『あれ、何やってるんですか神田』

『・・・うるせぇ。黙ってろモヤシ』

『アレンです!

 僕は医務室に用があるんですよ。どいて下さい』

『ふざけるな・・・』

『え。な、何ですか。何で医務室に用があったらいけないんですか』

『うるせぇ!』

・・・事の発端は朝まで戻る





世界の終焉にようこそ16
(サイキックガァル)




(・・・まだ暗いなぁ)

窓から見えるのは朝日じゃなくて月だった

パジャマの代わりにしている一緒に跳んできたジャージをもそもそと脱ぎ捨てコムイさんに頂いたシャツに着替える

着替えてもやっぱりまだ空は暗い

ベッドに両足を投げ出して壁に寄り掛かる

うつらうつらとまどろんでいると、ようやく太陽が昇ってきた

顔を洗って髪を結んでコムイさんの部屋へ向かった

『おはよう!』

わ、わわわ

昨日会ったコムイさんの妹のリナリーさん

キラキラとした綺麗な笑顔を向けられて顔に熱が集まるのが分かる

卵肌って、この人みたいな事言うんだ

私なんて最近目の下にクマが出来てお友達になりつつある

『おは、ようご、ございます』

『兄さん達にこんな飾り気のない服ばかり着せてるの?』

(う、わかんない・・・)

『だ、だってちゃんがどんな服好きかわからないし神田君も聞いてくれなかったんだよ』

『もうっ!』

な、なんだろう

リナリーさんがコムイさんを怒り始めた

『女の子なんだからもっと可愛い服を着せるべきだわ!はエクソシストではないなんだから』

・・・なんだろう?

会話のところどころで私の名前が出てきてるような・・・

はっ、まさか私の仕事の役立たずぶりを怒ってるんじゃあ・・・

『ご、ごめんなさい!』

『え?』『え?』

・・・あ、れ?

思わず謝ると二人の会話は止まってしまった

わ、私を怒って・・・たんだよ、ね?

『や、やだ。貴方を怒った訳じゃないのよ?私は兄さんを・・・』

へにょり、と眉が下がる

ごめんなさい・・・わかりません

『・・・伝わってない、わね

 神田はまだ鍛練場かしら?』

神田さんを探してる?

リナリーさんの言葉をじっと聞いていると・・・あ、やっぱり神田さんの名前が出てくる

綺麗なリナリーさんから視線を外し急いで周りを見回す

神田さん神田さん・・・

あ。

『神田さん、歩く・・・歩いてます』

『え?』

う、続きが出てこない・・・

うんうん悩んで下を指差しそれからドアを指差す

今、上がってきてます、って伝わったかなぁ?

ガチャリ、とドアノブが回る音がした

『あ、神田!』

開いたドアから入ってきたのは神田さんだった

ぱっと笑顔になったリナリーさんを見てホッとする

良かった、やっぱりリナリーさんは神田さんを探してたんだ

『・・・何か用か』

にどんな服が好きか聞いてみてよ。せっかく可愛い顔してるのにあんな飾り気のないシャツとズボンばっかりって言うじゃない』

『・・・何で俺が』

『貴方以外に誰も言葉がわからないじゃない』

『別に良いだろ、着るものくらい』

『無骨な男と同じにしないで!は女の子なのよ?』

・・・?

あ、あれ?

だんだんリナリーさんが怒った顔になり、苦笑いでコムイさんは見守ってる

神田さんは難しい、顔

そんなに

『リナリー、洋服はまた今度にして、今日は彼女がイノセンスを持っていないか調べたいんだけど』

『・・・そうね。そっちが優先ね。でも後で神田には絶対聞いてもらいますからね!』

・・・リナリーさんは神田さんに何か言ったみたいだけど神田さんは返事をしなかった

・・・話終わったのかな?

『さ、行きましょう?』

今度は笑顔で手を差し出された

え、

ふわり、と卵肌の手が私の手に触れる

え?

何がどうなったのかわからないが私の手は今リナリーさんに引っ張られている

どこに行くんですか?

思わず助けを求めるように神田さんを見る

「ついて行け」

ずばり、一言だった

私にはわからない。でもとても綺麗な声を奏でながらリナリーさんはずんずん進んでいく

途中会う人みんながリナリーさんに声をかける

リナリーさん人気者なんだぁ

・・・スタイルも、良いし・・・

スカートから伸びたスラリと長い足を見てため息をつきたくなった

は明るい色が似合いそうね』

『一緒に買い物とか行けたら素敵なのに』

『あ、今から身体検査ってなってるけどその後は一緒にご飯食べましょう?』

ぜ、全然わかんないです

リナリーさん・・・

『もう、一度お願いします』

『一緒、にご飯、を食べましょう?』

ランチ・・?

リナリーさんは私を指差しランチ、と言って首を傾げた

あ、ご飯を食べる?

今からご飯食べる、って言いたいのか!

優しいリナリーさんは私を誘ってくれてるんだ!

「いえす!」

大急ぎで返事をするとリナリーさんは嬉しそうに笑ってくれた

良かった、

だけどあれ?とも思う

今リナリーさんの足が向かってるのは私がいつも神田さんに連れて行って貰う食堂とは違う方向だ

私はこの建物をあんまり知らないからもしかして他にも食堂があるのかなぁ?

軽やかなリナリーさんの斜め後ろを不思議そうな顔で歩く少女がそこにはあった