・・・空が明るい
眠った気は全然しないけど朝がきたようだ
世界の終焉にようこそ5
(サイキックガァル)
『おはよう。よく眠れたかな?』
あ、挨拶された
ええっと・・・
「ぐ、Goodmorning」
あ、驚いた顔してる
良かった。通じたんだ・・・
昨日は(もう日にちの感覚がないんだけど)言われた通り大人しく部屋にいた
そしたら朝(これまた日にちの感覚はない)になって神田さん、が迎えにきてくれて
また質問タイムです
「お前、言葉が通じるのか?」
「ち、ちょっとだけです。授業で習ったけどあんまり・・・」
英語の授業で習っただけでペラペラに喋れるようになるわけない!
『あ、そういえばまだ自己紹介してなかったよね。ちゃん?』
あ、れ?今って言った?なんで名前・・・
「昨日お前が落とした荷物から名前を割り出した。」
「かばん?」
そういえば一緒に跳んできたんだ
手渡されると無意識にため息をついた
今までとくに気にしたこともなかったのに慣れた手触りが嬉しかった
「ありがとうございます!
・・・あ、ThankYou very much」
『わぁ!お礼もちゃんと言えるんだね。偉いなぁ
授業で習うってことは日本と英語圏は親しいのかな?』
もちろんこんなに長い英語は私にはわからないので神田さんに訳してもらった
「英語は、義務教育です。旅行とか留学とか・・・外国にはずっと簡単に行けるようになりました」
もっとたくさんの知識があればこの人達の満足すること言えるのに
他にもいくつか質問を受けた
あんまり上手に答えることが出来なかったけど神田さん達は怒りもせず(と、言っても神田さんは笑う事もなかったけど・・・)
私にゆっくりと質問を繰り返す
眼鏡の男の人は何かメモをとりながらしばらく言葉に迷ったように眉を八の字にした
『・・・それじゃあ君の力について聞いて良いかい?』
きました。
眼鏡の人の言葉を神田さんが訳してくれる
そうして私は二人を交互に見ながら少しずつ言葉を探した
覚悟はしてたけどやっぱり口にするのは難しい
どうして歩けるの?と聞かれて答えられる人がいるだろうか
それくらい私には自然な力なのだ
『その力は君の時代じゃみんな持ってるのかな?』
「・・・私が知ってる限りではこんな力持ってる人いませんでした」
『家族にも?』
「はい。私だけです」
そうなのだ。両親もこんな力持ってない。私だけ
『うーん聞けば聞くほど不思議な力だね。』
嘘偽りなく話しても改めて自分の知識のなさを思い知る
好きじゃなかった
こんな力
友達にも秘密にしてずっと隠してきた
だから知りたいなんて思わなかったんだ
『じゃあその力はどれくらい使えるのかな?』
どれくらい?
『無限に使える力なのかな?』
「・・・無限じゃないと思います。あの・・・ちょっと疲れるんです。たくさん跳ぶと」
『何回くらい?』
は困ったように首を振った
「ごめんなさい。私この力のこと人に上手に話せるほど知らないんです」
限界なんてわかんない。3回跳べば膝が笑う
それくらいしかわかんない
距離だってそう。遠くでも近くでもあんまり変わらない。
今回みたいに国境を超えたって意識を失うまではいかなかった
どっちかというと心の準備が出来てない時に跳ぶ方がずっと疲れる
『ああっそんな顔しないで!大丈夫。きっと帰れるよ』
・・・何か言ってる
なんで私英語が上手じゃないんだろう
神田さんだって迷惑だろう
こんな言葉も通じない日本人だからという理由だけで面倒をみてくれてる
・・・もう、やだぁ
自分が嫌い
元々こんな力持ってた自分が嫌いだったけど
「泣くな」
ぐいっと顎を持ち上げられる
ピシャリと強い言葉
「誰もお前を責めてる訳じゃない。」
昨日とおんなじ温かい手
この人の、この手の温度が私を支えてくれる
私の手とは全然違う
真っ白な男の子の手とも違う神田さんの、手
「・・・はい」
返事をすると手はゆっくりと離れていった
『コムイ話を続けろ』
『あ、う、うん。もう少しだけ質問させてくれるかい?
えーっと生まれつきの痣とかずっと身につけてる物とか何かないかな?』
痣?
「特にそんなのは・・・」
ない、です
アクセサリーとかつけてる訳でもないし毎日同じものを身につけることもない
『うーん・・・イノセンスらしきものは持ってないのか。エクソシストの可能性は低いみたいだね』
『本人が知らないだけで背中とかに痣かあるんじゃないんすか?』
『じゃあリーバー君、君が彼女の服脱がすかい?』
『ぶっ・・・!な、何言ってんですか!?そういうのはリナリーに頼んで下さい!』
『リナリーは先週から任務に行ってるじゃないかー!』
『だからって俺にそんな変態みたいな真似できるわけないじゃないすか!!』
う、うん?
眼鏡の人ともう一人一緒にいた男の人が騒ぎだした
もちろん何を言ってるのかわからなくて神田さんを見たけど何も言ってくれなかった
ど、どうすれば良いんでしょう
『じゃあやっぱりリナリーが帰ってきてからにしようか』
『当然でしょう!』
『リーバー君たらそんなに顔赤くしなくても良いじゃないか』
『誰のせいですか!』
『おい。コイツはもう良いのか』
あ、指さされた
私のことを何か言ってるのかなぁ?
『あ、出来ればちょっと跳ぶ力を見せてもらいたいんだけど・・・』
『・・・少し休ませてからにしろ。ただでさえ青い顔してんだ』
不思議だなぁ
昨日から何も食べてないのにお腹は全然空いてない
あんまり眠ってもないのに眠くもない
私の体が私じゃないみたい
ぼんやりとそんなことを思う
「おい。」
「は、はい」
「食堂に案内する。ついてこい」
「え」
たった今お腹すいてないって思ったばっかりなんですけど・・・
が、しかしそれが顔に出てたのか神田さんにはひと睨みされて終わりました
さっさと背を向けて歩きだした神田さんを慌てて追いかける
その前に二人にお辞儀をするのを忘れない
眼鏡の人は困ったような笑顔で手を振ってくれた
コンパスの差だろうか
小走りでようやく神田さんに追いついたが並んで歩けるのはせいぜい3歩くらい
ほとんど小走りで2歩後ろをついていく形だった
こ、これは走ってお腹を空かせろ、という優しさなのか・・・!
とにかく必死について行くと開けた場所に出た
ひ、人がいっぱい・・・!たくさんの人がいっぱいいて目が回りそうだ
「こっちだ」
足が止まってしまった私を神田さんが腕を引っ張る
ひぃっ!
遠慮のない力で引っ張られて前につんのめる
転んだら恥ずかしいよね!と必死に足を動かす
カウンターの前に立たされ
「何か頼め」
「えっ」
、何かって・・・
え、の口の形のまま固まってしまった
何も考えてなかったんですけど・・・!
「チッ、早くしろ」
舌打ちされた!
怒ってる・・・!
そ、そういえばここって日本じゃなかった!
何頼めば良いの!?
何なら通じる!?
ぐるぐる頭の中を色んな言葉が巡るけど何もでてこなかった
『チッ、おい蕎麦2つだ』
う?
「行くぞ」
結局私が何かを言う前に神田さんがカウンターに注文をして・・・でてきたのは
見事なザル蕎麦のセットだった
・・・蕎麦って日本の文化じゃなかったっけ?
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