朝起きて
大きく伸びをして
「んーっ今日もいい天気」
本日ハ晴天ナリ
「「おーっす!」」
「あっロク五助おはよう」
「相変わらず早いなぁ」
「マネージャーなんだから準備くらいはやんなきゃね」
自分としては当然としてやってることなのだがロクと五助は何故だかとても感心している
「そういえば2人とも今日は早いね
もしかして緊張して早く起きたとか?」
「「当たり」」
どーりで2人とも眠そうな顔してるわけだ
「つーことで何かすることねぇか?」
すること?あぁ、何か手伝ってくれるってことかな?
でも私としては手伝って貰うより・・・
「それじゃ、2人ともまず顔を洗って来る事をオススメします
大切な試合にそんな眠そうな顔で出るのは恥ずかしいよ?」
クスクス笑いを堪えられないでそう言うと2人ともそそくさと水道に向かった
北多摩北地区予選準決勝がやってきました
まぁ翼曰く「これは当然の結果」らしいけどやっぱり私としては嬉しい限りで
特に今回はテスト勉強返上で練習したわけだしね
ホントに・・・これで今日負けたら私のテスト勉強時間返せって話さ
って冗談ですけど
もし負けたとしても充分頑張ったんだから良い試合になると思う
・・・まぁそんなこと言ったら翼に怒られそうだけど「試合前から何言ってるの?」って極上の笑みで
「ちゃん?」
「はいっ?」
慌てて顔を上げると横でクスクス笑いの玲さんが立っていた
「もしかして緊張してるのかしら」
「い、いえっ」
「そう?」
その笑い方にすら気品を感じさせる玲さん
見たところ玲さんは全く緊張してる様子は・・・ない
「これから国部二中の監督さんに挨拶に行くからそれで緊張してるのかと思ったわ」
「国部二中の監督さんって教師兼、でしたよね?」
正直な話、教師をしてて監督っていうのはあんまり期待してない
だって大抵は学生の頃運動部だった、程度の人ばっかりだから
まぁ たまーに元サッカー選手とかいるけど(例えば桐原さんとか)
ずんずん歩いていくと国部二中のサッカー部員と思われる人達とちらほらすれ違った
思いっきり見られてたけど出来るだけ気付かないふりして無視
色んな所と試合をしてみて分かったことがある
女の監督は格下に見られるということだ
玲さんを甘く見てると痛い目に遭う、ということは試合が終わってからじゃないと分かって貰えないらしい
そうしてさらに歩いていくとようやく監督らしい人を見つけた
「こんにちは」
躊躇なく玲さんが挨拶をする
「飛葉中の監督をしてます西園寺です」
向こうもにっこりと笑顔でこちらに手を差し伸べてきた
「初めまして。国部二中の雨宮と言います。今日はよろしくお願いします」
優しい微笑み方をする人だな、と思った
足をどこか引きずったようなヒョコ、ヒョコ、とした歩き方をしている
(足が悪いのかな?)
気になったけどあんまりじろじろ見るのも悪いと思い視線を外すと今度は監督さん本人とばっちり目が合ってしまった
「君はマネージャーさんかい?」
「は、はい。飛葉中でマネージャーをしてます三上です。今日はどうぞよろしくお願いします」
頭を下げるとまた引きずっていた足が目に入った
「こちらこそよろしく」
声までとても柔らかい
こんな人がサッカーを教えることが出来るんだろうか?
余計なことかもしれないけどちょっと不安になった
「メンバーは今言った通りです」
選手全員に集合を掛けて玲さんは威風堂々と言い放った
うん、これでこそ監督!って感じだ
いよいよ試合が始まる
試合中の私の仕事はひたすら『書く』ことだ
もちろんドリンクやタオルの準備も仕事なんだけど・・・(これが本来のマネージャー業)
ペンを片手に試合の状況とか相手の動きチームの動き とにかくたくさんの事をひたすらにノートに記録しておく
簡単に言うなら試合から目を離しちゃいけない
・・・ある意味ハードかも(目薬はかかせません!)
「絶好調ね。みんな」
「ホントに」
試合は開始早々 飛葉中のペースだった
(国部二中にはずばぬけた選手はコレと言って居ないのかな?チームワークは結構良いみたいだけど・・・
こっちの選手は一癖も二癖もあるのばっかりだしな あ、1点先取)
カリカリとノートに記録はとりつつ試合から目を離さない
(ん〜・・・ポジションはしっかりしてる。フォーメーションもなかなか・・・
やっぱりあの監督サッカー詳しいのかも)
ちらりと国部二中のベンチを見てみると雨宮さんはただじっと試合を観ていた
とても落ち着いた様子で
が、はそれよりもその手前に座っている人に注目していた
(・・・でかっ)
やたらめったと大きな人だった
そして色素の薄そうな髪
さらに目つきが良いとは言えそうにない人相
(・・・不良?)
「ちゃん」
「へ?」
かなりマヌケな声をだしてしまった
「前半終了5分前よ」
時計を指さした玲さんがまたもや優雅に微笑んでいた
「あっ!」
試合終了5分前となると本来のマネージャー業に戻る
つまりドリンクやタオルの準備をしなきゃいけない
粉が少なめのスポーツドリンクを作ってタオルは3分の1水を入れたバケツに突っ込む。さらに氷投入
飲み物はあんまり冷たすぎるのは駄目だからせめてタオルは冷たいのを準備する
・・・絞るとき地味に手が痛いけどね
(まぁその辺は試合を頑張ってる選手の為に我慢我慢)
前半終了直前、ホイッスルが鳴る
どうやら飛葉中が2点目を決めたらしかった
「、ドリンク」
「はい」
「ーこっちも!」
「はーい!」
「タオルは?」
「ちょっと待って!」
この間の時間はかなりバタバタしてる
あんまり時間ないしね
「」
「ん?」
振り返るとタオルを片手に持った翼が立っていた
「作戦会議始めるよ。の頭脳の見せ所 期待してるからね」
ビシッ!と指までさされる
「期待に添えるように頑張ります」
思わず苦笑した
今度は作戦会議に参加させてもらう
これが私にとって一番楽しいことだ
本当はこういうのはマネージャーの仕事じゃないだろうけど
翼達は私を作戦会議に参加させてくれる
そして何より嬉しいのは
「えーっと・・・前半良い感じだったので油断せずにこのままのコンディションで頑張ってクダサイ
それから、国部二中は基本忠実なプレイなんで一度タイミング狂わされると持ちこたえられないと思う。だからそこは注意」
彼等は私の意見を聞いてくれる
私はそのためにノートをとってるんだ
「顔にやけてるぞ」
横からマサキが呆れた様な顔で空っぽのドリンクを突き出してきた
「いくら勝ってるからってまだ早いだろ」
どうやらマサキは勝利を確信して私が笑ってると思ったらしい
「違う違う」
慌てて訂正を入れる
いくら私でもそこまで失礼なマネしませんって
「じゃ何で笑ってんだ?」
・・・笑わないかなぁ?
「嬉しいの」
「は?」
「私の意見をマネージャーの戯れ言じゃなくて一意見として聞いてもらえるのが 何か嬉しい」
そういうとマサキは一瞬目を丸くした
・・・やっぱり笑う?
まぁ笑われてもしょうがないけどさ
今更何だかしみじみ思っちゃった訳なんですよ
「の目は確かだからな」
さらっと言われた
「ちゃんと試合観てる奴の意見だから俺等も聞くんだよ」
ドリンクを飲みながらさも当然のようにマサキは言う
今度は私が目を丸くする番だった
そうやって当たり前のように受け入れてくれる
それが私にとって何よりも嬉しいこと
-----------後書き----------------------------------------------------------------------------------
・・・あれ?また微妙な所で切れちゃったよ
微妙に天城君登場です!
天城君大好きなのでこれから頑張って活躍してもらいます♪
3月21日 砂来陸