してやったり な笑顔
髪を放してくれた瞬間の亮の顔はまさにそれだった
・・・何ででしょう
負けた気がして悔しいです
本日ハ晴天ナリ
ラインカーを引っ張ってると後ろから元気な足音が駆けてきた
「ちゃんっ」
「どうしたの」
何やらきらきらと輝いているの目
「ちゃんさっきナンパされてたねっ!」
・・・大いなる誤解だよ
「、その話はあとでじっくりしてあげるから今はちゃんとタイム測りしてなさい」
そして出来れば記録を録る時に亮の名字を見て気付いて下さい
「分かった、絶対だよっ」
勢いよく頷くとはまたパタパタと駆けて行った
・・・元気だなぁ
太陽があれだけジリジリと焦がしているにも拘わらずはいつもと変わらない元気さ
さんはほんの少し、ばててるように見える
私は普段部活のおかげで慣れてるせいかそこまで辛くない
「こっちの手伝いも頼めるかい?」
「あ、はいっ」
助監督の人に呼ばれて急いでラインを引いた
亮との突然の再会に吃驚したけど何だか驚きすぎてむしろ冷静にその場を収められたくらいだ
もし実際に亮の名前を呼んでたり亮が私の名前呼んだりしてたらきっと絶対に最悪な事態に運ばれてたはず
(吃驚して目を見開いて固まってしまった私を誰かさんがあーんな笑顔で見下ろして下さったおかげでむしろ神経が落ち着いたわ。ハハハ)
「こっちにボールを10個とコーンも持ってきて」
「はい。ラインカーはもう良いですか?」
「あぁ。良いよ」
はい、ともう一度返事をしてガチャン、とストッパーを立てた
さて、今の状況を説明致しましょう
とさんは50M走のタイムを測ってる
そして私はその次のテストの準備に回ってる
いや別にイジメにあってるわけじゃないですよ?自分から希望して極力人と関わらない仕事をさせてもらってるんです。
だってほら、選手のみんなだって私なんかよりやさんの方が楽しく過ごせるでしょう?
(・・・自分で言ってて涙が出るくらい接客向いてないよなぁ)
サッカーが好き。
たぶんよりもさんよりも
私は随分と果報者だと思う
大好きなサッカーに関わることが出来て
すごく恵まれているんだと思う
(なのに何でこうもそれを活かせないかなぁ)
ふぅ。と一つため息をついた
「ちゃん、こっち手伝ってもらって良いかしら?」
「あ、はい!」
首から下げてたタオルで汗を拭って(この辺にもう女らしさを感じられない)そのまま玲さんの手伝いに回った
「ごめんなさいね。ずっと力仕事ばっかりで疲れたでしょう?」
「いいえ。大丈夫ですよ」
むしろ接客よりも楽でした。とはさすがに言わない
でも玲さんが謝ってしまうのは無理もないのかもしれない。結局私は50M走の後に3つ分くらいの体力テスト中もずっとその次の準備や終わった分の片付けなんかをし続けていた
その間約1時間
何度かとさんが替わろうか?と来たけど丁重にお断りした
「次のテストはね、簡単に言うとミニゲームなの」
「わ。いよいよですね」
代表に選ばれるだけの実力のある人達の試合。不謹慎だけど私はこれをすごく楽しみにしてた訳だから思わず嬉しい声を上げてしまった
ふふっと玲さんが笑う
「えぇ。いよいよね。
でも今回のミニゲームはGK付よ。それも2人ね」
「キーパーが2人?」
「えぇ」
にっこりと玲さんが頷いた
・・・さすがは玲さん。面白いことをしてくれる
(ってことはシュート力なんかを見るんじゃなくて今回はコンビネーション重視なわけだ)
キーパーにしたって2人いてもコンビネーションがなきゃ守りきれない訳だしね。
「で、ちゃんの仕事なんだけど・・・」
「あ。はい」
「GKの方に付いて貰っていいかしら?」
「何をすれば良いんですか?」
「まずは選手達のレベルを貴方の目で見て貰いたいわ。それから出来るだけ詳しくその子達のデータを取ってほしいの。
まぁ・・・普段飛葉中の試合の時と同じような感じね」
「はい」
よし。それなら私にも出来そうだとほっとした
だってデータ取りとかは普段やってるから慣れてるし選手とそんなに会話を交わすこともないだろう
そして何より一番大好きなポジションであるGKをじっくり見ることが出来る
それがにとって一番嬉しい事だった
「ご、GKの皆さん集まって下さいー」
ちょっとうわずった声で、さらに顔は出来るだけファイルに向けて
・・・予行練習の段階でこんなにボロボロってどうよ?
玲さんから聞いた説明を元に自分なりにメモを作ってそんなメモとにらめっこしながら練習
(もっと明るく言えば良いのかなぁ?でも緊張して声が裏返りそうだ・・・)
食い込むようにファイルを見入りながら無意識のうちに唸ってしまってる
・・・無愛想の次にどんなレッテルを貼られるだろう?
「(まずは平常心・・・)5つ目のテストはミニゲームをしてもらいます。それでですね、3対2で今回はGKも入ってきます。
名前を呼ばれた順番にコートに入って下さい・・・こんな感じで良いのかな」
玲さんにもらった資料をめくる。
そういえばキーパーって何人くらい来てるんだろう?
「不破、ちょっと近すぎないか?」
え?不破君来てるの?!
そう思って急いで玲さんからもらった資料をめくる。
「不破君も選抜選ばれてたんだ・・・」
「そうだ」
ん?
何かやたらと近い距離で声がした
そして気が付けば自分の上に影が落ちてる
・・・・
ゆっくりと顔を上げてみた
「久し振りだな。」
まず目に入ったのは寸前の距離にある前髪
それは思ったよりも近かった
ううん、近すぎた
驚きすぎて頭は真っ白になっていたのに体は反射神経を起こした
「うわぁぁぁあ!?」
奇声を上げて思いっきり体を後ろに引いてしまった
ドサッと尻餅を付いてしまう
反動で首に掛けていたタオルが落っこちた
「何故いきなり叫んだんだ?」
「・・・普通 拳一個分の距離に人の顔があったら誰だって驚くと思わない?不破君」
------------後書き---------------------------------------------------------------
微妙なところで終わってしまった・・・
みかみんとの再会の次は上水GKのあの人です。
相変わらずなあの人です。
早く他のキャラとも絡ませてやらねば・・・!
8月29日 砂来陸