「ちゃん!見た!?」
「・・・あれはヤバイわ」
もも興奮を抑えきれない様子でひそひそ話をする
「でしょでしょ!ちゃんって笑うととっても可愛いの!!」
「あんまり笑わない分これは来るわね・・・!『萌え』って感じで!」
もえ?首を傾げるの横ではうっとりとした表情のまま握り拳を作っていた
本日ハ晴天ナリ
(何だよまともに笑えるじゃねーか)
ほっと安心からか呆れからなのかため息が出た
もう神業と言っても過言ではない強烈な第一印象からさらに追い打ちを掛けるような行動の数々
ちょっと人見知りが激しいんです、とか愛想がなくてごめんなさい、とかそんなレベルじゃない
一昔までは一緒に男に混じって(それも違和感なく)遊んだり喧嘩したりしてたハズだが自分が家を出てから何だか違う方向に曲がってしまったらしい
と、考えるとやっぱり少し自分にも責任があるような気がしてきた
シスコンなつもりは毛頭ないが多少なりとも特殊な家庭状況だったためにどうしても心配になってしまう
(ったく・・・でもまぁこれで少しは周りの目も変わってくるだろうな)
一応ながら人並みに笑えることが発覚したんだ。とりあえず恐れた目で見られることはなくなるだろう
亮は純粋に安堵のため息を吐いた
なのにまさか横からこんな会話が聞こえてくるとは
その時の笑った顔を見たのはどれくらいいただろうか
まず、Aチームは殆どと見ることはなかった
物好きでBチームのミニゲームを見ていた奴らくらいだろう
そういうある意味では貴重な笑顔シーン
男共はみんな自分の顔が赤くなるのと胸が高鳴るのを止められなかった・・・!
なんて展開になることはもちろんない
「・・・あのマネが笑ったのって初めてじゃね?」
「つーか何?今さら媚び売られるように笑われても遅すぎるっつーの」
「だよなぁ何か企んでるんじゃねぇの?」
亮は思わず地面に頭を打ち付けそうになった
(・・・もうアイツ駄目だ)
ホントにもう勘弁してください。手の施し様がないんで。
つい先ほどの笑顔でのイメージは変わるはずだった
最悪の位置からせめて普通へと180度
それが何故か360度回転してしまい結局元の位置に戻ってきてしまった
つまりのイメージは『男嫌いで無愛想なマネージャー』から『男に媚び売る尻軽マネージャー』と
ある意味では180度変わってしまった
(・・・さすが神業)
選抜のための合宿に来たハズなのにボールよりも妹を目で追ってるというのは一体どういうことなんだろう、と白くなりそうな頭の片隅で考えた
別にみんながみんながそう、って訳ではなかったのだが。
「お疲れさまでーす!」
元気な声と共にドリンクとタオルが配られていく
もちろん手渡しする際は笑顔を忘れずに
「あ、ありがとう」
ちょっと赤くなった顔の男の子にさらにニッコリ、と
(・・・ホントは今こうしてるの私じゃないハズなのに・・・)
笑いながらも内心とってもがっかりしている
同じようにドリンクとタオル配りをしているもきっと同じ事を考えているだろう
ふと顔を上げて向ける視線の先には一心不乱にボール磨きをするの姿
(・・・ちゃんが配ってあげたらきっときっとみんな喜ぶのに・・・)
別にボール磨きが悪いとは言わない。立派なマネの仕事なのだから
でも
(せっかくさっきあれだけ最大級の笑顔見せてくれたんだからみんなだってお話したハズだよぅ・・・)
Aチームの手伝いが終わって意気揚々と駆け寄ってきたとには
「あ。良かった二人とも」
「やっぱり配るのは二人の方が嬉しいもんね」
そう言って躊躇なく準備してあったドリンクとタオルを任せて自分はさっさとボール磨きへ転向していったのだ
さぞかしBチームのみんなは残念だったに違いない
きっとあの笑顔をみて喋ってみたいと思ったはずだから
なのにその矢先のエスケープ(あれ、エスケープってこういう時に使う言葉だったっけ?)
「。何て顔してんの?」
とん、と額を小突かれてはっと我に返る
翼ちゃんがちょっと怒ったような顔で立ってた
あ。タオル渡さなきゃいけなかったんだ
「はい、どーぞ」
タオルを手渡すと「どーも」といかにも他人仰々しく受け取ってくれた。怒ってる
「・・・はまたどっか雑用?」
こっくり頷くと翼ちゃんは呆れたようにため息を吐いた
きっと翼ちゃんも同じ事考えてるんだ
「相変わらずだね、アイツも」
そう
すっごくすっごく可愛いのにすっごく優しいのにちゃんはなかなか他人と打ち解けない
部活の時はどうだったのか知らないけどクラスのみんなとはそうだった
私はそれがいっつも残念だった
あの褒めると照れた様に笑うところもすごく嬉しそうな笑顔も
みんなは格好いいって言うけどhandsomeでいてcuteなちゃんが私は大好きで
だからみんなに分かって欲しいって思う
「」
「え?」
ビシッ
チョップが飛んできた
「痛い〜っ!」
「が心配なのは分かるけどまでそんな顔するの止めな。今度はに心配かける」
思いっきりチョップが飛んできた頭を撫でていると有無を言わせない翼ちゃんの声
「・・・私そんなにヘンテコな顔してた?」
「してた」
きっぱりと言い切られてしまうと立場がない
「が笑ってればアイツもつられて笑うかもしれないだろ?」
だから笑いなさい、と言われているようで
あぁちゃんの事心配してるのは私だけじゃなかったんだ、ってそういう意味で笑えてきてしまった
「うんっ」
とりあえず大きな声でしっかり返事をしてくるりと踵を返す
走ってそのまま思いっきりダイビングした
「うわぁっ!?」
横から謎の奇襲を受けたが勢い余って芝生に転がる
「どう「私ちゃんだいっっすき!」
大胆不敵な愛の言葉に思わず開いた口が塞がらなくなってしまったちゃんにぎゅっと抱きつく
「え、えーっと・・・ありがとう?」
意味が分からないままにはお礼を言う羽目になった
-------------後書き-------------------------------------------------------------------------
・・・まとまりゼロでごめんなさい。
何でかちゃんの方が出っ張ってしまった・・・。(や、ちゃん好きなので書く分には楽しいんですが)
笑顔一つで変わったような変わらないような・・・微妙なところです。
BはともかくAは9割がた良い印象は与えてませんけどね。
これはたぶん「自分たちには仏頂面なくせしてBの奴らには笑顔かよ。ケッ」なんていう気持ちがあるんだと思います。何せ彼等はまだ中学生〜♪
4月1日 砂来陸
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