この試合で私が得たものは

きっと




本日ハ晴天ナリ





後半戦が始まってすぐに飛葉中は1点を上げた

得点源はやっぱりさっき言ってた15番

思った通り・・・と言ったら失礼だけど緊張していてくれてパスミスとなったボールをマサキが拾って得点した

これで飛葉中に一気に勝算が傾いた

だけど・・・きっとこの試合はこれからまたひっくり返る

そんな予感がする

きっとみんなだってこれで終わるなんて思ってないハズ

ほら

1点先制されたっていうのに将君はすごく楽しそうだった

ちゃん?」

・・・・ノートを持ち上げて顔を半分隠してしまった私を心配して玲さんが声を掛ける

細い声で「大丈夫です」とだけ答えた

ホントは全然大丈夫じゃない

私ってどうしてこんなにサッカーが好きなんだろう

何でサッカーってこんなに楽しいんだろう

どうしようもなく襲いかかるこんな気持ち

桜上水サッカー部についてはそれなりに将君から話を聞いていた

うん、将君

桜上水サッカー部はすごい強いよ

それでね、将君もその一人だよ



佐藤さんにボールが渡った

右ウィングになったナオキとようやくの因縁の(これはナオキが勝手に言ってるだけだけど)対決になった

2人の接戦はなかなか気迫のあるもので・・・特にナオキの方は必死さがひしひしと伝わってきた

えーっとナオキが小学校の頃からのライバルだって言ってたから・・・何年越しの勝負なんだろう?

こういうとき普通に男の子って良いなぁって思う

女の子っていうのは簡単なことですぐ裏と表がひっくり返ってしまうから(簡単に言うと仲が良かった子が苛めたりさ)

その気になれば3ヶ月会わないだけで喋らなくなったりするらしいし

自分も女の子な訳だけどそういうのってどうしても理解できない

まぁ単に女友達らしい女友達が今までいなかったからかもしれないけど


結局は佐藤さんが競り逃げした

ゴールはされなかったけど・・・あ、ナオキ悔しそう

頑張った結果なのに。勝てなかった事ってそんだけ大きいらしい

「ナオキー!」

いきなり大声を出した私にかなりの大勢の注目を浴びたけどまぁ・・・今回は気にしないでおこう

いきなり名前を呼ばれてびっくりしたナオキと目が合った

「まだ勝負は終わってないでしょう?」

いいじゃん。サッカーに絶対は無いんだから

私の知ってるナオキはこれくらいじゃへこたれないから

まだまだ倒れるまで全力疾走しちゃうのがナオキでしょう?

「死にものぐるいで頑張れ!」

相変わらず色気よりも男気の方が強い応援

だけどこれが私だから

ナオキはびっくりしたみたいだけど・・・やがていつもの笑顔で立ち上がってくれた

うん。それでこそナオキだ

「やったるで!」

「おう。やってみろ!」

仁王立ちで宣言してきたナオキに私も同じ様に返す

「こんなに格好いいマネージャー他に居ないわね」

笑いながら玲さんがそう言った

「でしょうね」

もちろん自覚してますとも。我ながら勇ましいって思うから

だって私はマネージャーでしかないけど

選手の一人になりたい


試合はどんどん、ヒートアップしていく

「ゴール!」

「えっ」

同点に持ち込まれていた

それも翼がマークしていた佐藤さんがシュートを決めて

(うわぁ・・・)

だってあの翼がマークしててだよ!?それでシュートを決めるなんて・・・

「ノーゴール!」

は?

ちゃん、消しゴムいる?」

「あ。どうも」

ノートに書いた1点っていう文字を消す

・・・じゃなくて!

「今の決まったんじゃなかったんですか?」

見事にゴールネット揺れたんですけど・・・?

「手が当たってたんですて。ハンドみたいよ」

「へぇ・・・」

桜上水にしては残念だっただろうけどうちにしてはラッキー

偶然触れたにしてもツイてたや

でもそんな楽観視をしてたのは私だけだったみたいで

何故か将君がそこからガクンと調子が落ちた

一体どうしたんだろう?

一気にゲームの熱が冷めてしまったような感じだ

「あっ・・・」

ファールを、取られた

短気は損気とはよく言ったもので佐藤さんの挑発に乗ってしまった五助が取られてしまった

思わず五助の馬鹿っ!って叫びそうになったけど堪えて代わりに・・・

「保君一本集中!」

ノートを丸めてそう叫ぶ

注目を浴びてしまうけど叫んでしまうのは部活の癖なんです

そしてこれが本来の私らしい『私』

ふと、翼と目が合った

まぁ私は試合を観てるんだから選手の誰かと目が合うことなんてよくあること、なんだけど

目が合った翼は少し、躊躇ってこっちに走ってきた

つまり私の所へ

「どうし「、もし延長戦になったらキーパーとして出て」

「え?」

予想外な一言

だ、だってこれ公式試合だよ?普段の練習とは違うんだよ?

そう言いたかったけど確かに保君にPKは重い

1回きりだったらまだ何とか・・・・なるかな?いやならない確率の方が高いんだけど

何人ものPKを受けるんだったら絶対保君には無理だ

きっと、翼にとっても苦渋の決断だったんだろう

きゅっと唇を噛みしめて翼を正面から見つめる

「分かった」

その返事を聞くと翼は安心したような。少し残念そうな顔でコートに戻っていった

言った後にどっと緊張が押し寄せてきて一気に息を吐き出した

「大丈夫?」

心配そうな玲さんの声

「何とか・・・翼もすごい決断しちゃいましたよね」

まさか私を公式戦に出そうなんて・・・いや、でれるのは嬉しいけど

ホントは嬉しさ半分 怖さ半分

だって私は女だから

こんなことを考え出すと昔の嫌な記憶が鮮明に蘇ってくる

でも

今は私を認めてくれてる人達がいる

大丈夫

もしもPKになったらその時は精一杯キーパーを務めよう

飛葉中の選手として、私に出来る精一杯を務めよう

が、自体は思わぬ方向へ向かった

「えっ・・・?!」

何と、将君はPKを外してしまったのだ

しかも見事に。奇想天外な方向へとボールをけっ飛ばしてしまった

これには私だけじゃなくて隣に座ってた玲さんも「まぁ・・・」と奇妙なため息を吐いた

「あの子、もう少し面白い子だと思ってたのに・・・」

・・・何があったの?

だって将君らしくない

私の知ってる将君はいつだってサッカーを大好きだから

楽しそうにサッカーをして、上手くなることに貪欲で

(だから?)

真っ正面からぶつかることしかしらないから

だから外したの?

「・・・玲さん」

気が付いたら口を開いていた

玲さんが試合から目を外してこっちを向いた

将君はまだ絶対にあきらめてなんかない

「まだ この試合荒れます」

それはただの予感だった

だけどそれは何て不確かな確信だったんだろう

不確かな予感は

確信に変わった

ラインを割るか割らないか、のギリギリの所へ蹴られたボールに将君が追いついた

途中で玲さんが立ち上がったような気がしたけどそれを確かめる一瞬すらも惜しんで私は試合に釘付けだった

ゴール横の角度の無いところ ほとんどゴールポストのラインと並んだところから

将君は一点を決めた

「ゴーーーーーール!!!」

後半残り3分 試合は同点になった



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------------後書き--------------------------------------------------------------------------

・・・自分の自然描写の下手さに泣きたくなります。
もっとこう・・・試合の緊迫した空気とかを醸し出したいというのになかなか上手くいきません
とりあえず日々精進!

                           1月10日 砂来陸