『神田!』

バン!と音を立ててドアを開いたのは意外にもリナリーだった

珍しいな、リナリーがこんなに慌ててるのは。とぼんやりと思う

『・・・何だ』

名指しで呼ばれた神田ユウは大変不機嫌そうに返事をした

一体何があったんだ?

コーヒーを飲みながらのんびりと見守る科学班

に服を脱いでって言ってちょうだい!』

一斉に噴き出した






世界の終焉にようこそ17
(サイキックガァル)





・・・リナリーさんどこに行ったんだろう

ベッドに腰掛けたままぼんやりとドアを見つめる

食事をする部屋には見えない

リナリーさんに連れて来られたのは真っ白い部屋だった

目がチカチカする

ぐるりと部屋を見渡すとベッドにガラスのキャビネット

なんだろう・・・どこかで見たような・・・

『さ、脱いで?』

ドアを閉めたリナリーさんはにこやかな笑顔で何か言った

う?

『洋服を、脱いで?』

??

わ、わかんない・・・

短い単語で切って離して言ってくれるけど

・・・すみません、その単語が聞いたことないんです

『・・・脱いで?えーっと・・・服・・・他の単語は・・・服を外して?

 あ、何も変なことするつもりないのよ?ちょっとの裸を見せて・・・いえ、だから・・・』

最初は笑顔だったリナリーさんがどんどん困った顔になってきた

ご、ごめんなさい

私がもっと英語が分かればリナリーさんがこんなに困った顔をすることもないハズだ

ひたすらに申し訳なく、それでもリナリーさんの言葉を聞く

リナリーさんも必死で伝えようとしてくれた


まず、上着を持ち上げるような仕草をした


・・・?暑いのかな

『窓、開けますカ?』

『違うわ。こう、服を脱ぐ・・・』

次の瞬間、リナリーさんがありえない行動をとった

手を伸ばしてきたかと思うと胸元へ

プチン

ボタンを外された

速攻で後退りボタンを留め直す

え、と

『わ、私暑くない、です』

首を振ってもごもごとノーサンキューと伝える

どうしたんだろうリナリーさん

あ、暑いんですか?

リナリーさんはどんどん困った顔になっていく

私もどうしたらいいのか分からなくて困った顔になる

『・・・やっぱり神田が必要ね』

どうしようどうしよう

『ちょっと待ってて。神田を連れてくるから、ね?』

待ってって言った?

もう一度リナリーさんは繰り返す。やっぱり待っててと

こっくり頷く

『すぐ戻るから!』

『は、い』

ぽつんと部屋に残されてもう一度部屋を見渡す

・・・あ、思い出した

この部屋保健室に似てるんだ

窓から入る柔らかい光がキラキラしていて綺麗だ

保健室を、思い出せないなんて

ここに来て一日、一日過ぎるたびに元いた世界が遠くなる

そしてこの世界のことがひとつずつ増えていく

図書室の本 期限過ぎちゃったなぁ

『だから私が言っても伝わらなかったのよ!』

リナリーさんの声がした

?ごめんなさい。待たせちゃって』

ドアが開き、にこやかなリナリーさんが入ってくる

『ほら、神田も早く!』

え?

不機嫌そうな顔でリナリーさんに引っ張られて入ってきたのは神田さんだった

あ、あ、もしかしなくても・・・

「か、神田さん ごめんなさい。リナリーさんが何か伝えようとしてくれるんですけど私分からなくて」

「・・・ああ」

・・・神田さん迷惑、だよね

申し訳なさがいっぱいになる

『さ、神田はこっち。はこっちに座って?』

?なんでツイタテ

『準備完了!』

にっこりとリナリーさんは隣に座った

『・・・』

「・・・」

「・・・?」

何もなかった



『ちょっと何してるのよ神田!』

『・・・』

『私は早くとご飯が食べたいの!!』

・・・何を話してるのかなぁ

「・・・おい」

「は、はい!」

「・・・」

「・・・」

何なんだろう・・・

「あの「脱げ」

・・・

「・・・はい?」

ツイタテの向こうで神田さんは何と言っただろうか

聞き違い・・・だよ、ね

「あの・・・」「服を脱げ」

聞き違いじゃなかった

脱ぐって・・・え、脱ぐってふく・・・

『・・・神田言ったの?に』

『言った』

『・・・固まってるみたいだけど』

『知るか』

?』

リナリーさんが名前を呼んでる

え、と神田さんが、あの・・・何かびっくりするようなことを・・・

「・・・脱ぐ、んですか?」

「ああ」

「その・・・洋服を?」

「ああ」

泣きたくなってきた

よく分からなけど神田さんは私に服を脱いでもらいたいらしい

や、正確にはリナリーさんが脱いでほしいんだ、よ、ね・・・?

ぐっ、と息を止めて一番上のボタンに手をかけた

だからツイタテ・・・

プチン、という音が響いて聞こえるのは私の被害妄想だろうか

涙目になりながらシャツを落とした

これで良いですか?と聞こうと思ったが寸でやめた

神田さんにこの格好を確認してもらうなんて本当に泣くしかない

『リツって色白い上に細いわね。陶器みたいに綺麗ね』

「ゃんっ!」

とても変な声をあげてしまった

『あ、ごめんなさい急に触ったら驚くわよね。変なことはしないから安心して?』

え、と

『羨ましいわ。それでいて小柄だし。本当にお人形みたいね』

わ、わかんないです

『ごめんなさいね。ちょっと手をどけて…そう』

『手?』

『そう。はい万歳』

「ふぁ、」

お腹撫でられた・・・!

『・・・おい。俺はもう行くぞ』

『ええ。ありがとう神田』



「は、はい」

「しばらくそのままおとなしくしてろ。」

「は、はい・・・」

靴音と共に神田さんの影が遠ざかる

・・・その神田がの声を聞いていたたまれなくなり顔を真っ赤にしていたことは言うよしもない