「・・・感激」
上記のセリフは
目の前で繰り広げられるミニゲームに対して述べられたの第一声である
恍惚とした声
頬はほんのり赤く染められて
それでもメモする手は止めずに
本来、年頃の娘はサッカーの練習を見て頬を染めたり顔がにやけたりしない
本日ハ晴天ナリ
・・・顔が歪んでんぞ おい
実の妹のあまりにも締まりのない表情に亮は深々とため息を吐いた
(だいたい何だったんだよさっきの雄叫び
それからめちゃめちゃ注目浴びてるってことくらい気付よ・・・)
久し振りに会ったのだ
最近は共に忙しくて電話も殆どしてなかったのだ
色んな意味でついつい姿を探してしまうのは仕様のない事なのだ
何だかんだ言って妹には甘い自分に気付いて三上亮はまた深々とため息を吐いた
「三上せーんぱいっ!ため息ばっか吐いてると幸せが逃げちゃいますよ〜?」
「・・・うっせーよ馬鹿代」
「馬鹿代じゃないっすよ!藤代っす!!」
・・・何でこいつはこんなに元気なんだ
今度は別の意味でため息を吐きたくなった
「何で人の顔みてそんな嫌そぉな顔するんすかっ!」
「ちっ何で笠井がいねぇんだよ。笠井がいりゃお前の面倒は押しつけられるのに・・・」
「先輩人を犬みたいに言わないでくださよ!!」
ほっぺを膨らませて怒る藤代の姿はどこからどうみてもガキだった
しかしそれでも先ほどあの水野とチームを組んであの奇妙な2人GKに対して初ゴールを決めたのだから侮れない
(きっと本来頭に回るべき栄養を全て体力なんかに使ってんだろうな・・・)
と大変失礼なことを三上亮はぼんやりと考えた
「ねぇそれより先輩さっきの見てくれましたか!?俺のチームがゴール決めた瞬間!!」
「見てなかったな」←嘘
「うわっ非道いっす!!めちゃくちゃビューティフルゴールだったんすよ!!」
「何かっこつけて横文字なんか使ってるんだよ。ビューティフルって英語で書けるのか?」
痛いところを突かれたという風に藤代が一瞬黙った
おいおい、ビューティフルも英語で書けねぇってお前一応2年だろ。進学がヤバイぞ
「と、とにかくすごいゴールを決めたんすよ!!何せあの渋沢キャプテンまで騙したんですから!!」
「あーはいはい」
軽くあしらうと藤代はまた拗ねた様に頬を膨らました
だから何歳児だよお前
軽く脱力まで覚えてしまう
「・・・とにかくお前のおかげでビューティフルゴールとやらが決まったんだろ。良かったじゃねぇか」
「そうなんですよ!!」
ぱっと浮上したように笑う藤代(これぞ名物 武蔵森のアメとムチ)
そしてよっぽど気分を良くしたのか聞いてもいないのに先ほどのゴールとやらについて嬉々として語り出した
「いやぁあれは自分で言うのも何ですけどマジですごかったんですよ。
水野との息もぴったりで 渋沢も不破もすっかりだませてましたね!」
水野、という名前が出てきてほんの少し青筋が立ったことに藤代は気付かない
そして何故かほんの少し声を潜めて話しを続けた
「でもね先輩。一人気付いた人がいたんすよ」
「あぁ?」
「俺がボールをスルーする直前に誰かが「不破君、それフェイク!」って叫んだんすよ」
・・・
「って言ってもこっちはミニゲームの真っ只中だし不破も外野の声なんて聞いてなかったしで結局ゴールは決まったんすけどね」
・・・
「あれ誰だったんだろう?何となく女の人の声に聞こえたんすけどねー」
・・・ピンポイントで思い浮かぶ人物がいた
というか可能なヤツがいると言った方が正しいだろう
あいつならあの並々ならぬ野生の勘というやつで気付くことが可能だ
そしてただ黙って見て居なきゃいけない立場のくせに思わず口に出してしまうなんてどこかおっちょこちょいな所もあいつならやりかねない
(・・・頼むからこの合宿くらいは大人しくしといてくれ)
思わず亮は心の中でそう願ってしまった
しかし、そんな亮の願いを無惨にも打ち砕く出来事が後に起こるとはこの時誰も予想してなかった
それはBチームの女監督の一言から始まった
「ちょっとマネージャー
3人とも集まってちょうだい!」
----------------後書き-------------------------------------------------------------------------
ほぼ1ヶ月ぶりに執筆致しました。
最近忙しい忙しいばっかりで本当にご無沙汰していましたので(^^;)
そしてそんな久し振りなのに何故かちゃん最初のちょっとしか出てこないしね!!
さて、今回はみかみんのうれしはずかし親心を書いてみました。
何だかんだ言って妹が心配なお兄ちゃんです。
11月19日 砂来陸
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