バス停の数を数えてみると

武蔵野森まではあと5つ




本日ハ晴天ナリ






『題名:無題
    今何してる?』

武蔵野森に向かうバスの中で亮宛にメールを打ってみたけど返事は返ってこなかった

「ということはまだ部活中か」

さて、どうしようか

今日はさすがに男のフリして忍び込む訳にもいかない

だってスカートこそ履いてないけど、どう見たって女の子の格好だから

一応もう一度メールを送っておく

『題名:無題
    武蔵野森の近くまで来てるから会えない?
    メール待ってる』

ちょっと命令口調のメールになってしまったが まぁ気にしない



武蔵野森まではあと4つ

「降ります」

どうせ今武蔵野森に着いたってまだ亮の部活は終わってない

だったら少し歩きながら時間を潰すことにしよう



土地勘は結構良い方だから

周りの景色も眺めながらゆっくりと歩いていく

ちょっと昔のことを思い出した

小学校2年生くらいの時、お父さんのお墓参りの帰りに亮と2人だけで探検したっけ

やっぱりあの時も周りの景色を見ながらゆっくりと歩いてた



ただ違うのはあの時は亮が私の手を握ってくれてて一人じゃなかったこと

今更だけど、私の思い出にはいつでも亮がいたんだなって思わざるを得なかった





「・・・・・ウォークマンでも持ってきたらよかったな」

ただ待つという状態にそろそろ飽きてきた

ゆっくりと歩いてきて武蔵野森に着いたけどまだ亮からのメールは無い

空はそろそろ紅くなってきた

♪〜

ポケットから聞こえてきた音楽

突然の事にビックリした

ポケットに手を入れてケータイを取り出す

『送信者:亮
 題名:Re
    裏門に来い』

たったそれだけ

「裏門・・・・?」

いや知らないんですけど

知らないけどここはたぶん正門

ってことは正反対の位置にあるのかな・・・・・?

移動をしようとしてバックを肩にかけ直したとき

「ん?」

なんか校門の向こうから砂埃が巻き上がってきた それもこっちに向かって

反射的に隠れる

「三上先ぱ───────い!!!!!!!」



校門から砂埃を巻き上げながら登場したのはいつぞやのユースの犬だった



「三上先輩 何処っすか──────!?」

(亮のこと捜してる?)

ユースの犬はもちろん私の事には気付かないで亮の名前を連呼しながら走り去っていってしまった

「一体なんだったの・・・・・?」

と、こんな事してる場合じゃなかった

急いで裏門に行かなきゃ亮に怒られる(亮 短気だから)

ちゃん」

「ひっ!!」

いきなり声を掛けられてかなり変な声を出してしまった

「あ、ごめん。驚かせちゃった?」

「竹巳君!?」

なんと後ろに竹巳君が立っていた

(どうしよう・・・・・ひっ!!って言っちゃったよ!ひって!!)

足音無しで後ろに立たれたら誰だって驚くと思います

恐るべき忍者・笠井



「久し振りだね」

確かに久し振りだ

竹巳君とはたぶんあの事件?以来 会ってないから

あの時の約束通りお互い名前で呼べることが嬉しかった

「竹巳君はこんな所で何してるの?」

「ちょっと友達を捜してたんだけど・・・・ちゃんこそ」

「私はちょっと亮に会いに・・・・・あ。竹巳君 裏門ってどの辺?」

「裏門?ここからは正反対の場所だよ」

当たってたんだ・・・・・

「そっか、ありがとう」

「ううん。ごめんね本当は案内してあげたいけど僕も友達捜さなきゃいけないから」

相変わらず竹巳君はいい人だなぁ

亮のわがままにも耐えてるみたいだし

「それじゃ」

「バイバイ」

そういって別れた

(ん?何か忘れているような・・・・・)





あ。




「竹巳君!!」

慌てて後ろを振り返る

竹巳君も驚いてこっちを見た

「ごめんね。すぐ済むから

 えっと私がお世話になったお礼と亮がいっつも迷惑かけてるお詫びも兼ねて

 これどうぞ」

バックから急いで取りだしたからちょっとラッピングかくしゃくしゃになってしまった

でもしょうがない

「はい」

「・・・・・・」

何の反応もしてくれない竹巳君(え、私何か変なこと言った!?)

よく見ると驚いてそのまま固まってた

「竹巳君?」

恐る恐る声を掛けるとようやく我に返ったみたいで

「あ、ありがとう」

お辞儀をしながら受け取ってくれた

「いえ。こちらこそ・・・・・」

なんだかつられて私もお辞儀をしてしまった

「そ、それじゃあ」

なんかどもってるよ 竹巳君・・・・・

「うん。またね」



たぶんまた会えるから



さっきはバイバイって言ったけど今度は「またね」って言ってみた

竹巳君も照れながらだけど「またね」って返してくれて



私は知らず知らずのうちに笑顔になった





「遅い」

「すみません・・・・・・」

結局あの後 急いで裏門に向かったんだけど

亮はかなり不機嫌そうな顔で立っていました

「おまえからのメールが来てたからこっちは急いで来たっていうのに・・・・・・

 藤代撒くのも苦労したんだぞ」

やっぱりあれは亮の仕業だったんだ

「ごめんなさい」

もう謝るしかない



「で。何か用があるんだろ?」

反省してるって分かってくれたのか遅れた理由は聞いてこなかった

相変わらずちょっと優しいね

声に出したらまた怒られそうだから心の中でそう呟く

バックの中から残り2つのチョコのうち一つだけを取り出す

「はい。バレンタインのチョコ」

差し出すと亮は一瞬驚いた顔をして

「サンキュ」

すぐにいつものデビスマに戻った




まだ




「それと」




もう一つ



もう一度バックの中に手を入れて

最後のチョコを取り出す




「これは去年の分」




去年八つ当たりして

やっぱり後悔したんだよ?

なんて声に出しては言えないけど



ポフッ


「ありがとな」


亮は頭の上に手を乗せて軽く撫でてくれた

小さい子みたいで恥ずかしかったけどその手をはらうことはしなかった




去年はごめんね



声に出して言えるほど素直な妹じゃないけど

ちゃんと思ってるから




  あ り が と う





Next

------------後書き------------------------------------------------------------------------------------------

おつかれさまぁぁぁ
やっとバレンタイン編終わりました(^^)
本当にやっとって感じですね
笠井君が出てくると長くなるのはなんでだろう(それは陸が笠井君大好きだから)
あ、8個誰か分かった方います?みかみんに2つでしたね☆
たぶんこれから2週間近く更新はされないはず
テスト勉強しなきゃホントにヤバイ!!
ってことで次はいつになるか分からないけど頑張るんで!!見捨てないで下さい!!
                                       2月15日 砂来陸