サイキックガァル-世界再生の日に会いましょう-

ドリーム小説
チラリと向かいに座る美人さんを盗み見てはほぅ、と溜息をついた。

美人さんとティータイム。なかなかに素敵じゃないか

こっちの世界に来てお茶は一人か唯一の知人・・・・・・というか家主・・・・・・変人・・・・・・いや仮にも養って貰ってるんだから失礼か。とにかくこんな綺麗なお姉さんとお茶をするなんて初めてだった

嬉しくて溜息も出ちゃうというものだ




世界再生の日に会いましょう




「アタシはマチ」

「私って言います」

事の発端はいつものようにヒソカさんが長期留守をしていることにある

そろそろ食料が尽きるなぁ、久しぶりにお魚食べたいなぁ。よし、買いに行くか。愛用のリュックを背負い出かけたのだ。

今日の今日とて値切り、戦利品をリュックに詰めてホクホクと帰る途中、ぶつかった。

ベタなことにぶつかったのは柄の悪いお兄さんで「ゴルァ!何してくれてんじゃワレェ!親を呼べぇ!謝罪しやがれぇ!」的なことを言い出した。巻き舌過ぎて所々わからなかったけど要約するとこんな感じだろう。

よそ見をしていた私が悪いのだ

しかしこんな幼児がぶつかったくらい笑ってやり過ごせる器量を持てと言いたい。言えませんが

悲しいとこに通り過ぎる大人達は遠巻きに見ているだけだった

子供は涙腺が緩むらしく私若干涙目

この世界に私の親はおりませんがどうすれば宜しいのでしょうか。やっぱり言えないけど

「子供相手に凄むなんて馬鹿じゃないの」

凛とした声だった

それから一瞬だった

手が出たのか足が出たのかそれすらわからないうちにの目の前は柄の悪いお兄さんから美人なお姉さんに変身したのだ

「大丈夫?」

ポロリ、一筋涙が零れてしまった

美人なお姉さんにつっかえつっかえお礼を伝えてせめて、とお茶を奢るつもりで喫茶店に誘った

以上、回想終了

「ぼろ泣きしながら一緒にお茶して下さいなんて誘われたの初めてだよ」

「・・・・・・わ、私も初めて誘いました」

全く恥ずかしい限りだ。一度泣きだしたらなかなか止まらなかった私はぐしゃぐしゃな顔だったに違いない

「それで、は家出してきたの?」

思わず紅茶で噎せた

慌てて口周りをナプキンで拭う。ついでに出ない声の代わり首を振る。・・・・・・そういう、意味で。

「違うの?」

「違い、ます!」

「親に嫌気がさしたとかじゃないの?」

「親いないです!」

・・・・・・あ。失言だった

元の世界でもよく言ってたけど成人の台詞と幼児では随分言葉の重みが違う

案の定マチさんは目を丸くした

「い、いやでも大丈夫ですよ!私のこと面倒みてくれる人がいて、良い人・・・・・・ではないか・・・・・・悪い・・・・・・か、変わった人ですけど!」

「・・・・・・」

我ながらフォローになってないな!

万物受けする良い人ではないヒソカさん。勿論私は居候の身で文句とか言いません!・・・・・・まぁこんな事態に陥らなかったらお知り合いにならなかったと断言はできるけどね!

「だから大丈夫なんです」

マチさんが心配そうにしてくれるのが嬉しいやら恥ずかしいやら。ヒソカさん、ごめんなさい・・・・・・と内心謝る

「追い出されたとかじゃなくて?」

「いいえっ。この荷物は自分で買ったんですよ。今日はレバニラにしようと思って」

「レバニラ・・・・・・」

「あ、マチさんお好きなんですか?レバニラ」

良かったらうちで食べて行きませんか?と続けようとして固まる。何故って私の権限は限りなく零に近いのだ

勝手にヒトサマを招いて良い?良い訳ない

「マチなら大歓迎だよ」

後ろからふわり、香ったのは慣れた匂い。

狭くなった視界でマチさん立ち上がっている。あれ、いつの間に

「・・・・・・ヒソカさんとマチさんはもしやお知り合い?」

「まぁね」

「・・・・・・恋人?」

!気色悪いこと言わないで」

「・・・・・・ヒソカさんの片思い?」

「・・・・・・あながち間違ってないけど今はが一番だよ」

・・・・・・今は、って

「それよりも」

耳元で囁かれて思わず身震いしてしまう

なんでこの人は声までイケメンなんだ。ん?イケメンって何の略称だっけ

「せっかく帰ってきたのに可愛い可愛いお出迎えがなくて寂しかったよ」

「ヒソカが寂しいとかキモい」

マチさんは手厳しい

二人の関係は良くわからないが私にとってヒソカさんの方が大事だ

「お帰りなさい。ヒソカさん」

体を反転させながら抱き着く

瞬時に抱きしめられ、ふわりと体が浮いた

「ただいま

可愛いよ、なんてほっぺにちゅーまで頂いた

ちゅーだけで済んで良かった。ヒソカさん時々舐めるんだよね。噛む時だってあるんだよね。野外でそれはちょっと通報沙汰だよね。

視界の端でマチさんが青ざめていることに気付いた

「ありえない・・・・・・変態が変態なのは今更だけど・・・・・・っ!」

「はい!」

何故かヒソカさんの腕に力が入る

ちょ、ヒソカさん私潰れちゃいます!携帯の逆パカみたくなります!

「・・・・・・アンタはそれで良いの?」

それで?それでってどれで?

だからヒソカさん酸素が取り込めなくなりつつあるんですが・・・・・・!

一体何を心配しているんだ、この人達は

「ぐぇ・・・・・・わ、私はヒソカさんと一緒に・・・・・・うぐっ・・・・・・不満も不安もな、ないですよ・・・・・・ちょ、ヒソカさんホントに潰れますって」

やっとの思いで言葉を紡いだらヒソカさんは人の首筋に顔を埋めてくる。また噛み付くつもりじゃないだろうな

が食べたいな」

「やぁですよ。レバニラで我慢して下さい」

「♪」

私とヒソカさんのやり取りを見ていたマチさんは不機嫌そうな顔でくしゃりと私の頭を撫でた

「わ、」

「・・・・・・何かあったらアタシが変態から守ったげるから」

「え、あ。ありがとうございます」

流れるような仕草で手に何か握らされる

ん?

「またね、。・・・・・・あばよ変態」

すごい台詞だなマチさん

せっかくのお茶会が終わってしまったことを残念に思いつつも無理矢理ヒソカさんを引っぺがす気もしない

ごめんなさいマチさん。お見送りも出来なくて

「・・・・・ヒソカさん目立ちますよ?降ろして下さい」

「僕の腕の中じゃ不満かい?」

誰もそんなことは言ってない。・・・・・・中身が出ない抱っこなら私も好きなんだ

なんだかんだでヒソカさんは優しく、マチさんは再三変態だと言っていたが私はそれ程気にならない。・・・・・・気にしないことにしてる

「しょうがない、なぁ」

思わず笑いが零れてしまう

あったかい腕の中は心地好くて全く、ヒソカさんのこと否定なんて出来やしないのだ

「お仕事、お疲れ様でした」

マチさんから貰ったのがメアドと番号だって気付いたのは帰ってからでした