無くなるぞー!!」

・・・そんなに私が貴方の友達と喋ってるのが許せませんか?(カツアゲなんてしてないって!)

まだご飯の時間始まったばかりだから無くならないと思うよ。と言いたかったけど言わなかった

だってあっちのMFの人は私のことすごく嫌ってる・・・というか怯えてるというか・・・何言っても「ぎゃー!」とか言って逃げそうだし・・・

でも代わりにこの人の名前が分かった「今行くよ」と言葉を返してる昨日の恩人のMF

「それじゃ」

デ・ジャヴだ。昨日も同じような事を言われた気がする

気がするっていうのは何故って私が昨日のことを断片的にしか覚えてないからで

だけど昨日この人は私を助けてくれて。それは間違いなくて

「あ、のっ英士君」

「え?」

ま、間違ってないよね?だってもう一人のMFの人確かにそう呼んだよね?!『英士』って

そして確かにこの人は振り向いてくれた


「昨日は本当にありがとうございました。今日は頑張って下さい」


もっと気の利いた言葉はなかったのか、と自分を叱咤したくなったけど浮かばなかったものはしょうがない

急いでるところを呼び止めてしまってごめんなさい。だけどどうしてもちゃんとお礼が言いたかったんです


「・・・さんも。無理せず頑張って」


ふっ、と微笑み付でそう言ってもらえた

わ、笑ってくれたよ!私に!

「はいっ」

たぶん、顔は赤かったんじゃないだろうか

そのままぺこっとお辞儀をして踵を返す

今度こそ角を曲がってしばらく歩いて・・・どんどん足が止まっていってしまった

(う、わぁ)

さっきの英士君の言葉が反芻する

それから笑顔

(わーっ何か私変な人だっ!!!)

頬に手を当てるとやっぱり熱い。間違いなく真っ赤だろう

だけど本当に嬉しかった

無意識ににやけてしまう口元をそっと抑える

初めて、今回の合宿で選手の人とちゃんと会話して、挨拶が出来た

それも笑顔で(私がちゃんと笑えてたかどうかは別にして)

「・・・よしっ!」

最終日にこんなに気合い入れてどうするんだ、って亮なら呆れるかもしれないけど良いんだ

やる気なんてあるに越したことないじゃないか

よし、ともう一度口の中で呟いてコートに向かう足を急いだ






----------後書き----------------------------------------------------------------------------

そういう赤面!?っていうツッコミは受け付けます。笑
前回の紳士MFは郭英士君でした。わーいクールビューティー
まるで小さな子どもがお使いに成功したときのような喜び方のヒロインちゃんですが温かく見守って下さい

次回は誰がメインでしょう・・・(未定)

                                  10月27日 砂来陸

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