「で、は元気だったのか?」
「ああ。随分大きくなってて驚いたよい」
「グラララ!そうか。あのハナタレの娘がなぁ」
「・・・ハナタレって取締役のことかよい?」
「他に誰がいる?あぁ、アイツはハナタレだったが嫁は良い女だったな」
「・・・」
コンコンーガチャッ
「オヤジ。の旦那んとこの・・・あ、悪い。話の途中だったみたいだな」
「構わねえよ。イゾウ」
「あの男見つかったのか!?」
「大声出さなくても聞こえてんだよマルコ。・・・アパートには相変わらず帰ってねえ。家賃も3ヶ月と言わず滞納してるみたいだしな。××にある簡易宿で見かけたって情報が入った」
「・・・!」
「落ち着けマルコ。今若い連中を向かわせた。お前が出るのはそれからで良いだろ」
「だけど万が一・・・!」
「ちったぁ部下を信頼しろ!」
「・・・よい」
「イゾウも急かして悪かったな。」
「いいや?オヤジにそう言って貰えるだけで充分だ。貴重なマルコも見られたしな」
イゾウは身体こそ白ひげを向いていたが、顔だけマルコに向けた。妖艶な唇は笑みを浮かべる
「いくら昔惚れた女の娘さんだからって取り乱すマルコは貴重だな」
やたらゆっくりとドアを閉めてイゾウが出て行き、その言葉を理解するのに数秒かかったマルコが真っ赤になって後を追いかけた
部屋には白ひげの笑い声が響いていた。
白ひげコーポレーションでの出来事である
甘い視線を隠して。溶けてしまうから
「やっぱりにはピンクでしょ!」
「何言ってんだよには白だ!」
「なによボニー。私のセンスにケチつける気?」
「お、落ち着いてナミさんもボニーさんも、ね?」
「そうだよ。私どっちでも良いよ」
「「良くない!」」
思わずビビと顔を見合わせた
「私の服でそこまで盛り上がらなくても・・・」
着れれば良いと思うんだけどと続けるつもりが2人に睨まれて口をつぐんだ。代わりに
「どうせ買えないよ?」
と呟いてみたがこれも見事に黙殺された
はため息をつく。可愛い洋服は極力見ないようにしていた。何せ欲しくなっても困る
が、本人がいくら思っていても周りは違うらしい。数少ない友人は時々を外に連れ出す
今回はバイトだ。
洋服の展示会を兼ねた販売で達はそのブランドの服を着て売り子をすれば良いらしい。
一日に何度も着替えないといけないとのことでだったら適当に誰か選んでくれ。というのがの心情だった
「はい!じゃあはこれ。ビビはこれね!」
「決まったの?」
「じゃんけんでね」
・・・さいですか
着替えを終えればボニーに髪と顔を弄られる。
「何でお前ピンクも似合うんだよ」
「ええー理不尽」
次は白を着るよ。と言えば当然だ、と言わんばかりに頷かれ思わず笑う
器用に纏められてゆく髪。
自分じゃ絶対できないな、とコテで巻かれた己の髪を指先で引っ張る
「こら!崩すんじゃねぇ」
「はぁい」
いつもはTシャツにジーパンという出で立ちの。
ようやくボニーにお許しを貰いブースに出た
キラキラと眩しい女の子達にはニッコリと営業スマイルを見せる
「わぁ!さん可愛い!」
「ビビのほうが可愛いよ?ナミも美人が2割増した」
「ふふっ。当然よ」
「はい、ご馳走ー。ボニーも色っぽぉい」
「じゃあ次はお揃いにしようぜ!」
了解、と手をふる
「わぁ可愛いー!」
「お姉さんが着てるのって色違いないんですかぁ?」
「これ予約お願いしまーす!」
日雇いのバイトでも仕事は仕事で目まぐるしい程だった
7回着替えさせられてニコニコ笑顔は崩さず。時々クレーマータイプや場違いの野郎も居たが大事にはならなかった
むしろ揉めたのはその後
「だーかーらぁにはピンクよ!」
「絶対白のほうが似合ってた!」
デジャヴュだ。
横でオロオロするビビも
せっかくだし1着くらい買おうという話になったのだ。は当然遠慮したがそこはナミの話術。オーナーと交渉して割引に割引をして貰った。恐るべし。
今は本人そっちのけでバトルを繰り広げている。
本当にどっちでも良いのだ。似合うと言われれば嬉しい。ただ財布の都合により2枚ともは買えないのが申し訳ない
「ビビはどっちが似合うと思う?」
「ええっ、わ、私?」
あぁ、ビビにまでとばっちり
「あ、あっ!さん携帯鳴ってない?」
「え?」
鞄の中から確かに微かな音がする。
慌てて引っ張れば「おい、それ最新型じゃねえか!」「トラ男が買い与えたらしいわよ」「あんの隈男を物で懐柔しやがって」おーい。聞こえてるよ
丸聞こえで申し訳ないが鳴っていたのは電話で、しかもローだった
『今何処だ』
「バイト中」
舌打ちされる。相変わらずの傍若無人ぶりである
『誰がいるんだ』
「えー?ナミでしょ、ボニーにビビ・・・」
ふと、思った
そうだ多数決ならここでローに一票いれて貰おう
「ローはピンクと白どっちが好き?」
『何の話だ』
「私にどっちが似合うと思う?」
『青か黒だな』
「えー・・・」
何で選択肢を更に増やすかなぁ・・・
青か黒だって。と2人に言うと「はぁ?」「おいちょっと電話代われ!」
ボニーが怒りだした。ローのせいで私が怒られるなんて納得がいかない
「なんか二人とも気に入らないみたいだよ」
『お前ら男心わかってないな。確かにピンクや白も良いが原色系のギャップがくるんだよ』
「・・・わかんない」
『はぁ。だからな例えばピンクのワンピースをめくったら黒のレース。脱がしがいがあるじゃねぇか』
「は?」
『お前色が白いしな。チラリズムでもありだな。原色の下着』
「・・・」
静かに電話を耳から離し、躊躇わず電源をOFFした
「どうしたの?」
「トラファルガーのやつ逃げたのか?」
黙ったままふるふる首だけ横に振るに揃ってはてなが浮かぶ。
(誰が下着の話なんかしてたのよ馬鹿ロー!!)
結局は一着も買わなかった
急に不機嫌になったを不審に思ったナミがローに電話をし直し内容を聞いて呆れた。
の御機嫌をとるためにローが件の洋服を買ってくるのはまた別の話である
『・・・下着の話じゃなかったのか』
『あんたバカでしょ!いくら幼なじみだからって男にそんなこと聞くか!!』
『・・・』
その日の夜、ローが色違いの服を持ってバツが悪そうな顔をして訪ねてくることを私は知らない
思えばこの時に前兆はあったのだ。
からっぽの郵便箱。
足跡が残る階段。
ね、気付かなかった私が悪いのだ
back
next