まごまごしてるうちに神田さんは自分の分を持ってさっさと歩きだす

私は慌ててそれを追いかける





世界の終焉にようこそ6
(サイキックガァル)




「・・・おいしい」

思わずため息が出るくらいお蕎麦は美味しかった

『おい、神田と一緒にいるの・・・』

『昨日化学班が騒いでた・・・』

・・・な、なんか見られてる?

つるつると蕎麦をすする合間に少しだけ視線をあげるとやたらと目が合った

やっぱり私何か変!?

お箸の使い方?!あれ、海外では食器持たない方が良いんだっけ!?

ぐるぐるしてきた・・・

「全部食べろよ」

びくっ、と背筋が伸びる

見ると神田さんはもう半分くらい食べてて私はまだ3分の2以上残っていた

「は、はひ・・・」

お腹は空いてないし胃は重たい

だけどせっかく作ってもらったし神田さんに睨まれるのも怖い

一生懸命食べることだけに集中した

「行くぞ」

やっとの思いで蕎麦を胃に収めると間を置かず神田さんは立ち上がった

も、戻しそう・・・!

置いていかれないように私も急いで立ち上がる

でも気がついた

神田さんはとっくに食べ終わってて、私が食べ終わるまで待っててくれたんだって

目付き悪いけど優しい人なんだ

「・・・あの、神田さん」

恐る恐る名前を呼ぶけど返事も振り返りもしない

・・・聞こえてない訳じゃないですよね

「ここは・・・どこの国なんですか?」

「イギリスだ」

返事が返ってきた!

「あの・・・質問していいですか?」

「話せることは多くない」

あ、

重たい、言葉だった

私は得体のしれない人間で

彼等にとっては異端児で

そうだよね…

「勘違いするな」


「お前を信じてないわけじゃない」

真っすぐな瞳は疑えない

やっぱり泣きそうになってしまう

「…はい」

「何が聞きたいんだ。」

いろんな気持ちが込み上げてきて何を聞くか忘れてしまった

な、何か無難な質問を…

「…あの眼鏡かけてた人の名前は」

「コムイだ」

「コムイさん…」

いつまでここにいるのかわからない私

名前くらい覚えないと

「ここにはたくさんの人がいるんですね」

「…ああ」

あ、歯切れが悪くなった

これ以上は聞いちゃいけない

「さっきの食堂にいた人達は私のことを知ってるんですか?」

「…ああ」

あれ、これもタブー?

難しいなぁ

「さっきの人達の中に日本人はいますか?」

「いない」

少しずつ知識が増えると安心している自分がいる

私はここにいるんだ


分かったことはここはイギリスで日本人は私と神田さんだけでご飯はお蕎麦が美味しくって・・・あれ、何だか可笑しくなってきた?