あれよあれよと




本日ハ晴天ナリ




!ドリンク足りない!」

「あっ今持っていく!」

ボールに空気を入れていた手を止めてドリンクを取りに部室に走る

(・・・テスト期間中だっていうのに何やってんだろ私)

球技大会も終わってやって来たのは

来ても全然歓迎出来ないテスト週間

もちろん本来ならサッカー部も部活動停止

そのへんはさすが翼

今度の休みに試合が控えてるからってギリギリまで部活の許可を貰ってきやっがった(さすがにテスト前日からは部停だけど)

そうやって頑張ってる部員を見捨てるわけにもいかず(翼に押し切られたともいうが)

平日なのにも部活動に参加する羽目になったのだ

「・・・・私は何時テスト勉強するんだろうか」

「ま。しょーがねぇよ」

「!?」

独り言のつもりだったのに返事が返ってきて驚いた

「・・・何でマサキがここにいるの?」

「ドリンクがいつまでたっても来ないから」

そう言ってマサキはが持っていたドリンクを半分持ってくれた

「ありがと」

「ん。」

マサキは相変わらずぶっきらぼうで優しい




「遅い」

それに対して翼は相変わらず厳しい

「・・・スミマセン」

「ただでさえ長い時間は部活出来ないんだからてきぱき動いてよね

 それから、これからミニゲームするからAチームのキーパーやって」

「またですか・・・」

思わずそう呟くと翼は瞳で「何か文句でもあるの?」と言ってきた

・・・恐ろしいのでそれ以上は文句が言えずすごすごとゴールポストに向かう

翼も気が立ってるんだ、と言い訳をして自分を慰めてみる(ちょっと寂しい)

実際、試合まで一週間切ったというのにテスト週間だとかで部活時間が制限されてしまい翼は日に日に不機嫌になっているようにみえた

そして球技大会以来、翼は私をマネージャーとしての仕事だけでなく練習にもしばしば参加させるようになった

理由は至って簡単

「球技大会やりすぎたかな・・・」

「まぁまぁ。今更そんなこと言っても始まらないって」

眉間に皺を寄せて溜息を吐くに傍にいた五助が苦笑気味に言った

「でも負けたんだよ?」


そう、あの劇的なマサキ達との対戦は接戦ながらも達は惨敗した

やっぱり2年生と1年生の差は想像以上に大きかった


「確かに結果を見れば負けたけど

 翼はそれよりお前の総帥力を認めたんだろ」

「総帥力ねぇ・・・」

試合が始まると無我夢中になっていたので認めて貰えたとしても素直に喜べない

そうやって未だに首を傾げているに五助は小さく吹き出した




一方その時、飛葉中裏門から一台の車が入ってきた




「お疲れ」

「お疲れさん」

一連の練習が終わってサッカー部員は一緒に休憩を取っていた

も今だけはマネージャー業を休止して休憩している

「相変わらず良い反射神経してるよな」

「どーも」

一応キーパー一筋で5年以上経つわけだしねぇ

小さな頃の思い出らしい思い出といえば男子に混じってサッカーをしてるのか亮とPKの練習をしてる姿

・・・今更だけど私 女の子らしい遊びって全然してないんだなぁ

サッカー一筋だった幼女時代を後悔するつもりはないが少しくらいは女の子とも交流するべきだったかもしれない

「ごっそーさん」

「お粗末様です」

目の前にマサキが立っていた

空になったボトル目の前に差し出され反射的に受け取る

そろそろ休憩時間も残りわずかになりみんな立ち上がり始めている

私もマネージャー業を再開せねば


っちゃーん!!」

語尾にハートがついてそうな声で名前を呼ばれて思わず手に持っていたボトルを落としてしまった

ガラガラと派手な音をたてた

とても聞き覚えのある声で とある人物がチラリと頭をよぎった

「・・・あれ・・・」

唖然というか呆然というか何とも言い難いマサキの声

観たくない、そう思っても名前を呼ばれた本人が無視することも出来ずぎこちなく、ゆっくり首を動かした

そこにいたのはやっぱり

(・・・何でいるんですかお母さん・・・・)

あふれんばかりの笑顔で手を振ってる母親の姿を見ては頭が痛くなった

「珍しく仕事が速く終わったから・・・来ちゃったっ」

まるで新妻が夫の職場に来たみたいな口調で

相変わらずの笑顔でグランドを横切ってきた

「・・・来るなら来るで前もって連絡くらいしてよ」

「ビックリさせようと思ってっ」

何だろうこの新婚のようなノリは

あぁもう本当に頭が痛くなってきた・・・

!おまえ姉ちゃんいたのかよ!?」

「これまたえらい別嬪さんな上に・・・そっくりで」

誰がお姉さんだって?

思わずそう聞き返そうとしたがその質問が言葉になる前にナオキとロクはつつつ、とお母さんの前に移動していた

・・・微妙に頬を染めてる様に見えるんだが?

これは「この人今年で31よ」とか「これでも2児の母親やってるのよ」と教えてやるべきだろうか

「初めまして、俺・・・じゃなくて僕さんの友達で「ナオキ君でしょ?」

この上なく気色悪いナオキの自己紹介を遮って(だいたい僕って誰だよ)

お母さんはナオキの名前を当てた

「関西弁のナオキくんでしょう?ちゃんからよく話聞いてるの。

 それからドレッドの君が・・・えーっとロク君?それとも五助君かしら?」

「あ、ロクです・・・」

反射的にそう返したロクにお母さんは「君がロク君ね」と嬉しそうに笑みを向けていた


「・・・母親じゃなかったのか?」

「母親よ。正真正銘のね」

唯一面識があるマサキは姉ではないということを知っていた

ぼそりと小さな声で耳打ちされて私も小さな声でそう返した


「何騒いでるの?」

どうやらドリンクを飲み終わったらしい翼がそこに立っていた

見るからに部外者です、的な人が立っているのをみて物珍しげに上から下まで観察して時折私と見比べるような仕草まで見せた

やっぱり一目で私の知り合いと分かるくらい顔が似てるらしい・・・

「君、翼君!?」

お母さんが驚いた様に声が上げたので私もつい驚いた顔でお母さんを見た

ちなみに翼も驚いた顔をした



「やだっ本当に可愛い!!」



ぴしっ

あえていうなら空気にヒビが入ってしまったような。そんな感じ

そんなセリフをお母さんは大声で言ってしまった


「・・・・」

翼が無言でこっちを見た

その顔は恐ろしいほどの笑顔で

ダラダラと冷や汗が流れた(言ったの私じゃないのに!)


「髪は猫っ毛で目はぱっちり

 色も白いし・・・その辺の女の子よりずっと可愛いわ・・・」

お母さん今すぐ帰って下さい

翼が笑顔のまま青筋を立てているのをこの人は気付いていないのか

「それにー「いい加減にしてよ!お母さんっ」

これ以上お母さんの演説が続くと命の危険に関わる

本気でそう思った


「「「お母さん?」」」


みんなの興味は一気に翼から母・都へと移ったみたいだった

「え。・・・今、なんて?」

何でそんなに信じられないって顔をされるんだろう

たった今自分が何をやらかしたのか全く気付いていない笑顔の人を尻目にはこめかみを抑えた


「・・・うちの母です」


部活が終わる間際のグランドに奇妙な絶叫が響いた

Next

------------後書き--------------------------------------------------

なんだかなぁ・・・やっぱり無駄に話が長くなります。
どうにかして短くしたい・・・
都さん大暴れの巻でした

                               2月12日 砂来陸