「あった・・・」

お父さんのサッカー資料からひっぱりだしたスクラップ記事

もう殆ど色が焼けてしまってるけど記事はしっかり読めた

「潮見、謙介」

将君の・・・お父さん




本日ハ晴天ナリ





「ふぁ〜・・・」

いかん、眠い

目を何度か瞬いて首を左右に振る

うん、ちょっとは眠気が覚めた

出来れば大きく伸びをしたい所だけど左手には鞄。右にはの買い物袋があるので諦める

下手したら頭上に卵が降ってくる羽目になるしね

丸めそうになる背中をシャンと伸ばしてマンションへの帰り道を急いだ


寝不足なのは他の何でもない将君の事

衝撃の告白の後、5秒くらい放心してしまった

それでも何とか「そうなんだ」とだけ返した

それでおしまい。

将君は笑ってたけど私にはそれ以上何かを訊くことが出来なかった

将君は・・・何を思って話してくれたんだろう

ジリジリと照りつけてくる太陽

まだ夏は始まったばっかりなのに充分暑い

「やっぱり功に連絡したほうが良いんじゃありません?」

「いや、いらん!子供に迎えに来てもらうなんて言語道断だ!」

ん?

話し声がする方を見てみるとそこには地図を広げて近づいて見たり離れて見たりしているおじさんとメモを片手に周りをきょろきょろしているおばさんがいた

感じからして・・・夫婦かな?

ふと、おばさんの方と目が合った

一応軽く会釈をしてみる。

おばさんも会釈を返してくれた。それからちょっと戸惑ったような風を見せてメモを持ったままこっちに小走りで近づいてきた

「あの・・・ちょっと道を尋ねたいんだけれども・・・」

「あ、はい」

よいしょ、っともう一度荷物を抱え直しておばさんが持っているメモを覗き込む

「・・・ここなら知ってますよ。

 というか私此処に住んでるんです。」

「まぁ!」

「丁度今から帰るところなんで・・・どうぞこっちですよ」

「ご一緒させて頂いても?」

「はい」

ほっと安心したようなおばさんはおじさんの方を振り返り「あなた。」と呼んだ

ジリジリ、日差しが暑い

風は少なめ

さっきの紙、そこにはマンションの名前が書いてあった

そう、私が住んでるマンションの・・・隣の部屋の番号で

それはつまり

・・・いやぁ偶然ってすごい

何とこのおじさんとおばさんは功さんと将君のお父さんとお母さんらしい

「びっくりしたわ。まさか功や将と知り合いだったなんて」

「功さんと将君とは部屋が隣同士でして・・・」

「まぁ。あの子達何か迷惑掛けてない?」

「いいえ!私いっつもお世話になってるんです」

「そう・・・」

おばさんは嬉しそうに目を細めた


・・・そういえば将君達の家の事情ってどうなってるんだろ?

両親は一緒に住んでない。ということはやっぱり両親は仕事なのかな?

お父さんの出張先にお母さんがついて行ったとか・・・うぅん一般的な夫婦の現状がわかんないからなぁ・・・

それに

将君の両親は・・・

「君」

突然おじさんの方が口を開いた

「はい?」

え、今のって私に向かって、だよね?

「そのー・・・何だ

 功と将は・・・元気にやってるかね?」

その一言は、強烈にこの人達が功さんと将君の両親なんだ、って実感させた

私にはお父さんっていう言葉がよく分からないけど・・・(あえて言うなら亮が若すぎるお父さん、になるのかな?)

この人は、あぁお父さんなんだ、って思える

「はい。功さんはお仕事頑張ってるみたいで・・・」

そこでハタ、と言葉を切った

功さんの仕事=ホスト

・・・これって頑張ってますって言って良いの・・・?

変に言葉を切った私を首を傾げて見る風祭母

「し、将君、毎日サッカー頑張ってるみたいですよ!」

無理やり話をねじ曲げた

引きつった笑みでそう言ってのければおじさんもおばさんも気圧されてかそれで納得してくれたみたいだ

何だか奇妙な罪悪感を抱えながら私は目的地・マンションへと2人を案内した

***

お風呂から上がると携帯が鳴ってた

「もしもし?」

ちゃん?』

?」

着信を見てなかったので予想外の人物でちょっとびっくりした(お母さんが帰り遅くなる、っていう電話だと思ってたから)

『うん、でーす』

電話でも相変わらずだね。・・・

「どうしたの?」

『うん、あのね、お姉ちゃんに頼まれたから電話したのー』

お姉ちゃん、って・・・

ちゃん?』

「玲さん?」

いきなり電話の相手が変わったのでびっくりした

『ごめんなさいね。突然電話してしまって』

「いいえ。大丈夫です。それより何か・・・?」

『実は貴方にお願いがあって・・・明日の放課後空いてるかしら?』

「明日ですか?まぁそんなに遅くならなければ・・・」

洗濯物が冷え込むまでに帰れるのならば

『そう、良かったわ。ちょっと付き合って貰いたいのよ』

「どうしたんですか?あ、部活の事で何か?」

『まぁ似た様な感じかしら・・・それじゃあ明日の放課後』

「はい。分かりました」

ピッと携帯を切って首を捻る

(・・・部活と似た様な感じって・・・?)

と、今度は玄関のチャイムが鳴った

「はーいっ」

素足で玄関に向かう

「どちら様でっ・・・将君?」

何とそこには将君が立っていた

「こんばんは。ちゃん」

「こんばんは・・・」

何故か、心の何処かに動揺が奔った




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-------------------後書き------------------------------------------------------------------

何だか微妙・・・
でも良いのさ!ようやく話が進んでくれます。
次回もたぶん将君ばっかり出てくるような・・・

                             2月5日 砂来陸