結局、水野君とやらのお家に行った将君は9時を過ぎても帰ってこなかった
まぁ将君だって友達付き合いとかあるんだし、ってその時は気にしなかった
だけど
何だか嫌な予感がしたんだ
本日ハ晴天ナリ
「っどうしたの!?」
11時も過ぎた頃、ようやく将君は帰ってきて
いやね、私もさすがに10時過ぎまで人様の家で待ってるのはどうか、って思ったんだよ?
でも試合に勝ったんだし
おめでとうって一言いってあげたくて・・・・
ごめん、それは実際建前で
本当は何だか嫌な予感がして
何て言うんだろう
ザワザワ?そんな感じが胸の中にあって
それがすごく気持ち悪くて
何だか無性に将君の事が心配になった
だから迷惑を承知で(功さんは迷惑じゃないよ!って言ってくれたけど)こんな夜遅くまで風祭家にお邪魔していたわけです
それで
玄関から「ただいま」って声が聞こえて
ホントに安心した
(良かった・・・やっぱり私の思い過ごしだったんだ)
そう思って玄関までお出迎えした私が見たのは
ドロドロの血まみれTシャツを着た将君でした
思わず倒れるかと思いました(貧血で)
でもそれは根性で何とか耐えて
「っどうしたの!?」
冒頭に戻ります
Tシャツはホントにありえないくらい血まみれで・・・
(あぁこれは洗っても落ちないな・・・・)
急いでTシャツをぬるま湯に浸けてはみたけどあんまり効果は無し
「・・・・ちゃん」
Tシャツを片手にうなだれていると後ろから控えめな声を掛けられた
「あ、将君」
「それ、ごめんね?」
最初、何で謝られたのか分からなかった
だけど将君の目線が私が持ってるTシャツに向いてて
あぁ、将君は私がコレを見て落ち込んでたからか、って分かった
っていうか
人様の家の脱衣所で血まみれのTシャツを握りしめてる私ってどうよ
「ううん、気にしないで」
そもそもコレは将君のだし、謝られるのは可笑しいよね
見たところ、将君はどこも怪我して無さそうだった
あの血は将君のじゃなかったんだ
良かった
あの血の主の人には悪いけど嫌な予感、が将君の怪我じゃなかったのは本当に良かったって思った
「あ、将君、試合勝ったんだってね。
おめでとう」
結局、あの嫌な予感が気のせいだって分かると妙に焦ってた自分がまぬけに思えた
そんな気持ちを隠すためにイキナリだけどそう言ってみた
「あ、ありがとう」
あ、れ?
まだちょっとしか喋ってないけど
なんだか今日の将君はいつもと違う感じがした
試合に勝ったっていうのにあんまり嬉しそうじゃないし・・・
それに何だか喋っててもどこか上の空、なところがある・・・・ように感じられた
疲れてるのかな?とも思ったけど何だかそうじゃないみたい
「ねぇ将君。
何かあったの?」
私がそう尋ねると将君は驚いたように顔を上げた
「・・・・何でそう思うの?」
あぁやっぱり何かあったんだ
「将君の事 だから」
将君は、自分が辛いこととかこっちが聞かないと話してくれないっていうちょっと困ったクセがある
心配を掛けたくないっていうのがあるんだろうけど
私は、話して欲しい、って思うんだ
だって亮が言ってた通り
『弱いトコを見せるのはある意味「信頼の証」』なんだって思うから
「何かあったか、私が聞いてもイイコトかな?」
だからって、無理矢理聞き出そうとは思わない
無理矢理には聞き出しちゃいけないと思う
「言いたくないなら聞かないから」
だって
誰にだって言いたくないことの一つや二つはあるでしょう?
しばらくじっと考え込んでいた将君だけどやがてゆっくりと言った
「・・・・・あのね」
将君は、どういって良いか分からないって言いながらも一生懸命話してくれた
「僕の友達に水野君っているんだ・・・・」
始まりはそれ
私は黙って話を聞くことにした
将君は一生懸命言葉にして、話してくれた
友達に『水野君』に武蔵森編入っていう話が出たこと
「・・・・それは桐原監督が言い出したことらしいんだ
あ、桐原監督って水野君の・・・お父さんなんだけど」
桐原監督・・・は知ってる
っていうか実はゲッサン自動車時代の密かにファンでした
そういえば武蔵森の監督やってるんだったね
うーんその水野君っていう子にも色々複雑な家庭事情があるみたい
気にはなったけど今は黙って話しを聞くことに専念し続けた
「・・・・で、今の武蔵森の10番は三上先輩って言うんだけど」
何だか話が嫌な方向へ流れてきた
だって
亮が出てきたから
そういえば将君にはまだ教えてないんだったな、亮と私が兄妹だって事
「・・・・実はさっき水野君とホームズの散歩してる時、三上先輩と遇ったんだ」
・・・・・うん、亮は寮生活のはずなのにこんな時間に何やってんだろうね
「・・・・三上先輩が水野君のことけしかけちゃって・・・・・」
・・・・・へー
「・・・・・そのまま水野君は監督とやり合っちゃって・・・・」
・・・・・・
「・・・・水野君が出て行った後、監督が血吐いて倒れちゃって・・・」
チョット待った
「・・・あの血は監督のなんだ」
うん、ちょっと待ってくれ。
それじゃあ何ですか? うちのバカ兄貴はこんな夜中に寮を抜け出してその水野君とやらをたたきつけて
挙げ句の果てに恩師である監督に血を吐かせたんですか?
「・・・・・三上先輩の気持ちも分からないこともなんだ
だっていきなり自分のポジションを奪われて控えに回れ、なんて普通納得出来ないし・・・
それに、武蔵森で司令塔を受け持つっていうのは本当に頑張らなきゃ出来ないことなんだ」
そうかぃ・・・・
まぁね、亮が10番っていうのは知ってるよ。それがホントにすごいってことも
10番取ったときすっごく嬉しそうに私に電話してきたもんね
でもさ
でもさ
何やってんだようちのバカ兄貴は
「でも・・・やっぱり三上先輩がやったことは・・・・イイコトとは言えないと思う」
「・・・・・ごめんなさい」
あぁもう私は謝るしか出来ません
「?なんでちゃんが謝るの?
あ、そういえば三上って同じ名字だね。もしかして・・・知り合い?」
まさかこんな形で亮との関係をばらすことになるとはね
つーかこれで将君とぎこちなくなったら
・・・・恨むよ亮?
「三上亮は・・・私の兄貴です・・・」
「えっ?」
将君が固まりました
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わぁ・・・・つーか梅雨もうとっくに明けてるよ
相変わらず更新がノロノロですね
これでも楽しんでくれる人がいることを祈っています
7月27日 砂来陸