「ちゃん、俺はね、ちゃんのことそりゃーちょっと大人びてるけど根は素直でイイコだって思ってたよ」
「・・・・ハイ?」
本日モ晴天ナリ
一体何なんだろうこの状況は
目の前でとても悲しそうな顔をしながら諭す様な話し方の功さんを見ながらはどうしていいか分からずただ顔を見返すしか出来なかった
何でこんな事になってるんだろう?
疑問符だらけの頭を必死に回転させてこれまでの経緯を思い出そうとした
とある日曜日
久し振りに時間に余裕のあったは形見であるサッカー資料集を眺めて楽しんでいた
「はぁ〜やっぱり歴代ナンバーワンはマルコ=ルイスかなぁ」
お父さんのサッカー好きはよく言えば幅広く、悪く言えば節操なしだった
何せJリーグっていう仕組みも出来上がってるのか分からないような頃からサッカーというものにはまっていて(しかも自分は運動音痴ときたもんだ)
どっから貰ってきたのか外国選手の記事まで取ってあった(しかも紹介文は英語。お父さん自己流の和訳付)
まぁそれを見るのを何よりもの楽しみにしている娘のセリフじゃないんですけどね・・・
その時だった
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴った
「はーいっ」
読みかけのスクラップはソファーの上に放りだして玄関まで走る
そして玄関を開けると
「・・・功さん?」
「やぁちゃん。ちょっと上がらせて貰っていいかな?」
なんとも珍しい事に功さんがうちに来たのだ
上がりたいっていう功さんを断る理由なんてもちろん無くて(あ、でもソファーの上は散らかってる)
お客さん用をスリッパを引っ張り出した
とりあえずリビングに通した後丁度作っておいた紅茶を即席にアイスティーにして(もともとはホット。私は年中ホットで飲む人間だから)
差し出したら功さんは堰を切ったかのようにしゃべり出したのだ
(・・・でこの状況と)
とりあえずここまでの経緯を振り返ってみたもののさっぱり理解が出来なかった
相変わらず功さんは私の事を貶しているのか褒めているのか分からない事を言って
・・・一体これはどういうことなんでしょう?
「あのー「そりゃ確かにさ、女の子だしさ中学生だしさ、恋愛の一つや二つしたいよね」
「えー「彼氏なんかがいちゃったりしたってちょっと・・・いやかなり寂しいけどそれはしょうがないと思うよ」
「・・・「でも何もあんな女癖が悪そうな男と付き合う必要はないだろ!?」
・・・本当にどういうことなんですか?
はい、落ち着いて深呼吸をしましょう
吸ってー吐いてー吸ってー
って深呼吸なんてしてる場合かっ!!
「功さん、一体どういう事なんですか?」
必要以上に酸素を取り込んで必要以上に二酸化炭素をはき出すとすこーしだけ落ち着いた(気がする)
だけど落ち着いたからといって功さんの言動はこれっぽっちも理解できないけどね!
「とぼけても無駄だよ!
昨日ちゃんがデートしてるのを俺はしっかり見たんだからね!」
「デート・・・・?」
「そう!手まで繋いでたんだからあれは絶対にデートだ!!」
念のために言っておくけど
私は彼氏なんていない(って言い切れる自分が悲しい・・・)
だけど昨日は確かに出かけた
確かに行ったけど
行ったには行ったけど
「あんな女たらしっぽそうな顔したタレ目 俺は許しません!!」
亮です
私が昨日出かけて会った人の中に女たらしっぽそうな顔でタレ目と言ったらそれしかありえません
「こ、功さん それ彼氏じゃなくて・・・」
「それじゃあ何かい!?ちゃんは彼氏でもない男の子と手を繋ぐの!?
そんな不埒な子に育てた覚えはなーい!!」
っていうか私、功さんに育てられた覚えの方が無いんですけど
それに確かに亮は彼氏でもないけど手・・・繋ぐんです
「あのですね、あれは私の兄です」
「そんなの信じられっこないだろー!!」
・・・誰かこの人を止めて下さい
「ただいま〜!」
・・・ナイスタイミングお母さん
「あら功君?」
「こんにちは。都さん」
「お帰りなさい。お母さん」
意外なお客様にお母さんはちょっと驚いたみたいだったけどすぐに笑顔になった
「いらっしゃい功君。ただいまちゃん」
空気が一瞬でほんわりと温かな感じになった
「でねっちゃん!さっきの続きだけどね!!」
空気が一瞬でひゅっと冷たい感じに戻った
このまま忘れてくれるかな?なんて考えはとっても甘かった
「どうしたの?」
鞄を置いて戻ってきたお母さんは尋常じゃない様子の功さんとうなだれてる私を交互に見ながら首を傾げた
「あっ都さん聞いて下さいよ!!
ちゃんがですね!昨日デートしてたんですよ!!」
してないしてない
「えっちゃんたら何時の間にそんな子がいたの?お母さん聞いてないわよー?」
とか何とか良いながらも何故だか嬉しそうなお母さん(いやどっちかって言えば楽しそう?)
堂々巡りの会話にいいかげんうんざりしてきて一つ溜息が零れる
「都さん!何嬉しそうな顔してるんですか!
その相手が問題なんですよ!!
だってちゃんの彼氏って女たらしっぽそうな顔したタレ目なんですよ!?」
お母さんの目が点になった
そしてそのまま私に向けられる
その顔はちょっと残念そうだ
「なーんだちゃん
その子ってあっくんの事でしょ?」
「うん」
さすがお母さん。すぐに分かってくれた
でも
女たらしっぽそうな顔したタレ目で分かるってどうよ?
「えっ都さんその子のこと知ってるんですか!?」
知ってるも何も・・・実の息子を知らなかったら問題でしょ(お母さんは最近会ってないけど)
「功君、その子は私の息子よ。
つまりちゃんのお兄ちゃんになるわね」
今度は功さんが目が点になった
そして次に焦った様な口調になった
「でっでも手繋いでたんですよ!?」
「昔から仲の良い兄妹だったのよね〜」
「っていうか都さん息子さんもいたんですか!?」
「いるのよ〜、今中三で寮に入ってるの。だから一緒に住んではないんだけど」
・・・あぁお母さんが帰ってきてくれて本当に良かった
私じゃ何言っても信じて貰えなかったからな・・・
ピンポーン
また玄関のチャイムが鳴った
お母さんは功さんのお相手が忙しそうなので私が出ることにした
「はーい」「あっちゃん功兄来てない?」
何と、今度は将君がいらっしゃった
「来てるよ。今・・・えーっと・・・お母さんと話し込んでるからとりあえず上がって?」
どうしても亮が兄ということに納得いかないのかお母さんに次々に質問を浴びせていた
いつもからは想像も出来ないくらい取り乱した兄の姿に将君も首をひねった
「・・・功兄どうしたの?」
「さぁ・・・」
何て言って良いか分からずに私もはぐらかすことにした
「ちなみに将君」
「なに?」
「『女たらしっぽそうな顔したタレ目』で誰を想像する?」
「もちろん三上せん・・・・・」
「・・・・」
「えーっと・・・誰だろうね?」
「・・・・」
こちらとあるマンション
今日も一日平和みたいです。
-----------後書き----------------------------------------------------------------------------------------
ようやく書き上がりました・・・
リクを頂いて約2ヶ月・・・本当に遅くなってしまい申し訳ないです
結さん、リクエストに添えたという自信がないのですがどうぞ受け取って下さいませ
3月8日 砂来陸