きらきらと光る水面とオレンジに染まった夕日
ただそれだけだったけど
それだけでも
十分だった
本日モ晴天ナリ〜夏の想い出〜
「・・・・・どうしよう・・・」
夏休みももう終わろうという頃、は最後の夏休みの宿題を前にしてかれこれ30分ほど唸っていた
他の宿題は全て8月中旬までには終わらせただったが
どうしてもこの課題だけが終わらなかった
目の前にあるのは作文用紙が数枚
「『この夏一番の想い出』なんて言われてもさぁ・・・・」
とうとうは机に突っ伏してしまった
この夏一番の想い出
これがにとって最後の宿題であり一番厄介な宿題でもあった
別に作文が苦手な訳ではない(得意でもないが)
その証拠に読書感想文はキチンと終わらせてある
では何故厄介なのか、それは
「想い出らしい想い出なんて何一つ浮かばないんですけど〜」
うっわ寂しい夏休み
(だって今年はお母さんが忙しくってお盆休みもまともに取れなかったからお父さんのお墓参りにだってゆっくり行けなかったし。
毎日暇さえあればお兄ちゃんとサッカーしかしてないし!)
通常の小学4年生の女の子の夏休みとは大きく外れた夏休みを送っていただった
「うぅ〜・・・・・」
「何唸ってるんだよ」
突然、頭にズシッとした重みがあった
「・・・・お兄ちゃん重い」
顔が上げられなくなってしまったはかろうじてそう抗議した
「『この夏一番の想い出』?
なんだお前。作文とか真面目に書いてんのか?」
「だって宿題なんだもん」
「んなもん嘘書いてたってバレやしねーよ」
うっわー問題発言だよお兄ちゃん
「私誰かさんと違って真面目だから」
「偉大なるお兄様に喧嘩売ってるのか?」
お兄ちゃんがいかに早く宿題を終わらせることが出来たのか解った気がしたよ・・・
というか いいから手を退けてくれ〜・・・
「よし、急いで出かける準備しろ」
「は?」
イキナリ何を言い出すんですか?
「偉大なるお兄様がお前の思いで作りに協力してやろう」
ようやく手を退けて貰ってお兄ちゃんの顔を見ることが出来た
お兄ちゃんは何やら楽しそうな笑みを浮かべていた
「お兄ちゃん何処に行くのー?」
「何処だろーなぁ?」
・・・・さっきからずっとこの質問の繰り返しだ
結局あの後有無言わず自転車の後ろ席に乗っけられて
2人乗りして何処かへ向かっている。
(自転車だしもう日も傾いてるから そう遠いところじゃないみたいだけど・・・)
我が兄貴ながら何を考えているのかさっぱり分からない
とりあえず私は、大人しく座っておくことにした
「うっし、着いたぞ」
そう言われて着いた場所は
きらきらと光る水面とオレンジに染まった夕日
海だった
「わぁ・・・・!」
自転車を飛び降りて波打ち際まで走る
サンダルだったから走りにくかったし砂が隙間から入ってきて気持ち悪かったけど
波に触れるとそんなのは全部吹き飛んだ
「つめたっ・・・」
海なんて何年ぶりだろう
最後に行ったのは・・・・小学校入ってから来たことあったっけ・・・?
それくらい久し振りの海だった
「すっごいすっごい!!ホントに海だぁ〜!!」
まぁ分かりきってるんだけどさ、まさか海に連れてきてくれるなんて思いもしなかったから
いつのまにかお兄ちゃんも波打ち際まで来ていて(でも私みたいに海に足を漬けたりしてない)
「そりゃそうだろ」
とちょっと冷たいツッコミを入れてくれた
だからちょっと仕返し
ちょっとずつお兄ちゃんとの距離を縮めて行って・・・・一瞬の隙をついて海の中に引っ張った
「うわっ!!」
砂に右足をとられたお兄ちゃんは海の中にダイビング・・・・とまでは行かなかったがバシャン!と派手に音を立てて海の中に左足を突っ込んだ
ズボンを膝まで濡らして
「〜何すんだよ!イキナリ!!」
「いや〜暑そうだったから?」
もちろんそんなの嘘だけど
っていうか笑いが堪えきれない
「っこのやろ!」
「うゎ!!」
お兄ちゃんは黄金の右足を使って(あ、結局右足も濡れてるや)私に水を蹴ってきた
おかげで私はズボンだけじゃなくてTシャツまで濡れてしまった
「お返しだ!!」
「ならこっちだって!!」
熱いバトルが始まった・・・・!!(違)
それから散々水の掛け合いをして
結局2人ともかなり濡れてしまったわけである
「うっわーびしょ濡れだ」
「お互いにな」
そろそろ本格的に日も暮れてきたので戦いに決着は着かなかったけど諦めて自転車の所まで戻ってきた
すごいなぁ・・・Tシャツ絞ったら水出てきそうだし
「何ボケッとしてんだ?早く乗れよ」
「はーい」
いつものことながら申し訳ない
自転車にすら乗れない妹でごめんよ(でも乗れないのって半分以上はお兄ちゃんの所為だよね?)
「・・・・来年も来たいなぁ」
帰りの自転車でぼそっと呟いてみると
お兄ちゃんには聞こえたみたいで
「ま。年に一度くらいだったら連れてきてやってもいいぜ」
と言ってくれた
でも
「お兄ちゃん、来年は家にいないじゃん」
武蔵森に行くんでしょ?
あ、驚いてる・・・そうだよね。だってお兄ちゃん私には言ってないもんね
「お母さんと話してるの聞いちゃったから」
「・・・・まだ行くって決まった訳じゃねーよ」
でも行きたいんでしょ?
直接聞いたわけじゃないけどそれだけは分かる
「武蔵森ってサッカー強いもんね」
お兄ちゃんを引き留めてるのは私だ
偶然、お母さんと話してるのを聞いたときからずっと思ってた
うちにはお父さんがいないからお母さんがお父さんの分も一生懸命働いてくれてる
だから家の仕事は私とお兄ちゃんで分担してやってるんだ
お兄ちゃんがいなくなったら家の仕事は全部私の仕事になる
それだけって訳じゃないけど・・・・
他にもお兄ちゃんがいなくなったら夜遅くまで私一人だけになるとか色々・・・・心配してくれてるんだよね
私はいつだってお兄ちゃんに甘えてたから
その分たくさん心配掛けてるんだ
だから
「私、お兄ちゃんがサッカーしてる姿見るのが一番好きだよ?」
私のことは心配しないで
「精一杯頑張ってきて」
ポフッとお兄ちゃんの背中に身体を預けて
言葉を交わす
「・・・おぅ」
お兄ちゃんから返ってきた返事はそれだけで
とてもそっけないものだったけど
それでも十分なものだった
「・・・・っし、スピード上げるぞ!」
「のわっ!イキナリ立たないでよ!!」
慌てて掴まったお兄ちゃんの服からは
海と同じ香りがした
-------------後書き----------------------------------------------------------------------------------------------
わーいやっと書き上がった・・・!!
予定ではお祭りの話が書きたかったんですが・・・あまりにも甘甘になってしまって・・・汗
ちょっとしんみりさせてみました。ギャグを期待してた方スミマセン
結局ちゃんは作文仕上がったんでしょうか・・・?
一応こちらはフリー夢ですので欲しい方はお持ち帰りOKです♪
印刷も構いません。
ただし、サイトに掲載する場合は「轍-WADACHI-」のリンクを貼ってるサイト様のみ
そして出来れば僕に一言声を掛けてから(掲示板メール等)にしてください。
砂来陸