「私が手伝ったらきっと死人が出ちゃうよ?」
と、一人目が言った
「私、直火以外の調理法知りませんよ?」
と、二人目も言った
「・・・私は」
三人目には選ぶ権利すら与えられなかった
本日ハ晴天ナリ
「嬢ちゃん、キャベツとネギ終わったらジャガイモと人参も頼んだよ!」
「はいっ」
「あっ使い終わった道具は全部こっちの流しに運んでくれ!」
「はいっ」
一つ物事が済んだら2つ物事を言われる
まさにそんな状態である
(やってもやっても仕事が終わらない・・・!!)
目が回るような仕事量を必死に一つずつこなしていく
マネージャーが調理場で働く
もちろんこんなことは当初、仕事として与えられてなかった
「悪いねぇお嬢ちゃん」
「良いですっ慣れてますから」
「ホント、手慣れた包丁さばきだね」
そりゃ毎日自分のご飯は自分で作ってますからね・・・
料理の腕を褒められるのは嬉しいことだけどそれを喜ぶ暇すらも今は与えられない
事の発端は玲さんのあの一声だった
「ちょっとマネージャー3人とも集まってちょうだい!」
そう呼ばれて行ってみるとそこには玲さんと・・・見知らぬおばさんが立っていた
割烹着を着ていて、ふくよかな・・・何となく給食のおばちゃん、というイメージと結びつくような出で立ちだった
「どうしたんですか?」
「ちょっと昼食の手伝いに回って欲しいの」
詳しい話を聞いてみるとどうやら厨房で料理を作るパートさんが2人、急用で来られなくなったらしい
そして冒頭の会話へと戻る
ほぼ強制的に厨房まで連れて行かれたはせっかくのプレイが見れなくなってしまったことに対して少し残念に思った
(まぁしょうがないか・・・)
昼食が遅れて今日一日のスケジュールを狂わすわけにはいかない
練習は午後からでもゆっくり見れるだろうし今は自分に出来ることを精一杯しよう
だけど本来の人数よりも1人足りなくて、助っ人に来たのはたかだか多少料理が出来るだけの中学生で
そんなんじゃ時間内に準備が出来るわけがなくて
間に合わないままに昼食の時間がやって来ました
「え〜まだ飯出来てねぇの!?」
思いっきり不機嫌そうなそんな声が聞こえ始めたのは選手のみんなが練習を終えて食堂へ入ってきてすぐの事だった
「ありえねぇー」
口々にそんな文句を言い始める選手達
・・・突然だけど調理場は暑い
食堂の方にはクーラーがついていて涼しいだろうけど食堂は調理火の熱やら動き回ってる所為とかでとにかく暑い
そう、暑いのだ
人間というものは自分の許容量を超えるとストレスを感じるらしい
もちろん私だって暑い
暑い上にこんなどうしようもない文句を聞かされたらどうなるだろう?
イライラするのだ
(・・・落ち着け私、ほらみんなだって疲れてるんだよ)
「時間くらい守れよなー」
イライラ
(・・・落ち着け・・・ストレスは野菜にぶつけよう)
だん!だん!だん!と勢いよく人参をぶつ切りにした(隣にいたおばさんがちょっと吃驚してた)
「早くしてくんねぇかなー。俺等忙しいんだしさぁー」
イライライラ・・・ブチッ
と自分の中の何かが切れる音が聞こえた
「マジでこういうの勘「うるさい!」
一気に食堂が静まりかえった
自分の持ち場からずんずん歩いて対面台の前に立つ
「黙って聞いてりゃ男のくせに愚痴愚痴愚痴愚痴・・・動物園のサルと良い勝負って褒め称えてあげようましょうか?!
さっきから早く作れ早く作れって何見てるの?あんた達にはこっちが遊んでるようにでも見えてる訳!?
作ってるでしょう!?
一 生 懸 命!!」
「だいたいねぇこっちだって好きで待たせてる訳じゃないのよ!しょうがないじゃない
2人も休みがいるんだから!それでも手を抜かずに栄養のある美味しいもの作ろうってしてる人達にむしろ感謝しなさいよ!!
文句があるなら待ってもらわなくても食べてもらわくても結構!
その辺のコンビニにでも行って買い食いでもなんでもしてきなさいよ!!」
食堂に、もう音は無かった
調理場から辛うじて料理の音が聞こえてくるだけ
「・・・食べたいんだったら大人しく静かに待つくらいしなさい」
そこまで言ってくるりと踵を返し自分の持ち場に戻った
そうして無惨な姿になった人参の続きに戻った
思わず手を止めていた同じ調理人も慌てて作業を再開する
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・やってしまった
--------------後書き-----------------------------------------------------------
可笑しい文章でごめんなさい。
新年一発目からこんなんでごめんなさい
・・・一応最後に怒鳴ったのはちゃんです。分かりますでしょうか・・・汗
1月1日 砂来陸
Next