『仲直りの花冠』

遠い幼い記憶

自分がまだ並盛にいた時に教わったもの

そして作ったいびつで不格好な花冠。

「一番綺麗な花に仲直り出来ますように、って願いを込めてあげるんだよ」

得意げに母親に作ってみせたあの、花冠。








い*ち*と*せ-水泉動-







驚きのあまり目を見開いているツナを見ての涙は更に溢れた

こんなハズじゃなかった

もっと上手に伝えるつもりだった

そのためにみんなに手伝って貰ったのに

何もかもが台なしだ

「わ、私ツナくんのお仕事知ってます」

涙と同じくらい言葉もとまらなかった

動揺しているのがわかるのに止まらない

「すごく大変で危険な事もあって、すごくかっこよくて、だけど時々残酷なお仕事で・・・だから私は一緒にいられなかったんだって・・・」

どうか、伝わって

「ツナくんは私が怪我するの嫌ですか?」

中途半端に伸ばされた手はに触れる前にきつく握りしめられた

「嫌に決まってる。それも俺のせいなんて・・・」

ようやく心のカケラが見えた。それが嬉しくてまた涙が溢れる。ほろほろと

「私もツナくんが怪我するの嫌です。きっとツナくんが私に怪我して欲しくないって思うのと同じくらい」

涙の向こうは少しだけ世界が綺麗に見える。

この思いを全て伝えることが出来たら。

もっともっと綺麗な世界になる

「だけどっ」

「それでも」

届きますように。

「ツナくんにお仕事辞めて下さいって言うのは違うなぁって思うんです」

はそっと手を伸ばす

遠い昔、きっと当たり前にあった体温に

当たり前に傍にいてくれたこの人に

「ツナくん」

「・・・はい」

「私、とってもわがままなんです」

左手を大きく広げて翳す

ひとつ、指を折る

「お仕事忙しいって分かってるんですけど・・・時々は一緒にご飯食べたいです」

ふたつ、指を折る

「お外にも出たいです。・・・だけどツナくんがどうしてもダメって言うなら我慢します。」

みっつ、指を折る

「たくさん、お話がしたいです。・・・パパなのにツナくんのこと知らないことが多いんです。ツナくんにも私のことたくさん知って欲しいです」

ようやく言う事が出来たお願い事。

ぴったりとの手はツナの頬に沿えられている

そこから緊張しているのが伝わってくる

がずっと緊張していたようにこの人も緊張しているのだ

親子なのに一体何を遠慮しているんだろう

ツナがようやく口を開いた

は本当に俺が父親で良いの?俺、すごく汚れてるよ。他人の・・・命を奪ったことだってある。が大事だけどボンゴレも大事なんだ。非道な事もするよ」

まだそんなこと言ってる。心配性で臆病で仕事の鬼で・・・それがツナなのだ。

は笑いそうになった

えいっ、初めて両手を伸ばしてツナの首に回した

華奢ななんてすっぽりおさまってしまう広い肩

自分と同じ稲穂色の髪

首筋に顔をくっつける

自分は今どんな顔をしているだろう?

きっと世界で一番幸せそうな笑顔に違いない!

「ツナくんじゃなきゃ絶対に嫌なんです!」

恐る恐るの背中にも手が回ってくる

まるで壊れ物のように

「・・・ありがとう。それから本当にごめん、ね」

小さく囁かれた言葉をは一生忘れることは無いだろう

「ツナくんは、私のこと好きですか?」

「大好きだよ・・・!」

「私もです!」

擦り寄って一番大好きな人に余すことなく伝える

「ずっとずっと大好きでした。これからもずっとずっと大好きです!」

不器用な親子はようやくスタートラインに立った

***

「全く、二人とも僕に感謝して欲しいですね。特に沢田綱吉、君は土下座くらいしなさい」

「娘の前で何させようとしてるんだよ骸」

「骸さんありがとうございました」

は素直ですね。誰かさんと違って」

「お前これ以上父親の印象悪くするの止めてくれる!?」

「ツナくんは一番格好良いです、よ?」

「・・・!」

あれから3人車でウ゛ァリアーを後にした

「長々とお邪魔しました」

さっさと車に乗り込んだ二人に代わってはザンザスとフランに頭を下げた

さんまた遊びましょうねー」

ヒラヒラ無表情のまま手を振るフランにはこっくり頷く

「・・・沢田綱吉に嫌気がさしたらいつでも来い。テメェ1人ぐらい置いてやる」

こちらには苦笑

「スクアーロさんとルッスーリアさんにもありがとうございましたって伝えて下さい」

どうして返事をしてくれなかったか気になるがクラクションを鳴らされ、急いで車に乗り込んだ

***

・・・初めて見た時は大きさにただただ圧倒された

自分がとても場違いに見えた

だけど今日は違う

「っリボーン君!」

扉に寄り掛かるようにして立っていた見慣れたシルエットには思わず叫んだ

こんな所で何をしているんですか?と言うより先に抱き上げられた。というより抱きしめられた

「リボーン君・・・?」

「・・・心配させやがって」

「・・・ごめんなさい」

大丈夫、大丈夫と言っておきながら勝手に部屋を抜け出したのだ

「よりによってウ゛ァリアーなんかに」

「・・・みんな良い人でしたよ?」

「俺よりか?」

ガブ。もしも擬音をつけるならこれが一番相応しい

キスはいっぱい。だけどまさか噛み付かれるとは思わなかった

「うわぁぁぁぁあっ!何やってんだよリボーン!」

「ツ、ツナく」

力いっぱい唇を擦られヒリヒリする。要するに痛い

「心配させた罰だ。

「・・・ふ、ぁい」

はい、と言いたかったのにゴシゴシと口を塞がれる。ツナ君は心配性です・・・

っ!」「お嬢様!」「っ・・・!」

ドアが壊れるんじゃないかという勢いで開き、3人が飛び出してきた

上から山本さん、獄寺さん、クロームさん

びっくりして思わず握りしめたリボーン君の袖を外す

ぽん、と頭を撫でられた

「あいつらも心配してたんだぞ」

そう言われてごめんなさいという気持ちと嬉しいという気持ちが浮かんでくる

「リボーン君下ろして下さい」

気持ちが急かして飛び降りて駆け出す

「お帰りっ!」

「お帰りなさいませ!」

「・・・お帰りなさい」

嬉しい嬉しい言葉が返ってくる

は花が咲くように笑った



そして振り返ると大好きな人が手を伸ばしてくれる

「お帰り」

「・・・ただいまですっ!」


(ゆっくりゆっくり親子になりましょう)