目を覚ましたらそこは病院でした。しかもロー達が勤めてる。
・・・色々思い出したら頭を抱えたくなって、でも包帯とかギブスとかぐるぐるに巻き付けられてて持ち上がらない!
「どっか痛むのか?」
「・・・大丈夫」
痛くないと言ったら嘘だけど・・・どちらかと言えばいたたまれない。
当たり前のようにローに診察されて、ペンギンとシャチに心配されて泣きたいのを必死に堪えた。
更に「お前に会いたいってヤツが来てる」そう言われ泣き腫らしたマキノさんにエースさん。
マキノさんはいわゆる第一発見者らしい。とにかく泣いて泣いて謝られてこっちが申し訳なくなった。元々無理言ってアパートに入居させて貰ったのに。
マキノさんの格安アパートに入れて貰えたのは元クラスメイト、ルフィのツテで、ルフィの兄であるエースさんとローは元クラスメイトだ。そして現在白ひげで働いてるとか言うから世間は狭い。
そして、血相抱えたマルコさんが病室を訪れたのはエースさん経由だろうか?
「本当にすまねぇ・・・!」
今にも土下座せんばかりな勢いである
「・・・えっと」
どうすれば良いの。当然のように病室にいるローに助けを求めるが失敗した。ローはそれこそ凶悪犯並の視線でマルコさんを睨んでいた
・・・そうだった。ローは何故かマルコさんをあんまり好きではない、らしい
「・・・どういうことだ」
「・・・あの男がを探していることを・・・知ってたんだよい」
「よし分かった。おれが介錯してやる」
「ちょっとロー黙ってて」
メスを構えるローを叩きたくなったけど残念なことに動けない。メスで介錯出来るか。っていうかするな。
「借金作って家にも戻ってなかった。に集りに行くのは時間の問題だったんだよい・・・」
・・・成る程。この間マルコさんが突然来たのはそれが原因だったのか
「・・・すみません、何だかマルコさんにまで迷惑かけて」
「お前が謝るのは可笑しいだろ」「が謝る必要は無いよい!」
2人の言葉に首を振る。眩暈がした。
「身内の問題です」
この言葉にローは、この上なく苦い顔をした。マルコさんは言葉を探してるように口をパクパク動かした
・・・あの時も助けて貰った
あの男の元から逃げてローが見つけてくれて、マルコさんが弁護士をつけてくれて、つまり私は充分な武器を持っていたのだ。
それなのに萎縮してしまった私にも非がある
ただただ申し訳なくて、ぼんやりと部屋を見渡す
真っ白。
「・・・」
「なぁに」
「・・・お前の話しが聞きたいと刑事が来てる」
「・・・うん」
仕事を抜け出してきたらしいマルコさんを見送って直ぐに刑事らしき人達が部屋に入ってくる
ローはまだしもペンギンとシャチまで威嚇するように付き添うもんだから・・・あぁ、もう何も言うまい
なるべく淡々とその時の様子を語った。叔父の現在の様子を聞かなかったことに気付いたのは刑事が帰った後である
無意識に除外してたのか口にするのも嫌だったのか。まぁ良いやどうでも
「・・・」
「ローも仕事戻りなよ」
目を覚ました時もローは傍にいてくれた。
マルコさんと話してる時も刑事が来たときも
「生きてることを後悔してるか」
「・・・心配しなくても自殺なんてしないよ。お父さんもお母さんも生きたかったんだから」
困ったように笑ってみせる。ローはそんな私を見て、まるで小さな子供の悪戯を叱るような、言い聞かせるような表情になった
「」
不意にローが動く。白衣がふわり、と動くのが分かった。近付くと思った。遠ざかる、とも思った。そうして伸ばされた腕を必死で縋り付いた。
「っ・・・ロー・・・」
少しでも力を緩めると離れてしまうとでも言うように。包帯まみれの腕が痛むが気にならなかった
「・・・怖かった」
「ああ」
肩に顔を埋めたまま喋るローの髯が擽ったい
それでも笑えることも離れたいとも思わなかった
「よく堪えたな」
その言葉を聞いた途端、ボロボロと涙が溢れてきた。ローの胸元がじわじわと濃い色に変わる。そうか、私の身体は泣きたかったのか、と場違いなことを考えてしまった。
「・・・」
ひとしきり泣いてようやく嗚咽も収まってきた。酷い顔をしてるだろう・・・と未だにローから離れられずにいたが耳元で、まるで恋人のように愛しげな声で囁かれ少しだけ顔を上げる。
きっと真っ赤なはず。色々と
「・・・何?」
チャリと音を立てて手に握りこまされた何か
「夢の中だろうが助けてやる」
耳元で囁かれ当たる吐息と髭が擽ったくて軽く身をよじる。緩く手を広げれば・・・そこには鍵とキーホルダーがあった。
「301号室でベポと待ってろ」
鍵はローの家の鍵でキーホルダーは白熊キャラクタのベポ
思わず笑ってしまった
しかしローは真剣だ。
「ベポならあんな男一撃だ。おれも仕事が終わったらすぐ行く」
「・・・夢の中に?」
「当然だ」
なんて心強いお守りだろう。毛布に押し込まれ枕元に鍵を置くと本当に眠くなってくるから不思議だ。
「・・・おやすみなさい」
「おやすみ。」
とろとろと蕩けそうな意識の中、何かが唇に触れた気がした。もちろん起きて確認なんてせず夢の中に堕ちていった
今宵も呼吸ができますように
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