ドリンク良し

タオル良し

気合い良し

とにかく私は私らしくやっていこうと思う




本日ハ晴天ナリ




「よっし。準備完了」

綺麗に並べられたタオルとドリンクにちょっと自己満足。あと必要なのはボールペンとノートだな。

ちゃん」

ポン、と軽く肩を叩かれて振り返ると玲さんが立っていた

「あ、玲さん今日はちょっと遅かったんですね」

いつもはもっと早くに来てる玲さん なのに今日は練習時間ギリギリに来た

まぁ監督が遅くても翼がしっかりしてるから大騒ぎはしないんだけど・・・

「家を出ようとしたら電話が鳴っちゃって・・・それで遅くなったの」

サングラスを掛けたまま髪を掻き上げる玲さん

うぅ〜ん格好いい・・・何やっても様になってるなぁ・・・

「何だか元気になってみたいね」

「え?」

ちゃん。ここのところ元気がなかったでしょう?」

あ・・・玲さんも気付いてたんだ・・・

やっぱり私の悪い癖だ 一つのことしか見えなくなる

「ご心配かけました」

頭を下げてそう言うと玲さんはいつもみたいに優雅な笑みのまま「元気になってくれたならそれで良いのよ」と言ってくれた

玲さんって格好いい上に優雅だね!と改めて思った


!練習するから手伝って!」

「はーいっ!」

格好良くて優雅な玲さんに見とれてる間もなく翼から呼び出しがかかった

「イーチ・ニー・・・」

今更だけどやっぱり私は恵まれてるんだと思う、とみんなと一緒に声出しをしながら思った

ただのマネージャーなのにこうやってみんなに混ぜてもらって本当にサッカー部の一員として扱って貰ってる

ありがたいよなぁ・・・

「ちょっ、ギブギブ!!」

「あっごめん」

いつの間にかナオキの背中を押すのに力が掛かりすぎてしまったらしい

涙目で訴えてくるナオキ・・・・いや真面目にごめん

「ナオキお前それくらいで根上げんなよ」

同じく翼とペアを組んでストレッチ真っ最中のマサキが涙目でゼーゼー言ってるナオキを見て笑った

「そう言うけどなぁマサキ 今のはホンマにきつかったで?!の全体重やで!!」

「ちょっとそれって私が相当重いってこと?」

・・・確かに軽いとは言わないけど

言わないけど重いって言われるのもむかつくので不意打ちでまた力一杯背中を押してやった

「ぎゃーっ!!!マジでギブー!!!」

スポーツマンならこれくらい耐えろ(あんまりスポーツマン関係ない)

「ちょっと、死なない程度にしててよ?一応これから試合なんだしね」

「大丈夫。これくらいで死ぬほどナオキはやわじゃないから」

「確かに」

ナオキの断末魔なんて聞こえないふりしてみんなで勝手に会話を進める

や、ナオキだったら大丈夫かな〜ってみんな思ってるわけですよ。勝手に


「両選手は集合して下さい!」

あ。審判の呼び出しが掛かった

「それじゃ、みんな頑張ってきてね」

私もそろそろマネージャー業に戻らなきゃ。結局ノートとペンは準備し損ねてるし



「うん?」

名前を呼ばれて振り返ると腕を取られてそのままちょっと前のめりになった

そして翼のドアップ

「元気になったみたいじゃん」

「・・・私そんなに元気なかった?」

玲さんにも言われて翼にも言われて・・・私ってそんなに態度に出ちゃうのかな

「普段の勇ましさはカケラもなくなってたからね」

「・・・・」

勇ましいって・・・それって褒められてるの?あんまり女の子向けの褒め言葉には聞こえないんだけど

「しゃんと背筋を伸ばしてるらしいってこと」

ふっと笑った翼。笑った翼の顔なんて今まで何度も見たことがあったけどこんなに至近距離で見たのはたぶん初めて

至近距離でもすごい綺麗に笑うんだね

「期待してるよ。手腕マネージャー」

「・・・期待してて。手腕キャプテン」

翼はそれで満足したらしく手を離してみんなと一緒にコートに向かった

私も急いで玲さんの所に戻る

やばい。・・・顔が熱いかも・・・

いやだってさ、やっぱり近くで見ても美形は美形なんですよ!翼はすごい女顔だけどそれでも美形には変わりないんだよ!!

ちゃん。ノートとペン準備しておいたわ」

「あ、ありがとうございます」

ノートとペンを受け取って椅子に座ると何故か横から視線を感じた

首だけ右に回すと何故か玲さんがにこにこの笑顔でこっちを見ていた

・・・?

「その眼鏡 翼から?」

「あ、はい。朝会ってイキナリ掛けさせられたんですよね。

 何の意味があるのか良く分からなかったんですけど・・・」

そういえば何のための眼鏡なのか結局聞きそびれてた

別に度が入ってるわけじゃないからそんなに違和感も感じなかった・・・から掛けたままなんだけど

「顔が分からない様に、らしいわよ」

「え?」

「翼ったらちゃんのお友達が桜上水にいるって聞いて『アイツの事だから絶対顔を合わせたくないはずだ』って言ってね。

 その眼鏡、から借りてきたのよ」

何だか薄荷キャンディーを食べたような気持ちになった。頭の中がクリアになるような感じ

「翼らしいわよね」

くすくす思い出すように笑う玲さん

私はそれに対して小さな声で「そうですね」って言うのが精一杯だった

ノートで顔ぎりぎりまで覆い隠してその隙間からこっそりと翼を盗み見る

ちょうどキャプテンマークを付けてるところだった

(・・・あまのじゃくめ)

心の中でそんなことを思ってしまった


すっごい分かりにくい優しさ

あまのじゃく時々、優しさ

「翼らしすぎるよ・・・」

思わず笑いが零れてしまって 一緒になって不覚にも泣きそうになった


それはかなり不器用な優しさの形だから

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-------------後書き------------------------------------------------------------

どうしようもなく書きたくなってテスト中なのに書いてしまった一品です。
今回は翼さんがメイン?
何だかんだ言いながら翼さんって面倒見がよさそうだし優しいんですよね。
さて、ようやくいつもの元気をとりもどしたちゃんです

                        11月30日 砂来陸