「んっ!」

思わず声が出てしまったのはいきなりの圧迫感に潰されるかと思ったからだ

むぐっと息まで出来なくなって次には背中をしたたかに打った

い、痛い・・・!

(成功した?

 でも一緒に跳んだあの人・・・途中で手離しちゃった気が・・・)


そうして気付いた


背中は打ったのに頭をぶつけなかったのは大きな手に庇われていたからで

圧迫感は思いっきり抱きしめられているからだと





世界の終焉にようこそ3
(サイキックガァル)




「っ・・・」

頭の上で息づかいが聞こえてようやく現状を把握した

跳ぶのは成功。だけど着地に失敗というところだ

抱きしめてる人に声をかけたいけどきつく押さえられてるために言葉にならない声しか上がらなかった

ち、窒息しそう・・・!


「・・・おい」

ゆっくりと圧迫感がなくなっていく。

ようやく胸いっぱいに息が吸え・・・息が止まるかと思った

「頭どけろ」

「は、はいっ!」

間近にありすぎた綺麗すぎる顔に悲鳴を上げそうになった

顔が絶対赤くなってる・・・!

高校生にもなって、と言われたらそれまでだけど私は男の子に対する免疫がゼロに等しい

クラスメイトと喋ることすら稀でましてやこうやって誰かに抱きしめられたことなんて無い

そろそろと頭をあげて体を起こす

頭の下敷きになっていた手がするりと引き抜かれた

・・・あ

(手・・・)

何で気づかなかったんだろう

背中をぶつけて頭をぶつけなかったのは彼の手が庇ってくれたからで

背中をぶつけただけでもそれなりに痛かったのに彼の手が痛くない筈はなくて

手の甲が赤くなっていたのは・・・

「すみません・・・」

ぽつり、と口から零れた言葉に一度眉を顰めたが視線で気付いたんだろう

自分の手を隠すようにさっと距離を取られてしまった

・・・何も言わないんだ・・・

もちろんここで気にするな、と言われても赤くなった手を見てしまった以上気にしてしまうから意味がないんだけど

とりあえず起こした身体を見て、乱れたスカートのプリーツを簡単に整える

そうしてようやく周りを見る余裕ができた

・・・ここどこだろう?

本当に跳べたのかすら不安になる

(いやいや絶対跳べた!ちゃんと跳んだ!だって身体だるいし・・・)

そうだこれで今日3度目・・・

身体もだるくなるだろう

「・・・コムイの部屋か」

「!さっきの場所からどれくらいですか!?私見える範囲で跳ぼうって、」

ギロッという効果音が似合いそうなくらい厳しい目つきで睨まれて言葉はそれ以上でて来なかった

怖いよう・・・

思わず後退すると彼はさっさと立ち上がり天井に向かって話しかけた

『おい、コムイに繋げ』

何に話してるの・・・?

彼の視線を追ってみるとそこにいたのは・・・コウモリ?

ははは。外国じゃあコウモリとお話する習慣があるらしい。知らなかった・・・

ムーの大群のような足音が聞こえてきたかと思うとバーン!と勢い良くドアが開いた

『本当にいた』

『神田本当に跳んだのか』

『見れば分かるだろ』

『見てても分かんなかったんだよー!』

『そうだぞ!お前いきなり消えたんだからな』

・・・相変わらず言葉は分からない

どうだろ・・・信じてもらえたかなぁ?

立ち上がりたいけど身体がだるくて動けない

『大丈夫ですか?』

「あ・・・」

いつまでも座っていたからだろう

みんなと一緒に走ってきた白い髪の人は手を貸してくれた

「・・・ありがとう、ございます」

手袋越しの手でも優しさが感じられる

3回目のテレポーションで足元はまだおぼつかないがぐっと膝に力を入れる

倒れるのだけは避けたかった

『すごいですね。人が消えるなんて初めてみましたよ。』

・・・?

何を言われたのかは分からないので曖昧に微笑んでおく

「おい」

「は、はい」

日本語ということは私に話しかけてるんだ

「お前のその力は生まれつきなのか?」

「・・・はい」

たぶん、という言葉は心の中にとどめておく

気づいたらこの力は私の中にあった

一番最初に使ったのはいつだろうか?小学生?ううん、もっと前かもしれない

覚えてないくらい小さなころから持ってた力だから

・・・今、何時だろう

そっと部屋を見渡すけど時計らしきものは見当たらない

そういえば鞄はどうしたっけ?

一緒に跳んで来たかな?

跳ぶ時落としてきたかもしれない

明日までの宿題があるけどちゃんと終わるかなぁ。

・・・私、どうなっちゃうんだろう

ふぅ、と小さく息を吐いて壁によっかかる

瞳を閉じると真っ暗闇が世界に広がる

もしも私は今眠っていて、これが夢なら

『顔色悪いですよ?大丈夫ですか?』

はっと顔を上げると顔を覗きこまれていた

わ、わっ白い髪の人

また何か話しかけてる

心配そうな顔をしてる。あれ、何か心配されてる?

「おい。」

「は、はいっ」

「いくつかお前に聞きたいことがある。

 その能力についてでもだ。お前がこちらに害のない人間だとわかれば帰してやる」


「はい」

あぁ、家に帰れるんだ

その言葉にどれだけ安心したか、