どうして私は

大切なものを

一つだけ選ぶことが出来ないんだろう




本日ハ晴天ナリ




「あ」

ジャージのポケットに入れっぱなしですっかり存在を忘れていた落とし物は

すっかり忘れられたままうっかり洗濯する寸前だった

「すっかり忘れてた・・・」

洗濯機に投げ入れる寸前にポケットを確認すると何か手に当たる物があった

何入れっぱなしだったっけ?と首を傾げつつ引っ張り出すとそれはこの間の国部二部中戦の時に拾った小さなお守りだった

「あー・・・」

そうだ

すっかり忘れてた

あの後 帰りにみんなに聞いてみたけど持ち主が見つからなくってそのままポケットに突っ込んだんだった

「あーもう・・・」

何だかひどく自己嫌悪に陥ってそのまま洗濯機に寄りかかるような形で座り込んだ


勉強会はあのままお開きという形になった

原因は8割方 私にあったと思う


次の対戦相手が桜上水中って聞いたとき

一瞬にして頭がフリーズした

桜上水?

頭に浮かんだのは将君の顔

私は 将君の敵になるの?

明らかに様子の可笑しくなった私をがどこか体調が悪いんじゃないか、ってすごく心配しながらそこで勉強会はお開き

・・・・だった気がする

なんだかもう覚えてないや


飛葉中のマネージャーになるより先に将君をずっと応援してあげたいって思った

ゼロからスタートした将君は

それでもサッカーを好きだって言ってくれたから


「・・・泣きそう」

そうしてさらに自己嫌悪

と、その時玄関のチャイムが鳴った

「っはーい!」

零れそうになっていた涙を拭いて慌てて立ち上がる

一体誰だろう?あ、ガスの集金かもしれない

判子はどこにやったっけ?なんて考えながら勢いよくドアを開けた

ゴン!

・・・・・・

・・・・・・・・

・・・何だかすごい音がしませんでしたか?

恐る恐るドアの向こうを見ると

「・・・こ、こんばんはちゃん」

・・・・涙目で鼻を押さえてる将君が居ました


「ほんっとうにゴメン!」

「大丈夫だよ。僕がドジだっただけだし」

ひらひらと手を振って(左手は鼻をおさえたまんまだけど)笑ってくれる将君

一体何をやってるんだ私は・・・

とりあえず将君を家の中に招き入れて冷たい麦茶を準備する

将君は大丈夫だって言ってくれるけどどう見たって痛そうだし悪いのは私の方じゃないか・・・!

カランとコップから涼しげな音が響く

遠慮がちに差し出すと嬉しそうに将君は受け取ってくれた

「ありがとう」


そう、この笑顔だ

胸がギュッと締め付けられる感じがした

だって私はこの笑顔にたくさん支えられて

たくさん元気を貰って


だからずっと応援しようって決めてたのに


そういえばずっと前に将君が武蔵森と戦った事があった

あの時も将君だけを応援することが出来なかったけど

あの時はまだ亮の事を知られてなかったから・・・・

私は卑怯だ


ちゃん?」

名前を呼ばれて慌てて顔を上げた

「どうしたの?顔色悪いみたいだけど・・・」

心配そうに顔を覗き込んでくる将君 あぁ、よく見ると鼻の頭がちょっと赤い

「ちょっと・・・考え事して」

必死で笑顔を作ってそう返した

将君はまだ心配そうにしてたけどテスト疲れなの、と言うと納得してくれたみたいだった


ごめんね将君

どうして私は大切なものを

たった一つだけ選ぶことが出来ないんだろう


「あれ、ちゃんそのお守り・・・」

お守り?

将君の指さした方向を目で追うとテーブルの影になる所にぽつんと小さな手作りっぽいお守りが落ちていた

・・・さっき慌てて落としちゃたんだ

「それちゃんの?」

「ううん。それ、拾ったの」

どこで、とは言わなかった

将君はお守りをそっと拾い上げて裏表ひっくり返してまじまじと観察した

「将君?」

「ねぇちゃん。これたぶん国部二部中の人のだと思う」

「え?」

きょとんとして聞き返す

「前に一度見たことがあるんだ。確か国部二部中の天城っていう・・・」

語尾が徐々に小さくなってしまったのはあまり答に自信が無いからだろうか?

でもうちの部員に持ち主がいなかったんだからきっとこれは国部二部中の誰かのという事になる

「・・・じゃあ届けてあげなくちゃ」

「え?」

「だってそれ手作りみたいだしきっと持ち主の・・・えーっと天城君?も探してると思うの

 だからやっぱり返してあげなくちゃ!」

「う、うん」

どっちかって言うと将君は私があんまり必死に言うので頷いただけなのかもしれない



きっと私は嫌な事を先延ばしにしたかったのだと思う

だから逃げる様にそう言ったのだ

だってそうすれば

まだ将君が笑顔を向けてくれるって

そう思って


----------------後書き--------------------------------------------------------------------

はーい。なんだか調子が取り戻せ無くってダラダラ文章になってしまいました。
あれいつものことだっけ。
でもちゃんの心境的なことをたくさん書けたのは良かったです
さてさて、そろそろ天城君と再会させてあげましょう

                                 10月6日 砂来陸