思えば私は小さな頃から泣き虫だった
同じクラスの男の子によくちょっかいを出されて逃げ回ったり、泣いた記憶がある
そしてその度に両親に怒られた
だって力を使ったから
世界の終焉にようこそ12
(サイキックガァル)
ここに来て今日で一週間
相変わらずたどたどしい英語とジェスチャーでコミュニケーションをとる日々が続いている
夜が長い日が続いてる
『リナリーとラビが今日帰ってくるって連絡あったんだ。ちゃんと仲良くなってくれると良いなー』
『二人とも今回の任務長かったですね』
?
視線を感じて書類を揃える手を止めて顔をあげる
アレンさんとコムイさんがこっちを見ていた
うん?
曖昧に笑ってみる
ずるいけど言葉がわからない私の唯一のコミュニケーションだった
神田さんとはご飯のときしか会わないから私は自分の拙いリーディングでなんとかするしかない
『リーバーさんの所、行ってきます』
・・・で、大抵は逃げちゃうんだけど、
新しいプリントを貰いに行く
言葉も文字も通じない私が出来ることはひたすらこの作業に没頭することだった
『僕も手伝いましょうか?』
アレンさんが声をかけてくる
慌てて首をふる
『大丈夫、です』
ペコッとお辞儀をして廊下に出る
力を使わないのは必要なときにとっておくため。
重いプリントを運ぶとき、誰かを連れて移動するとき、何か役に立つならそのときに使いたい
・・・神田さん外、かな
甘えてるなぁって思う。ふとした時、神田さんを探す癖がついてしまった
ここは本当に不思議な所だ
色んな人がいる
まず、リーバーさんみたいに白衣を着た人達がいる
それから食堂でよくすれ違う真っ白い服の人達
神田さんやアレンさんは黒いコートを着てる
第一印象からあんまり変わらないなぁ。
ここは何かの研究所みたいだ
『お。』
『こんにちは。お仕事、下サイ』
リーバーさんはいつも疲れた顔をしている
私はプリントの整理しかしてないけど他にも沢山の仕事があるんだと思う
『あんまり頑張りすぎんなよ?』
?ふ、ふぁ・・・あ、がんばれ?
『は、い。ありがとうございます』
『(伝わったか?)じゃあこれとこれ、それからこれも運んで貰っていいか?』
『ハイ』
プリントの山
既に人の手に持てるものじゃない
しかもそれを見てた周りの人達がさらに積み上げる
『あっこれも!』
『これも頼む』
『は、い』
プリントと私の背丈がおんなじくらいになってようやく積み上げるのが終わった
『良いですカ?』
『良いぞー』
両手をプリントの山に合わせる
よし。
いち、に、さん!
パチン、と風船が割れるような音が頭に響く
一瞬の浮遊感
『ちゃんお疲れ様ー』
『お疲れ様、です』
成功した。ここはコムイさんの部屋
プリントも崩れないでちゃんと跳べた
そんなに疲れてもない
『ちゃん今日は他の仕事を頼んで良いかな?』
『?』
『会ってほしい子達がいるんだ』
『??』
『・・・あーやっぱり神田君がいないと無理か。』
わ、わかんない・・・
どうしよう神田さん呼んでもらわないと意志疎通無理です
『神田君を呼んでくるよ。それまで待っててくれるかい?』
待つ?
あ。待ってて?
『わかり、ました』
頷いて座ってみせればコムイさんはにっこり笑って部屋を出て行った
・・・神田さんは外だから時間かかるだろうな
ぽつん、と部屋に取り残されると少しだけ不安になる
そういえばアレンさんはどこに行ったんだろう?
・・・あ、上の階
上がったことはないけどアレンさんは上の階にいる
次の瞬間、目の前の壁が吹き飛んだ
・・・え?
『あちゃー、また失敗しちゃったか。まぁコムイの部屋だし・・・』
な、なに?
私の服には飛んできた破片がくっついてる
だけどそれすら気にならないくらい私は驚いていた
飛び込んできたのは赤い色
私が運んできたプリントは無残にも瓦礫の下敷きになってしまってる
『アンタが噂の迷子!?うわーっちっちぇーさぁ!!』
は、い?
赤い、髪がチカチカする
『ね!俺も一緒に跳べる!?俺、超能力って見たことないんさ!』
な、何?
言葉わかんない・・・!だ、誰?
何一つ理解出来てないのに矢継ぎ早に言葉を紡がれパニックになった
『手を握れば良い?あ、アンタのことは科学班の連中から聞いてたんさー』
腕が伸ばされる
あ、と思う間もなく私の手が取られた
これを恐怖と言わず何と言おうか
『これで良い?』
恐怖は最高潮に達した
「っやぁぁぁぁぁぁ!」
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