(不破君ってホントにフィールドプレー向いてないなぁ・・・
あ、翼に怒られてる)
ボール磨きをしながらもちらちらとミニゲームを観戦する
飛葉中のメンバーや将君、知ってる人達がプレイするのを見るのはもちろん楽しいけど
今日初めて会う人達の初めてのプレイを見るのも楽しかった
そうして改めて実感する
(私って本当にサッカーが好きなんだなぁ・・・)
本日ハ晴天ナリ
なんて、しみじみ思ってたのもつかの間
ババッとお椀を3×5で並べる
出来るだけ量が均等になるようにおみそ汁を注いで、具も均等になるように
「おみそ汁出します!」
持ち上げてそう叫ぶと回りから同じく威勢の良い返事が返ってきて狭い道ながら人が通れるだけの間を空けてくれた
・・・はい、相変わらず調理場で働いています
お昼に人手が足りなかったんだからもちろん今だって足りてるハズがない
だけどここのリズムというものがちょっと分かってきてたぶんお昼よりは役に立ってる・・・はず
「ちゃんお疲れさまっ!」
まるでデ・ジャヴ
お昼の時と寸分違わない声でがやって来た。もちろんさんも一緒だ
「お疲れさま。
さんもお疲れさまです」
未だに元気いっぱいなと違ってさんはちょっとバテ気味だった
一度「大丈夫ですか?」と声をかけたら「若さを分けて」と言われた
その後も「紫外線で溶かされる・・・」と呟いていたのをが聞いていたのでかなり参ってたんだろう
「ちゃんホントすごいわね〜あれだけ光合成させられてまだ動けるんだもの」
おねーさんはもう駄目駄目よ。と力無くさんが笑った
・・・ていうか光合成って・・・私、葉緑体持ってないんですけど・・・
「ちゃん、晩ご飯は一緒に食べられる?」
「んー・・・たぶん無理だねぇ」
まだまだ裏方の仕事はいっぱいある。ががっかりしてしまったのは申し訳ないけど・・・
「ごめんね?」
「んーん・・・。後でいっぱい話そうね?」
首を僅かに傾げる姿がまた可愛らしかった
「うん 約」がっしゃーん!!
・・・束と続くはずだった
「な、何!?」
音は調理場の外から聞こえた。ということは音の出所は食堂内だ
勢いを付けて調理場から身を乗り出す
とさんも驚いた様に振り返りその惨状を目にした
「うわぁ・・・」
「わお」
「・・・何事」
なのですか将君
床に散らばった悲しきかな私の盛った夕飯の数々
頭から汁物を被ってしまった少年と
青くなってる将君
「・・・お盆ひっくり返しちゃったのかなぁ?」
「それで運良く大当たりしちゃったのね」
「そうとしか思えない・・・よね」
と呟いた途端頭から汁物を被った男の子がぶち切れた。
「あらら。怒っちゃった。
・・・かじゅまったら短気なんだから」
「おやまぁ。これまた見事にひっくり返したもんだねぇ」
さんが何かを呟いたのとほぼ同時にもう一つ声がした
「おばさん・・・」
「元気があるのは結構だけど暴れられるとちょっと頂けないね」
中で一緒に作業をしてた食堂のおばちゃん風なおばさんは雑巾を一枚手に持つとそのまま騒ぎの中枢部へと向かった
「え、ちょっと危なくない?」
「そうねぇ。でもあの子は女の人にまで手上げるほど落ちぶれてないと思うから・・・」
「?ちゃんあの人知ってるの〜?」
私もさんのセリフが気になったけどさんは返事をすることよりも目前の騒動がどうなるかの方に釘付けだった
ゴン!
・・・・・・
・・・・
・・・
よもや拳でその場を収めるとは思わなかったので
「「「格好いいー・・・」」」
思わず異口同音で呟いてしまった
「お疲れさまでした〜」
お盆をひっくり返す大惨事なんてもうとうに昔のことで選手のみんなはもう各部屋に戻って好き勝手過ごしてるだろう時間帯
片づけが終わってテーブルも拭き終わって私もようやく晩ご飯が食べられそう・・・
(って言ってもみんなとは偉い違いだけどね)
想像を絶する少年達の鉄の胃袋のおかげで殆ど何も残らなかった食料
かろうじて残っていた白米と微妙に残ったおかず達(一品、と数えるには少ない量)
本当に慎ましい晩ご飯だった
「・・・あの、白ご飯残ってるならおにぎり作っても良いですか?」
私が食べた分を差し引いて、おにぎりにしてしまえば2つか3つぶんだったけど残っていたご飯を指さして尋ねてみた
「夜食にでもするのかい?」
「えぇ、まぁそんなとこです」
曖昧な返事になってしまったがおばさんたちは気にした様子もなく快くご飯を譲ってくれた
(どうしよう・・・おかずは・・・あ。豚の角煮がちょっと残ってる・・・いいや具にしちゃおう
後は塩おにぎりになっちゃうけど・・・しょうがないよね)
我ながら綺麗に三角おにぎりができて嬉しかった
(ふっ・・・これも小さい頃から試行錯誤を重ねた上に身につけた上級主婦の嗜みかしら・・・)
なんて意味不明な事も考えてしまった
「それじゃお嬢ちゃん今日は本当に助かったよ。ありがとう」
「いいえ、こちらこそお役に立てて良かったです。お疲れさまでした」
そうしてようやく食堂を後にした
廊下で一人きりになりようやくは息を吐いた
(なんかハードな一日だったな・・・)
すごくポジティブに考えれば充実した一日と呼べないこともないがあまりポジティブ思考じゃないには無理だろう
「えーっと・・・部屋に戻ったらまず玲さんの所に行って明日の予定を聞かなきゃ」
手の中にはおにぎりが3つ
今日一日の仕事が8割がた終わった事にひどく安堵してしまった
いくら普段から慣れている仕事とはいえ40近くいる人数を相手にしていたのだから疲れだって溜まる
(早く寝たいな・・・)
そうやって気を抜いたのがいけなかったのだろうか
いや、しかし普通思うまい
自分以外の足音が聞こえない廊下でいきなり腕を掴まれるなんて
さらにお腹に腕がまわってきてそのまま物陰に引きずり込まれるなんて
「き・・・んぅ!?」
思わず悲鳴を上げかけて口を塞がれてしまうなんて
-------------後書き-----------------------------------------------------------------
何て言うか・・・一難去ってまた一難という感じです。
どんだけちゃんに炊事させたいんだよ、と自分で突っ込みたくなりました。
相変わらずマイペースな更新ですが進んでるつもりです(^^;)
5月19日 砂来陸
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