平坦な道なんて
用意されちゃいないさ
凸凹道を歩こう
本日ハ晴天ナリ
竹巳君に返信のメールを打って
私は読んでいた雑誌を棚に戻し、プリンを2つレジに持っていった
「スプーンは要りますか?」
「はい」
ビニール袋に手際よく入れられていくプリンを見ながらお財布からお金を出す
「244円になります」
「ありがとうございましたー」
店員さんに見送られてコンビニを出ると丁度、亮が走ってきているのが見えた
亮も私に気付いたみたいだ
「久し振り」
軽く片手を上げて挨拶をしてみる。ちなみにビニール袋を持った手とは反対の手だ
「おまえっどうしたんだよっ・・・イキナリ・・・」
息切れ気味に話す亮
うん、何が言いたいのかはそれとなく伝わってるよ
でも
それはまだ教えてあげない
「ねぇ亮」
だって
今日は亮の為に呼んだんだもの
「公園に行かない?」
コンビニのすぐ傍にある公園を指さして言ってみる
「・・・別にいいけど」
承知をしてくれた割によく分かっていない、という顔をしている亮はちょっと面白くて
思わず笑いそうになったのを堪えた
もうすこし。
公園といっても、そこはそんなに上等な場所なんかじゃなくって
ただ色褪せた滑り台。それから古ぼけたブランコがあるだけの小さな場所だった
でも無駄に小綺麗な所よりもこっちの方が話しやすそうで私としては好都合なのだ
「・・・座れそうな場所ねーぞ」
「ブランコで十分だよ」
亮が顔をしかめたのが分かった
確かに中学3年にもなってブランコ、っていうのは確かに抵抗があるものなのかもしれない
でもそんな亮の様子には気付かないふりをして私は先にブランコに座った
しぶしぶながら亮も隣のブランコに腰掛けた
季節は夏に向かっている、とは言うもののやっぱり夜の空気はひんやりと冷たい
ふと顔を上げると星が綺麗に輝いていた
きっと明日は晴れだ
「今日は、何があったんだ?」
先に切り出したのは亮の方だった
「さぁ。何でしょう?」
もったいぶって、って訳じゃないけどそう言ってみた
また、亮が顔をしかめた
「亮はさ、今部活楽しい?」
「なんだよいきなり」
何なんだろうね
私自身もイマイチ分かんないや
それでも何故か聞いておきたかった
・・・・まぁちゃんとした返答は期待してないけど
ねぇ亮
私はサッカーをしてる亮よりもサッカーを楽しんでる亮の方が好きなんだ
今の亮はサッカーが好きですか?
「今日、桜上水の3回戦だったんだ」
ギシッと不自然にブランコが軋む音がした
それも隣から
「接戦の末PK戦で桜上水が勝ったよ」
「・・・・」
「友達がね、桜上水にいるんだ」
「・・・・」
「だから観に行ってたの」
「・・・・」
「そういえば桐原さんにも会ったよ」
「監督に!?」
初めて反応らしい反応を返してもらった
それを境に私は亮の方に頭を向ける
目が合うと亮はどこかばつが悪そうに目を泳がせた
「桐原さんはね、身体の方は全然大したことなくてもうすぐ部活も復帰するらしいよ」
不思議だろうね。私がこんなに色んな事を知ってるのが
「きっと亮の事だから監督の様態なんて誰にも聞けないでいたんでしょ?」
しばらく目を泳がせていた亮だったけど観念したのか口を開いてくれた
「・・・・何もかもお見通し、ってか?」
「何もかもじゃないよ」
だって私は亮の気持ちを知らないもの
「私が知ってるのは水野君って人を挑発して桐原さんとけしかけたことくらいかな」
「・・・・ほっとけよ」
低い、怒った声
「どーせ俺が悪いって言いたいんだろ。今更説教なんてされなくたって分かってるよ」
分かってるよの後に だけど って言う声が聞こえたような気がした
本当に亮が言ったわけじゃないけど
そう聞こえた
「亮だって頑張ってるんだよね」
怒った亮は怖いけど絶対に目は逸らさないで話す
こっちも意地なのだ
「毎日練習頑張って、
チームメイトの特性を生かしたパスだせるように
正確なパスを出すことが出来るように
武蔵森10番に恥じない努力をしてきたんだよね・・・そうやって亮は10番になった」
十分頑張った亮を私は知っているから
心配しなくていいよ
亮は何も言わなかった
代わりに聞こえたのはキィと古ぼけたブランコが軋む音
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今回のみかみんはあんまりシスコンっぽくないですね〜
みかみんとちゃんの駆け引きです(違
いっつもお兄ちゃんに頼りっぱなしのちゃんですがたまにはちゃんの方が亮を諭す事だってあるんです
・・・いつもと逆パターンでしたがいかがだったでしょう・・・?汗
10月20日 砂来陸