「一体何をやったの!!」
あたし、悪くないもん。とお決まりのセリフ
ただ言うならば私は昔からちょっとおてんばで
ちょっと負けず嫌いで
ちょっと短気だっただけのこと。
本日モ晴天ナリ -女の子とサッカーと-
さっきからギャンギャン叫んでる先生のお説教にいい加減うんざりしてきた
パグそっくりの顔でしょっちゅう反射する銀縁眼鏡は本当に見るに耐えない顔だ
「三上さん。貴方は女の子なのよ!?」
一番言われたくないセリフを言われてせっかく無表情を通してきたのに思わず先生を睨んでしまった
「な、何ですかその目は!」
すみませんねー生まれつきこんな目なんですー
あぁ むかむか する
だってあたしわるくないもん
悪いのはあの男の子だ
今日もいつもみたいにお兄ちゃん達とサッカーをしてた
ただいつもと違っていたのは対戦相手
今日の相手は友達、じゃなくていっつも別の所でサッカーしてるえーっと・・・たぶんおんなじ学年の子もいたっけ
そんな子達が対戦相手だった
私としてはいつもの人達と試合がしたかったけどお兄ちゃんが挑戦を受けちゃったからしょうがなくその人達と試合をすることになった
私はいつもの定位置でキーパー
フィールドプレイでだれがFWをするかじゃんけんしてる間に私は一人ゴールに向かう
私だけ一人ちゃっかり決まってる
いつもの場所
でも誰も止めない。だって自分で言うのも何だけどみんなの中じゃあ一番私がキーパーうまいもん
ただ対戦相手の子達は私を見てちょっと驚いた顔をした
だけど何も言わなかったから(少なくとも私は何も言われなかった)そのまま試合を続けた
試合は私達の勝ち
お兄ちゃん達はすごく頑張って攻めていって得点したし私だって頑張ってゴールを守った
「三上さん聞いてるの!?」
せっかく勝った瞬間を思い出して良い気持ちだったのに先生のギャンギャン声で引き戻された
あーもう。ほんとにいらいらする
そしてそんなイライラに便乗してもっと嫌なことまで思い出した
『なんだよっ そっち女がいるじゃん!!』
さぁ試合に勝って今度はみんなでミニゲームでもしようとしてたら対戦相手の男の子達がそんな事を言い出した
最初は自分の事を言われてるって気付かなくて(お兄ちゃん達がそれとなく庇ってくれてたんだって後から気付いたけど)
『だったらさっきの試合は無しだ』って言い出して
もちろんお兄ちゃん達は抗議した(当然だ。何で無効になるのかわかんない)
一生懸命和解しようとお兄ちゃん達が頑張ってる時に対戦相手の一人の子が私の腕を引っ張った
『え。何?』
『お前はコートから出ろよ!』
何でか分からないけど力いっぱい腕を引っ張られて
私は理由が分からなかったからその場に頑張ってとどまっていて
そしたら
『お前は女だからサッカーしちゃ駄目なんだよ!!』
その後はそのままコートから引きずり出されて
慌ててお兄ちゃん達が走ってきたけどそれにすら気付かなくて
『お前は女だからサッカーしちゃ駄目なんだよ!!』
ようやくさっき言われたことが理解できて
気が付いたら全速疾走でさっきの男の子に跳び蹴りをしてた
『痛ってー!!!何すんだよっ!!!??』
『女の子がサッカーしちゃいけないなんて知らないもん!!』
・・・まぁこんな感じで
気が付いたら私は対戦相手全員を相手に思いっきり喧嘩をふっかけていたのだ
そして騒ぎを見つけた先生に連れてこられて今に至る
あぁ、
思い出してもイライラする
連行するなり長い長いお説教を始めた先生なんてどうでも良くって
自分があっちこっちにひっかき傷があるのもどうでも良くて
相手の男の子は鼻血を出したんですよ!とか言われてるのだってどうでも良くって
それよりも
それよりも
コンコン、とドアが鳴った
(あぁそういえば閉め切ってたんだ。どうりで暑いわけだ)
鳴ったドアをみながらそんな事をぼんやりと思った
イライラがどんどんいやいやになってくる
「しつれいします」
開いたドアから涼しい風と 良く聞き慣れた声が入ってきた
おにいちゃん
「あら、三上君。まだ「妹には、僕の方から良く言っておきますので」
思いっきり先生の声に被ってるんだけどそれを全然気にしない風でお兄ちゃんは見事に言ってのけた
そしてそのまま私の方に近づいてきて
「ほら行くぞ」
と、手を引いて
ポカンと見てる先生をまた綺麗に無視して
引きずられてる感じで気が付いたら教室から出てた
「・・・お兄ちゃん」
「・・・・」
「お兄ちゃん」
「・・・・」
「お兄ちゃん・・・」
何度呼んでも返事どころか目すら合わせてくれないお兄ちゃん
だんだん心細くなってきて泣きたくなってきた
(ど う し よ う 怒 っ て る)
「おにい「ったく無茶しやがって」
もう一度だけ呼んでみようと小さく呼びかけた所でお兄ちゃんはそう呟いた。ついでに深々と溜息も
さっきまで見向きもしてくれなかったお兄ちゃんがようやくまっすぐ向き合ってくれた
「どっか痛いところは?怪我とかしてねぇだろうな」
握られている手を持ち上げて身体検査を始めたので慌てて首を横に振った
「怪我・・・してない。だいじょーぶ。」
ぎこちない 片言ロボットのようにとても変な言い方だったが
何故だか喉が詰まったような感じがする上に目まで熱くなってきてそれ以上上手く言えなかった
そんな私を見て亮は何を思ったのか微妙に俯き加減になってきた私の腕下に手を差し入れてそのまま持ち上げた
まるで小さな子をあやすようにだっこしたのだ
「お、お兄ちゃん?」
「おう、お兄様だ」
そんな事を聞きたいんじゃなくて
「おい。足怪我してるじゃねーか」
足?言われて見てみると(と言ってもだっこされたままなので自分の足を見ることすら苦労した)
確かに血が出てた・・・もう半分くらい乾いてるけど
「ったくあのババァもそれくらい気付けっつーんだよ・・・」
さっきまでの猫かぶりは何処へやら。ババァ呼ばわりなんて私より非道い
「で、もあんまり痛くないよ。本当だよ?」
急いでそう言うとお兄ちゃんの方が痛そうな顔をしたように見えた
だんだん上昇してくる罪悪感
「・・・ごめんなさい」
ぽろっと零れてしまった言葉にお兄ちゃんはちょっと驚いて それからまた溜息をついた
「そういうのをババァの前で言ってやれば説教は短くて済んだんだぞ」
だっこしたままゆっくり歩き出す
「先生には謝る理由ないのにあやまるなんてできないもん」
むっつりとそう呟くとその辺は上辺だ、上辺。と良いのか悪いのか分からないアドバイスが飛んできた
体を傾けてお兄ちゃんにすっかり預けると歩いている振動が直に伝わってきた
とん、とん、と一定のリズムで歩くお兄ちゃん
「・・・女の子はサッカーしちゃだめなのかなぁ」
『お前は女だからサッカーしちゃ駄目なんだよ!!』
嫌な言葉が頭を支配する
でも本当の事のようにも思えた
いつもお兄ちゃん達に混じってサッカーしてる女の子は私一人で
他にサッカーしてる女の子を私は見たことがない
もしかして本当にサッカーは・・・
「バーカ」
まるでカーンと鐘を鳴らされた様に頭にすごい衝撃を受けた・・・気がした
「はサッカー好きなんだろ?」
うん
「だったら良いじゃねーか。
アイツはただがあんまり上手いからちょっとひがんであんな事言ったんだよ」
そうなの?
「だから。がサッカー好きならやめる必要無し」
そこまで言ってお兄ちゃんはパッと手を離して私を地面に降ろした
「腕疲れたから今度おんぶな」
「私自分で歩けるよ」
そう言ったのにお兄ちゃんは無理矢理腕をとっておんぶをした
「足怪我してるヤツが何言ってんだよ。大人しく背負われてろ」
本当に自分で歩けるのに・・・
そう思ったけどお兄ちゃんの背中は温かくて居心地が良くって
何だかもったいなくて降りられなくなってしまった
「・・・?」
いつの間にか話し声が止んで変わりに小さな寝息が聞こえだした
どうやらすっかり寝入ってしまったらしい
対戦相手のヤツに向かっていった時は本気で心臓が止まるかと思った
負けず嫌いで短気で何より手が早い我が家の姫様
「・・・あんまり心配させんじゃねーぞ」
聞こえないと分かった上でそう呟き、そっと抱え直した
オレンジ色の帰り道
2人で一つの影が長く長く伸びていた
-----------後書き---------------------------------------------------------------------------
うん・・・兄妹萌え!って話が書きたかったんだけどなぁ・・・
私的にはだっこが書けたんで満足です。笑
かなりの短時間で書き上げた駄文ですが最後まで読んで下さってありがとうございました
8月12日 砂来陸
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