「きゃっ!」
ぼて、という音がして足じゃないところから落ちた
『な、何だ!?』
ひんやりした地面。聞きなれない言葉
「・・・ここは何処ですか?」
周りは見たことのない人達でいっぱいだった
世界の終焉にようこそ1
(サイキックガァル)
私、は奇妙な力を持っていた
それは生まれつき持ってたから
最初は誰にでもあるものだと思った
『何処から入ってきた!?』
・・・何言ってるかわかんない・・・
ここはどこだろうか。
何か建物の中ということ以外はわからない
何かの施設だろうか?
みんな同じ白いコート、いや白衣を着ている
人の姿をしている
さっきまで、私は学校にいたのだ
覚えてる間違いないんだ
ギュッと瞳を閉じるとその情景がきちんと思い出せる
ここに来る直前、私は他の人にはない力を使った
使いたくて使ったんじゃない
『アクマだ!!』
その声は言葉が分からなくても恐怖に満ちていた
あいつ人間じゃない!そう昔言われた時と全く同じ響きを含んでいた
ゾクリ、と背中を冷たいものが伝った
『エクソシストを呼べ!』
『アレンは!?』
『神田がいたはずだ!』
言葉がまるで矢のように痛い、恐怖と憎悪に満ちた声
ここにいちゃいけない
震える情けない頭で考えたのはそれだけだった
ガッ、ローファーが地面を蹴る
白い人達の一番少ないところを突き飛ばすように走った
『逃げたぞ!!』
『エクソシストはまだか!?』
ドクドクと身体中を血が巡る
息は苦しいし身体は熱くてでも冷たい
こんらんしている
此処は何処?
言葉が違った
日本語じゃなかった。英語だったと思う
『待て!』
はかろうじて聞き取れた
(私のバカ)
いくら非常時とはいえ国境を超えるなんて・・・
吐く息は熱い
身体も熱を持っていて、それなのに走っている足先は何故か冷たかった
ざっと黒い影が飛び出してきた
『 』
何か言ってる
言葉よりも何かを構えてるのに目が奪われた
・・・あれは刀?
すらりと伸びた白銀の刃
それはまっすぐ私向かっていた
ひゅ、っと矛先が目の前につきつけられた
避けきれない!
パチン
力を使った
ほんの少し、人を跳びこえただけ
ほんの何メートル
『 』
力は無限大じゃない。
使えばそれなりに疲れるのだ
でも休んでもいられなかった
後ろからまた何か言ってるのが聞こえたから
まろびでるようにまた走り出した
(せ、せめて姿が見えないところまで跳ぶべきだったかも・・・)
こんなどこか分からないところでそんな事できるか分かんないけど
空気が冷たくて肺が痛い
目は乾いてきて涙が出そうだ
一体どうして。
『わっ!』
こんなところに脇道があったなんて・・・!
前しか見てなかったから横から人から出てくるなんて予想外だった(そもそもここ自体が未知の場所なので全て予想外なのだが)
『・・・君は?』
思いっきりぶつかったにも関わらずふわりと抱きとめられた
『えーっと見ない顔ですがファインダーの方ですか?』
また何か喋られた
全く分からないのに!
ぐるぐる頭が回る
『アクマが出たと聞いて来たんですが・・・君は知りませんか?』
分からないんだってば!
顔を見ずに腕を振り払う
『わ、すみません、僕が失礼でしたよね。女性の手をいつまでも握ってるなんて・・・』
え、なんとなく、ようやく、違和感を感じた
彼の声音には殺気も何も感じられない
いつまでも平坦で穏やかだった
ゆっくり顔を上げる
白い髪に顔に大きな傷
思わず息を飲んでしまったが
かちり、と交じ合った瞳は何処までも優しい色をしていた
『いたぞ!!』
戦慄が走る
振り返るとそこにはさっきの刀を持った人と白い服をきた人達が立っていた
『えっ、みなさんどうしたんですか?』
ドクドク血が回る
『モヤシどけっ!』
逃げ出したかったのに一度止まってしまった足は酷く疲れていて動いてくれなかった
『アクマだ!早く破壊しろアレン!!』
『え、アクマ?』
『てめぇがやらねえなら俺がやる!どけ!!』
『ち、ちょっと待って下さい。誰がアクマなんですか?』
怖い怖い怖い!
もう嫌だ 私が何をしたって言うの!?
不法侵入の扱いにしてはあまりにも酷かった
『彼女はアクマじゃありません!』
彼の、この一言ほどこの場で説得力があるものはなかった
(・・・?)
言葉が通じないせいか空気の流れは敏感に感じられる
怒りが収まった・・・?
恐る恐る顔を上げると優しい色の瞳と目が合った
『・・・ファインダーでもなかったんですね』
やっぱり何を言われたのかわからなかった
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