お父さんはね、とっても優しくてとっても格好いい人だったのよ
お母さんのことをとっても大事にしてくれてね、
あっくんとちゃんのことももちろん大好きだったんだから
全然覚えてないお父さん
でも寂しいって思わなかったのは
お母さんがこうやってお父さんの話をしてくれたから
まるで壊れたレコードのように私の中を巡る言葉
見つけた。
「ちゃん古新聞は何処に置いとけばいいー?」
「あ、玄関に置いといて。明日処分するから!」
掃除機を駆けていた手を止めてはお母さんに向かって叫ぶ
久し振りに休みの取れた母親をこき使うのは正直したくなかったけど
「いいのよ、たまにはお母さんもお母さんらしいことしなきゃ!」
と申し出があったので遠慮なくご好意に甘える事にした
「あっお母さんチラシは別にしててね!でなきゃ回収してもらえないから」
そこまで言ってまた掃除機のスイッチを入れる
今日は大掃除
あんまり汚れてはいないんだけど模様替えなんかも兼ねて掃除をする事にした
「ん?」
掃除機を駆けているとソファーの下から大きな箱を発掘する
「何これ」
とりあえず掃除機は横に置いておいて箱を引っ張り出してみる
少し埃が舞ったので傍にあった雑巾で箱を拭く
「『MEMORY』?」
箱にはそう書かれたラベルが貼られており
中にはビデオテープが入っていた
そのビデオにもいろんな種類のラベルが貼ってありその中から適当に一つ手に取ってみる
「『LITTLE BY LITTLE』って直訳すると『とても小さい』よね?」
しかし、それだけでは一体何のビデオなのか分からない
(誰のビデオなんだろ?)
「ちゃんどうしたの?」
肩にずしっと重みを感じたかと思うとお母さんが肩に寄っかかっていた
「あらぁ そのビデオどうしたの??」
不思議に思う、というより驚いた声のお母さん
もしかしてこのビデオの事を何か知っているんだろうか?
「さっき見つけたんだけど...................このビデオ何なの?」
LITTE BY LITTE と書かれているだけではさっぱり検討もつかないビデオの中身
「これはお父さんのビデオよ」
「お父さんの?」
予想外の言葉に思わず聞き返す
そんな私の様子をお母さんは気付いているのかそのビデオを手に取り懐かしむような目でみた
「お父さんってビデオカメラ持っててね、撮影するの好きだったのよ。
どこか出かける時は必ず持って行ってたわ」
「そうだったんだ....................」
2才の時に死んでしまったお父さんの記憶なんて殆どない
色々お母さんから話は聞いてたから寂しいとは思わなかったけど
これは初耳だった
「これ たぶんちゃんが生まれたばっかりの時のビデオじゃないかしら?」
「え?」
指でツツツとラベルをなぞりながらお母さんが言った
「まだ病院にいる時の。お父さんったら病院の中は撮影禁止なのに我慢出来ないでビデオ持って来ちゃったのよね」
フフッと笑うお母さんの横顔はとても懐かしそうでそれと同時にとても切なげだった
そして、幼い頃から何度も聞いている話をまた聞かせてくれた
「お父さんはね、とっても優しくてとっても格好いい人だったのよ
お母さんのことをとっても大事にしてくれてね、
あっくんとちゃんのことももちろん大好きだったんだから」
もう何度も聞いているのに絶対に飽きる事のないお父さんの話
それはこの話をするときのお母さんの笑顔が本当に幸せそうだったからかもしれない
「............................ねぇこのビデオ観ても良い?」
今までお父さんは写真でしか見た事が無かった
それに不満を感じた事は無かったけど
やっぱり観てみたい
「いいわよ」
にっこりと微笑むお母さん
ドキドキしながらビデオをセットする
ちょっと手が震えた
映像が現れる
さすがに10年以上も前のものだけあってあまり綺麗とは言えない映像だった
それでも
『今日は亮と病院に来ています』
声ははっきりと聞こえた
ドクンと鼓動が高くなるのを感じる
『ここにお母さんと亮の妹がいるんだぞー』
『ぼくのいもーとーv』
画面には小さな男の子のアップが映し出された
「これ、亮?」
「そう。可愛いわよねーv」
確かに........................
はにかんだ笑顔を浮かべている男の子はぶっちゃけ今の亮からは想像も出来ないほど可愛かった
『さぁ病室に着きました。亮、そーっとドア開けて』
『そーっとぉ』
映像の中で白いドアが開き、病室の中が映し出される
『おかーさんv』
『あっこら亮!』
お父さんの声を無視してミニ亮はトテトテと病室の中に入っていった
『あっくん!来てくれたの?』
次に映し出されたのは青い患者服を着ているお母さんだった
今より若い(そりゃそーだろ)
っていうか.............................ホントに私に似てる
「私ってやっぱりお母さん似なんだね」
「そーねぇ、だってちゃんたらお母さんの若い頃にそっくりだもんv」
「(否定出来ない)」
『ほら亮、お母さんにお疲れ様言ったのか?』
『おつかれさまぁ』
『ありがと。あっくん』
画面の中のお母さんは亮の頭を撫でると顔を上げてこっちを見た
ん?こっちっていうのは私の方っていうよりお父さんの方だよね
『おつかれ、都』
『ありがとう』
そう言ったときのお母さんの顔はたぶん私が知っているどんなお母さんの笑顔より綺麗だった
幸せそう
「どう?ちゃん感想は」
「うん.....................」
見て良かった
『おかぁさん、ぼくのいもーとは?』
『こっちよ』
画面の中のお母さんがそう言った途端突然画像がブレた
どうやらビデオカメラがお父さんの手からお母さんの元へと移動したようだ
『これが僕の娘か!』
そうして映ったのはまだ生まれて間もない目をつぶった赤ん坊(たぶん私だろう)と
お父さんの顔
『かっわいいなぁ〜v』
初めてまともに見たお父さんの顔は嬉しそうは嬉しそうでもでれっとした嬉しそうな顔だった
「....................」
『お父さんでしゅよ〜v』
「......................」
『やっぱり母さんに似てるなぁ〜』
悪いが自分の顔ながら目と鼻と口があるくらいしか特徴がないと思うが
『ちっちゃいなぁ〜v』
抱き上げて頬擦りしているお父さんはあんまり見たくないほど嬉しそうな顔だった
「......................」
『おとーさん、ぼくもだっこするぅ』
画面の端でお父さんの洋服を引っ張る亮
『だめだっ!亮は落とすだろう!!この子に傷でも付いたらどうするんだ!!』
ヲイヲイ
『うぅ〜ぼぐもだっごずるのぉ〜!!』
あぁ泣き出した
『何騒いでるんですか!!ここは病室ですよ!!』
大音量で泣き出したミニ亮の声にとうとう看護婦さんまでやって来た
『って何やってるんですか!!カメラの持ち込みは禁止ですよ!!』
看護婦さんがアップで映ったかと思ったら画面がものすごい勢いでブレだした
『あぁ!何するんですか!!こんな可愛い子を撮らなかったら一生悔やむでしょう!!??』
『規則は規則です!!』
ブチッ ザザ〜・・・・・・
映像が途絶えました
「どうだった?ちゃん」
にっこりと笑顔で尋ねてくるお母さんを見ていると
どんな返事を期待しているのか手に取るように分かる
だが
「うん........................(前半は)良かったね」
そう言った私の答えに満足したのかお母さんはさらに嬉しそうに笑った
お父さんはね、とっても優しくてとっても格好いい人だったのよ
お母さんのことをとっても大事にしてくれてね、
あっくんとちゃんのことももちろん大好きだったんだから
まるで壊れたレコードのように私の中を巡る言葉
その言葉に間違いは無いと思う
ただ
やっぱり色々ショックを受けたよ
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笛キャラみかみんだけじゃん!!
なんか突っこみどころ満載ですが見逃して下さい(−−;)
何が言いたかったかと言うとみかみん父もちゃんが可愛くて可愛くってしょうがなかったっていう話ですよ
5月9日 砂来陸