(・・・え、三号?)

声に出さなくて良かった、と思うと同時に声に出しても変わらなかったんじゃないかな、とも思った




本日ハ晴天ナリ





三号というのは愛称・・・というよりは通称だ

です」とあのどれだけ見慣れても色っぽいさんの自己紹介や「です」とつられて笑顔になるような可愛らしいちゃんの自己紹介の後で何とも奇妙な自己紹介をした三人目

名前も言わなかったのでついたあだ名が「三号」(ちなみに名付け親は藤代だ。あいつはこの三人目のマネージャーをかなり怖がってる節がある)

「えーっと・・・」

聞き間違いじゃないよな?今一馬を貸してくれ、って言ったんだよな?

貸すって何?返してくれんの?

そもそも一馬と知り合いなの?

「もしかして貴方が真田君、ですか?!」

「や、違うけど・・・」

何だろう・・・この今にも掴みかかってきそうな気迫は・・・

ここで一馬を出して貸して、そして五体満足で返してくれんの?

俺一馬が泣きながら帰ってきたりしたら嫌だなぁ・・・


「・・・何やってんの?」

グッドタイミング!?バッドタイミング!?

廊下から声が聞こえドアから体を半分出してみると(これ以上出すと三号に突撃すると思ったから)そこには先程喉が渇いたと言って出て行った2人が立っていた

「あー・・・二人ともおかえり」

「まだ部屋に入ってないからただいま、とは言えないね。

 ・・・こんな時間にマネージャーさんが一体何の用なの?」

素直にただいま、って言っておけよ!と思わずつっこみたくなるのを堪えた

何故なら英士の視線は既に俺じゃなくて目の前にいる三号の方に移ってたから

視線を受けた三号の方は急な展開について行けてないようで口を薄く開けて俺と英士とを交互に見つめた(おぉ、視線はちょっと色っぽい)

「あーっと・・・三・・・じゃなかったこちらのマネージャーさん 一馬に用事があって来たみたいで」

「俺に?」

ストローを加えたまま静観(そんな格好いいものじゃない。たぶんこいつも状況について行けなくて黙ってたんだろう)していた一馬がぽかんとした表情でそう言った

「そう」と言おうと思った俺の言葉は三号の言葉にかき消された

「かじゅま君!!」

びしり、と音がしそうな手と一緒に


一馬→かじゅま

なるほど!本当は一馬、って言うのか。あぁ、だからもじってかじゅまなのか!

私的にはすごい大発見!な気持ちだったけど・・・・

「「「「・・・・・・」」」」

・・・思わず人を指さしてしまう癖・・・どうにかならないものだろうか

痛いほど凝視されてようやく我に返る

いっそ土下座でもして弁解をしたい衝動に駆られたが今は時間が惜しい

もしあの部屋へ玲さんが訪れたりしてたら最悪だ

瞬時にそういった計算をはじき出すとは真っ直ぐ『かじゅま』の元へ足を進めた

驚いたように一歩後ろへ下がった『かじゅま』に軽くショックを受けながらもこれ以上逃げられても困るのでさっと手を伸ばしてジュースを持っていた腕を掴んだ


「ちょっと一緒に、来て下さい」


としては周りにの事を悟らせまいとする精一杯譲歩した言葉だったがそれは第三者からするとどう見ても


立派なカツアゲ


見事に固まって動かなくなってしまった『かじゅま』に多少首を傾げながらも今は事情を説明する時間すら惜しい

はそのままくるりと方向転換すると間を置かず走り出した

もちろん、手はそのままである

よって『かじゅま』こと真田一馬はその場から殆ど強制的に拉致られる羽目になった


途中「ちょ、」とか「待っ」だとか何かそんな感じの言葉が聞こえたが聞こえないふりをしてとにかく持てる力いっぱいに走った

それはただ単純に止まることや振り返ることすらもが時間の無駄だと思ったからであって決してイジメじゃない

ようやく部屋の前に到着し、周りに誰もいないことを確認し、引きずるが如く『かじゅま』を部屋に押し込んだ

「かじゅまだぁ〜!」

もはやこれは人間じゃない

床に仰向けに転がり髪が広がってメデューサのようだ

いっそ私は石になりたい、とまで思った

「なっ、ねーちゃん何してんだよ!?」

メデューサになってます。とは心の中で答えてあげた

もちろん伝わらなかったけど

(・・・増してる?)

匂いが

マスクが欲しい。でなきゃ洗濯ばさみでも良い。

そう思えるほど部屋の匂いは凄まじかった

険しい顔のまま部屋をぐるっと見渡す

・・・・机の上に突っ伏してるふわふわの猫っ毛を発見した

!」

ぴくり、と肩が動き緩慢な動きで顔を起こした

あくまで起こしただけ

前髪が影を作って表情まで見て取れない その姿はまるでミイラだ

・・・一体いつからここはゴーストハウスになったんだろう

どこか遠くでそんなことを思ったが次の瞬間そんな考えは文字通り彼方へ飛んでいってしまった

「・・・ちゃん?」

顔を上げたは何と泣いていたのである

それも盛大に

「え、あ、?」

顔も洋服も机までたっぷりと濡れている

その姿はあんまりにも衝撃的でそのまま固まってしまったらの方が先に動いた

駆け寄ろうとしたらしいが途中で足がもつれたらしく転び掛けてタックルに等しかった

「ちょ「良かったぁ〜!だ、だって私どうして良いかわかんなくって、ね。しょうがないんだもんっ!」

一体何がしょうがないんだ

思わずそう突っ込みたくなったが半ば絞め殺されるんじゃないかという勢いで抱きついてくるに今刺激的なことを言うのは良くない、と冷静に判断した

やんわりと腕を外す

触れた腕は自分のものよりもずっと熱い

ん?熱い?

っちょっと顔上げてごらん!」

言うよりも早く両手を涙で濡れた頬にあてた

「う〜?」

「・・・サン、あなた未成年ですよね?」

潤んだ瞳

赤く火照った頬

転び掛けた千鳥足

そして何よりこの酒の匂い

最初にお酒の匂いがしたのはこの部屋にいた所為じゃない


自分で飲んでたんだ


もし私がメデューサなら

二人を石にしてやりたい




-----------後書き----------------------------------------------------------------

U−14の登場です。
一応三人とも登場です。(約一名ちゃんと会話してませんが・・・)
いやはやさん色々やってくれてます。
そして今回にいたってはちゃんまでもが問題児と化してます
ちゃんが本当に怒りの雷を落とすんじゃないかと思いますよね・・・笑

何だか無駄に長くなってしまった・・・反省

                            11月11日 砂来陸

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