「将君?」
将君がいた
「あ。ちゃん久し振り」
「うん、久し振り」
・・・・・・・・・・じゃなくて!!
「どうしているの?」
私がそう聞くと将君はちょっと困った顔をして笑った
本日ハ晴天ナリ
「ちゃんどうしたのー?」
に目の前で手を振られてようやく我に返った
「何だかとっても複雑そうな顔してたよ?何かあったの?」
いかん。顔に出てたか
「ごめんね。ちょっと考え事してただけだから」
そう言って笑って見せた
なんと将君は引っ越してきたらしい
武蔵森って全生徒寮制なのに・・・・・・・・・・・何かあったんだ
まだ色々聞きたいことがあったけど私も時間が無くて
「帰ってきたら将君家いくね。それから話そう?」
って言って別れた
(きっとよっぽどの事があったんだよね。)
サッカーが大好きで武蔵森に入学した将君
サッカーを語る将君の顔は本当に生き生きしてて笑顔で
見てる私まで笑顔になれた
3軍でもそれでも武蔵森にいれば可能性があるって頑張っていたのに
一体何があったんだろうか?
「ちゃん、次スポーツテストだよー?着替えないのー?」
のわっ
いきなりのドアップが視界を占めた
「びっくりした・・・・・」
周りを見ると殆どの生徒が着替えを始めていた(男子は隣のクラスで)
はもう着替え終わっていた
「ごめん!急いで着替えるから!!」
慌てて体操服を引っ張り出し、ベストを脱ぐ
体操服を着て、ジャージを羽織って長い髪をポニーテールになるように一つに束ねる
(あんまり結ぶのは好きじゃないんだけど運動するときは邪魔だよね)
そんなことを考えながらちゃっちゃと手櫛で髪をまとめ上げていく
カシャ
無機質な機械の音が教室に響いた
「・・・・・・・・何をしてるのかな?さん」
音の出所は
正しくはが手にしているカメラからだった
しかもそのカメラのレンズはどう見ても私の方を向いている
さぁ、これは一体どういうことなんでしょうね
は私と目が合っても(私に睨まれても)ニコッと笑顔を向けて
「売り上げの1割はあげるからね!」
「売り上げって何ですか」
だいたい私の写真なんて買うヤツいないって
もっとに言ってやりたいことはあったけど予鈴が鳴ってそれも叶わず駆け足で教室を出る羽目になった
スポーツテストは2人一組でやるって言われて私はと組むことになった
小学校の頃は2人一組と言われてもクラスは奇数だったからいつも私が余りで(この辺が寂しい小学校生活を物語っています)
ペアがいるってことがちょっと嬉しかった
「ペアは出来ましたか?それじゃあまず短距離から測っていきたいと思います」
スポーツテストが始まった
「すっごーい!ちゃん短距離一番だったよ!!」
スポーツテストではペアを組んで先後を決める
で、それでお互いのタイムなんかを覚えてて記録するんだけど
短距離走、ちゃんは見事に一番でした!!
あ、6人ずつ走ってその6人の中でね
「ちゃん格好良かったよ!」
私、西園寺はそう言いながらちゃんに駆け寄ってタオルを手渡した
「ありがと。でも偶然だよ?それに走ったの6人だけだし」
「そんなことないよ!」
だって走ってる姿が本当に格好良くて思わず写真取り忘れたくらいだもん!と心の中で呟いて(実際に言ったら怒りそう)
「次は幅跳びですー移動して下さい」
順番に種目をこなしていって
スポーツテストは無事に終わった
ちゃんは偶然なんて言ってたけどどれも記録は良い方だったと思うよ?
そりゃあ短距離と長距離以外は1人ずつ計る競技ばっかりだったから一番かどうかまでは分からなかったけど
もちろん写真も撮ったよ!ちゃんに気付かれないようにね
「ちゃんもう帰るのー?」
SHRが終わって急いで教室を出ようとしたらにそう声を掛けられた
「うんちょっと用事があるから」
将君と話がしたい
「そっかー・・・・・分かった」
なんだか残念そうな顔されて私もうっときてしまった
「ごめんね」
それじゃあと手を振って私はバス停までの道を足早に進んだ
いつもよりも1本早いバスに乗って
ホントはこの時間はすごく混むからいつも1本遅らせて乗ってるけど
今日だけは我慢して乗ることにした
〜♪
ちょっと眠り被ってたらケータイの着信音が小さく鳴って慌ててポケットのケータイを引っ張り出した
『送信者:功さん
題名:無題
今日、カレーと鶏の唐揚げが食べたいな☆』
............................
私に作れと?
早く帰りたかったけどこんなメールが来たら作らないわけにはいかない
仕方なく、途中で降りてスーパーで買い物する羽目になった
買い物を済ませたらまず一回自分の家に戻った
そらから着替えなんかを済ませてさっきの買い物袋を持って功さんの家に向かった
「あ、ちゃん」
合い鍵で功さん家の玄関を開けると将君がいた
(そっかよくよく考えたら功さんの家が将君の家でもあるんだ)
「おじゃまします」
そう考えたら無言で家に入るのは忍びなくて
『おじゃまします』いつも私が功さんの家に来るときは誰も居ないからちょっと変な感じがした
「もしかしてご飯作りに来てくれたの?」
私の持っているスーパーの袋をみて将君は言う
「うん。今日はカレーと鶏の唐揚げだよ〜」
材料を袋から出していってそう教えると将君は嬉しそうな顔で
「わぁ どっちも僕の大好物なんだ!」
と言ってくれた
(なるほど。功さんは将君の為にこれを指定したのか)
「じゃあ急いで作ろうか」
将君が料理を手伝ってくれたおかげで普通より早く作り終えた
将君家の晩ご飯を作り終えた所で今度は自分の家の晩ご飯を作りに戻る
はずだったけど
「あ、さっきちゃんのお母さんから電話があって『ちゃんの分も一緒にご飯食べさせてもらって良いかしら?』って言われたから『良いですよ』って言っちゃった」
と将君に言われたから
よく分からないけど将君と2人で晩ご飯を食べることになった(功さん帰ってこないし)
「ねぇ将君」
ご飯を食べながらたわいもない話をしばらくして
一緒に後片づけもして
ようやく一息ついたころ私はようやく本題にはいることができた
「どうしてこっちに引っ越してくることになったの?」
いざとなったら聞くに聞けなくなって
今の今まで伸びていたのだ
私の問いかけに将君は朝と同じ様な困ったような笑顔を見せた
そして
「僕、サッカーが好きなんだ」
と言った
「本当にサッカーが好きで、将来サッカー選手になりたくて
でも、僕の両親は勉強を頑張って欲しいって言われて・・・・・・・・・親の期待に応えたい、でも夢も捨てられないから武蔵森に入ったんだ
それから入学してすぐサッカー部に入って・・・・・・本当はね、『背が低いから』ってすぐに3軍にいれられちゃったんだ。
頑張れば僕にもチャンスはある。武蔵森にいるんだからチャンスはある。そう信じて今までやってきた
だけど・・・・・・・・・・聞いちゃったんだ先輩達の話」
それからの事はあんまり覚えてない
ただ適当なことを言って家に帰ってきたんだろう
気が付いたら私は玄関から自分の部屋まで走ってきていた
お母さんはまだ帰ってきてなくて 部屋に入るなりドアを音をたてて閉めた
あれから将君は先輩達が背が低い限り無理と言ったことや、友達の喧嘩別れしてしまったこと。
ポツリポツリと話してくれた
「───────っ・・・」
涙がでた
ズズッとドアにもたれ掛かったまま座り込む
何に対しての涙かは自分でも分からない
将君に非道いことを言った先輩達に対する怒りかもしれないし将君に対する同情かもしれない
もしかしたら両方かもしれないしどちらでもないもっと別の感情かもしれない
とにかく
自分でも何て言っていいか分からない感情が渦を巻いてて
次から次へと涙が溢れてきた
ただひたすらに涙を流して
そして
感謝した
『将君がサッカーを諦めないでくれて良かった』
と
理不尽だと分かっていてもそう感謝せざるをえなかった
誰も居ない部屋で明かりも付けず、私はただひたすらに声を殺して涙を流した
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久々の更新です〜
前半は至って普通の日常的な話なのに後半は何やらシリアス風味に仕上がってしまいました(^^;)
「本日ハ晴天ナリ」始まって以来、ようやく原作が見え隠れしてきましたね
長かった.................!!
次はまた原作を無視した話になっちゃいそうなんですけど読んでもらえると嬉しいです
4月2日 砂来陸