「うっわぁ・・・おっかねぇ」
マネージャー3人と鳴海がコートの真ん中で騒いでいるのをちょっと離れた所から眺めている二人
「ありえなくね!?コーン投げつけるとか女じゃねぇよなぁ」
「きっとびっくりしたんだよ」
「え、もしかして風祭3号みたいなのが好み?」
「3号?」
思わず聞き返すと藤代はこっくりと頷いて見せる「3号」
スライドされた指先を追うとそこには不機嫌そうに立っている少女が一人
そうしてようやく言葉が反芻する『好み』って・・・
「ちっ違うよ!!」
顔を真っ赤にさせて否定をすると笑われた
だ、だってちゃんとは友達で・・・!
「だよなー3号って美人だけどすげー怖いし」
「怖い?」
「怖いじゃん!包丁持って追いかけてくるとか!」
「包丁持って追いかけられたの?」
そんな事があったのならちょっとしたホラーである
本日ハ晴天ナリ
左遷されました
洗濯籠を引きずらないようにありったけの腕力で持ち上げる
何せこの人数が使ったビブスだ ハンパなく重い
・・・遡るは30分前
牛に見えたのは人間で実は選抜に選ばれてた選手の一人で名前を鳴海貴志と言うらしい
ぱっと見はパワーでがんがん押しまくるタイプ。実際一直線に走ってきたしね
・・・まぁそれは私の偏見として。(大当たりだったのですが)
そんな人に力一杯コーンを投げつけた私はものすごい形相で走ってきた尾花沢監督にこってりと絞られたあげくコートから退場を言い渡された、わけです。
あの時の亮の顔・・・まともに見れなかったな
昨日の夜あれだけ言われたっていうのに・・・絶対怒ってるよ
・・・・
・・・
本気で!!
絶対絶対怒ってる・・・!
昨日でさえ内臓的なものが出そうなくらいあつーい抱擁を受けたっていうのに・・・(アレを抱擁と言うのはちょっと勇気がいる)
「・・・今日は早く寝ようーっと」
人はこれを現実逃避という
そうでもしなきゃ今日一日を乗り切ることが出来る訳ない
ただでさえじわじわと疲れが溜まってるというのに
「暑いなぁ」
口にすると暑さが3倍増しになった気がする・・・言わなきゃ良かった
帽子くらい持ってくるべきだったなぁと今更後悔
ただでさえ体調は芳しくないのにこの殺人的な日差しは体に毒じゃないか
「あれ?」
何か傾いてませんか?
私の身体
足が地面に着いてる感じがしない
やばい、倒れる
誰かが言ってた。倒れる時って何故かスローモーションになるって
その通りだ
あー倒れてるー。なんて何処か他人事のように思った
「危ない!」
ぐんっ、と身体が引っ張られた
そして頭が左右に揺さぶられた
あ、れ?
倒れてない。足も地面に着いている
そして腕が痛い
「大丈夫か?」
「・・・天城君?」
疑問系に疑問系で返す。会話が進みません
あ。腕が痛かったのは天城君が倒れないように支えてくれてたからだ
というか今、私 天城君に・・・
(きゃーーー!!)
声にならない悲鳴を上げた
だ、だって近いよっ・・・!
「・・・大丈夫か?」
「だ、大丈夫!!あ、ありがとう」
今の私 顔が真っ赤だ・・・絶対真っ赤だ
恥ずかしい・・・
掴んでくれていた手がやんわりと外れてすかさず距離を保った
助けて貰ったのにこんな態度で本当にごめん!だって顔真っ赤なんだもん!!
「・・・体調悪いのか?」
「う、ううん。ちょっと寝不足なだけ!大丈夫です!」
言いながら(あれ、私大丈夫だっけ?)なんて思ったことは内緒だ
「・・・」
空元気をみせる私を天城君は少し、困ったような・・・怒ったような顔をした
もしかして彼は私の心配してくれてるのか
なんて、自意識過剰かな
でも、そうだったら嬉しいな・・・
だって私、今日初めてじゃない?選手と喋るのって
・・・本当に何しに来てるの私ってば
マネージャーなんて名前ばっかりでむしろ選手のみんなには迷惑ばっかりかけてて
あぁ役立たず・・・と自分にツッコミを入れてしまった
それでも彼はここに来てくれた
偶然通りかかっただけかもしれないけど
それでも
「あの。天城君」
押しつけがましいかもしれないけど
「心配してくれてありがとう」
久し振りに笑えた気がする
少し照れたように顔を背けてしまった天城君には申し訳ないけどなんだか可愛くてちょっと吹き出してしまった
だって自意識過剰じゃなかったんだもの
それが嬉しい
人の優しさはあたたかい
そう思えることはなんて幸せなんだろうか
大丈夫、私はまだ頑張れる
今度は本当にそう思えたんだ
-------------------後書き--------------------------------------------------------------
天城君好きだなぁ
自分の好きなキャラはどうしても登場回数が多くなってしまう。THE贔屓目
もうちょっと2日目が続きます。
7月5日 砂来陸
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