さすがにこのままじゃテストがやばいと思って

と別れた後先生達の所を巡りに巡って補習をしてもらった

だからバスに乗って国部二部中を目指したのは暑い太陽も少し傾いた頃だった




本日ハ晴天ナリ




今日は厄日だ

絶対にそうに違いない

フラフラとバスから降りるとバスのドアは冷たくもバタン、と閉まって去っていった

「・・・さようなら〜」

バスに向かって呟いてちょっと虚しくなった

まず今日厄日だって思える原因其の一、テストの出来が自信がない

冗談抜きで。テスト中寝なかっただけでも奇跡って言うくらいの意識だったんだから・・・

そして其の二

帰りのバスで寝過ごしました

もう どうしようもないくらい自分が不甲斐ないと思います

しかもね、家に帰る途中に寝過ごしたんだったらまだ良いんだよ

問題は国部二部中に向かおうとして寝過ごしたって事なんだよ!!

ぐるりと周りを見回す

・・・ここ何処ですか?

全く見たことがない道

お金があるんだったらタクシーでも呼んで国部二部中前まで連れて行って貰ったり出来るかもしれないけど

恐る恐る財布を覗くと・・・帰りのバスにだって乗れそうにない小銭ばっかりジャラジャラ

・・・・しょうがない、お母さんに迎えに来て貰おう・・・

とりあえず何か目印になるものがある所を目指す(出来れば国部二部中)

こういう時、行動力のある自分で良かったって思う


こんな事してるのばれたら翼怒るかな・・・?

すぐに家に帰って寝るか勉強しろ、と言った我が部誇るキャプテンの顔を思い出す

もしばれたら・・・・うん、考えない様にしよう

翼ってああ見えて結構面倒見が良いし世話好きだからきっと私の事も心配してくれるんだろう

・・・に話しちゃえば良かったかな・・・

でも今回話さなかったのは意地じゃなくてただ自分で出来ることがまだあったから

それはお守りを返しに行く、っていう悩みとは全然関係がないことなんだけど・・・

それでも

何かしてなきゃ怖くてまだ自分で何かできるって思いたくて

(・・・これが今の私の精一杯)

将君も翼達も離したくなくて離れていってほしくなくて

だからこうやって中途半端な事をしてしまう


「誰もいない道ってこんなに寂しいんだ・・・」

平日だからか人通りは殆どなくて車も通らなかった

音のない世界

微かに聞こえるのは風が木を揺らす音とブランコが揺れる音

・・・・ブランコ?

(ブランコってこんな微風で動くものだっけ?)

首を音のする方にぐるりと向けると確かにブランコがあった

でも風で動いてたんじゃない

そこにはブランコとはかなり不釣り合いな人が座っていた

見覚えのある色素の薄い髪

「天城君っ!?」

気が付いたら思いっきり大声で名前を呼んでいた

それからはまるでスローモーションのようにゆっくりと天城君がこっちを向く

声の主である私を見ると天城君は何故か不審者を見る様な目で見てきた

あれ?

不審者なのかもしくは不機嫌なのかもしれない

普通に考えて天城君は私に会いたくないだろう

だってもし逆の立場だったら私だって敵チーム(しかも負けた)の人なんて会いたくない

だからわざわざ大声で名前を呼んでしまった私を不審者と思うのも不機嫌になるのも分かる

という訳で慌ててポケットに手を突っ込んで目当てのものを取りだした

ちょうど手の中に収まるサイズ

「これっ貴方のでしょう?」

小さな小さな手作りのお守り

フェンス越しにお守りを振ってみる

・・・って言うか公園の入り口が分かんないだけなんだけど

何ならこのフェンス(約1メートル)を飛び越えても良いんだけど今日は制服だし・・・スカートだし・・・

どうしようか考えてる間、先に動いたのは天城君の方だった

私の手の中にあるお守りをしばらく見つめてそのまま無言でこっちに歩いてきた

(あ、良かった。フェンス越しに渡しちゃえば良いんだ)

そう思ってフェンスの上から手を伸ばそうとする もちろんお守りは握ったまま

天城君はまっすぐ歩いてきてお守りを受け取りー・・・ガシャン

「えっ?」

何故か天城君は私が伸ばしてる手はスルーしてフェンスに手を掛けた

彼にとってはこんなフェンス無いのと一緒らしい

いとも簡単にフェンスを飛び越えるとそのまま流れるように私の前に立った

反射的にお守りを持った手を差し出す

天城君はもぎ取るようにお守りを受け取った


この時の天城君の顔を私はきっと忘れられないだろう

まるで泣きそうな

まるで安心したような

私の知っているどんな言葉でも表せられないような表情でギュッとお守りを握りしめた

「・・・・それ、大事な物だったんですね」

思わずそう呟くと天城君はさっきまでの表情は一蹴してまた険しい表情に戻った

・・・あれー私やっぱり嫌われてる?

「えーっとですね、それ拾ったのは数日前だったんですけどテストとか色々あって返すのが遅くなってしまったんです」

いや、聞かれた訳じゃないけどあそこまで怪訝な顔で睨まれたら言い訳をせざるを得ないって言うか

沈黙が耐えられないって言うか・・・

一人で自分に対する言い訳も心の中でしつつ軽く頭を下げる

「ごめんなさい、遅くなってしまって」

「・・・あぁ」

良かった、初めて喋ってくれた

嫌われてるにしても何も会話をせずに帰るのはさすがに寂しい

「・・・飛葉中」

「へ?」

思わず頭を上げると捕らえたのは色素の薄い目

彼は何でか初めて遇った時からライオンに似てると思った

色も似てると思ったし人を信用してなさそうな所もそっくりだと思った

それでも

全く恐怖心を感じないのは何でだろう?

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ようやく天城君との再会です。
ちゃんは学校でテスト勉強した後に来た設定なので原作のフットサル後という事になってます。
最後に天城君が呟いたセリフは一応意味があります。
すごい微妙な終わり方ですが早めに続きをUPしたいと思います

                             11月5日 砂来陸