これはちゃんが小5 亮君が中1の春休みのことです



風邪引きサンには




「あっくん!?良かったわ。ちゃんのことよろしくね!!」

春休みになってようやく家に帰って来れたと思ったら都さんにいきなりそんなことを言われた亮君

「は?どういうことだよ」

「うん。お母さんそろそろ行かなきゃ仕事に遅れちゃうの!!」

亮の質問は軽く無視されて都さんはあっという間に去っていった

玄関から飛び出していった都さんを10秒ほど眺めていたがようやく我に返り

「一体何があったんだ・・・・?」

重い鞄を肩に掛けたままそう呟いてみたがもちろん返事は無く

「っと ー?いねぇのか?」

「..........................亮?」

とても小さな声

でも聞き間違えるはずのない妹の声

声のした方(の部屋)に向かってみると

そこには

ベットに寝ているの姿があった

「どうしたんだ!?」

「おかえりなさい亮」

ゆっくりとした仕草でベットから身を起こす

その姿はどこか辛そうに見えた

ズカズカとベットの傍まで行く

「おまえ体調悪いのか?」

いつもはこんな時間まで寝てるようなヤツじゃないし(たいていこの時間は洗濯物に追われている)

顔が紅潮していて目が潤んでいる

「ん〜ちょっと熱があるだけ」

情けないよねと言うの姿はちょっととは言わずかなり辛そうだった

鞄はその辺に下ろしておいて椅子を引っ張ってきてベットの傍に座る

「本当にちょっとか?」

コツン

の前髪をそっと避けてやりそのままおでこを合わせる

「亮!?」

至近距離にある顔に思わず後ろにのけぞりそうになるの後頭部を亮はしっかりと押さえていたので

の行動は無意味に終わってしまった

「おまえコレぜってぇちょっとじゃねーだろ」

合わせたおでこから感じるの体温は驚くほど高く

冗談でも微熱などの言葉では片づけられそうになかった

後頭部を押さえていた手を離し、寝かせてやる

上からキチンと布団も掛けてやる

熱の所為で頭が働かないのか体が動かないのか分からないがはされるがままになっていた

「今日一日は大人しく寝とけ」

「せっかく亮が帰ってきたのに................?」

ぐはっ!!

潤んだ瞳でとても寂しそうな顔をされ思わずを抱きしめたい衝動に駆られる亮君(笑)

「たまの兄貴の言葉くらい聞けよ」

そんな衝動を何とか抑え(笑)そう言い聞かせるとは渋々とながらも頷いた

「薬は?」

「飲んでない..............」

「飯は?」

「食べてない.................っていうか食べたくない」

風邪をひいたヤツの一般的な反応

体がだるくなって何も食べる気がしない

「それじゃあ薬も飲めねぇだろ。何か作ってくるからちょっと待ってろ」

「食べたくない」

「俺様が作るんだから食え」

俺様何様亮様☆

椅子から立ち上がりもう一度おでこに手をやる

やっぱり熱い

(確か熱を下げるには汗をかくと良いって聞いたような.....................)

どこかうろ覚えな知識で献立を考える

(やっぱ栄養があるもんがいいよなぁ)

冷蔵庫を覗いて野菜と呼ばれている物々を取りだしていく

ジャガイモ・ニンジン.................

そして

「よし、決定」

献立も決まりいざ調理開始

(料理なんてすんのマジで久々だよな。寮では渋沢が殆どやってくれてるし)

ふと、料理をする亮の手が止まった

ガチャガチャっと台所を漁りだす。どうやら何か捜しているらしい

「・・・・・・・・ピーラーが無い」

台所の三種の神器とも呼ばれているピーラーが無かった(呼ばれてないし)

(ちょっと待て!普通どんな家庭にもピーラーぐらい置いてあるだろ!?)

何処を捜してもピーラーは見つからなかった

Q.何故?

A.ちゃんが以前料理中に壊しちゃったから。で、それから皮むきは包丁でするようになったから

しかし、そんなこと亮君は知りません

「どーやって皮剥くんだよ」

ジャガイモとにらめっこ中

が、ようやく諦めて

(しゃーねぇ包丁で皮剥くか)

本当にしょうがなく、といった感じで亮は包丁を右手にジャガイモを左手に構える

いざ勝負(マテ)




「亮、大丈夫かなぁ.....................」

ベットの上でポツリと呟く声が一つ

(あーぁ何でこんな時に風邪なんてひいちゃったんだろ)

せっかく亮が帰ってきたのに、とどんどん自己嫌悪に陥っていく

「んっ?」

料理、の匂いが鼻孔をかすめた

別にそれは構わない。先ほど亮が作ると言っていたのだから

ただ

問題はその匂い

(これ、夢かなぁ?)

っていうか夢であって欲しい

ー出来たぞ」

亮がおかゆなんかをいれる土鍋をお盆に載せてやって来た

どうやら夢じゃなさそうだった



「亮・・・・コレ何?」

土鍋の蓋を開けるとそこには美味しそうな

カレーがありました

「カレーだ」

「いや、そんな自信たっぷりに言われても」

普通、風邪の時にカレーなんて作るものなんだろうか?定番はおかゆとかじゃないんだろうか

冗談かと思って亮の方を見てみるけど亮の顔はいたって真剣

(マジですか?)

マジですとも

「いただきます.....................」

このままじゃラチがあかないし。せっかく亮が作ってくれたんだし

あんまり食べる気はしないけど頂くことにした


「.................?」

スプーンでご飯とカレーをすくって不思議なことを発見した

「ねー亮」

「何だ?」

「私の気のせいじゃなければこのカレー何の具も入ってないんだけど

スプーンでカレーの部分をいくら掘っても具と呼ばれる物は一つも無い。本当にただのカレーのルーだけだった

なんで?

「あー・・・・・それは消化にいいように具は入れなかったんだ!」

.......................そうですか

どこか挙動不審だったけどそれ以上聞かなかった

聞く元気が無かったとも言うけど



「ごちそうさまでした」

頑張ったけど半分が限界で結局残してしまった

「まぁ半分も食えば上出来だろ」

せっかく亮が作ってくれたものを残しちゃったから怒られるかな、って思ったけど

亮は怒らないでそのまま薬と水を渡してくれた

「薬飲んだらまた大人しく寝とけよ」

むー・・・・・

食べかけの土鍋を下げて亮は部屋から出て行った


また、1人に戻った


風邪をひくと寂しく感じるのは何ででしょう?

世界に自分しか居ないような感じになってしまう

(弱いなぁ私は)

ぐるぐる回っている私の視界

それを遮断するように私は目を閉じた


「熱少しは下がったか?」

おでこに何かが当たって私はまた目を開けた

亮の手

「薬だってそんなにすぐには効かないよ」

あー冷たくて気持ちいいなぁ亮の手って

「ったくおふくろはまだ帰ってこないのか?」

「お母さん今日は出張だって行ってたから帰ってこないよ?

 ホントは休むって言ってたけど私が無理矢理行かせたの。私のために仕事休む何てしてほしくないから」

迷惑を掛けたくなくて

すると亮はとてもあきれた顔をした

「おまえなー風邪ひいたときくらい親に甘えろよなぁ。おふくろだって心配するだろ」

「だって・・・」

「だってじゃねーの。あぁもう今日は俺様が看病してやるからちょっとは甘えろ」

甘えろって言われても・・・

人に迷惑を掛けるのはキライ

それが亮やお母さんだったら尚更のこと

でも

「じゃあ傍に居て欲しい」

今日だけで良いから

ちょっとだけ

そう言ったら亮はちょっと驚いた顔したけど

「お安いご用でお姫様?」

と言ってくれた

私はお姫様みたいにに可愛くないし

あまのじゃくだけど

そう言って貰って安心して眠ることが出来たんです

ありがとう亮





「・・・んっ」

目が覚めた

一体どれくらい眠ってたのか分からないけど外が真っ暗で車の音も殆どしないからきっと今は夜中なんだろう

ベットの横には

ベットに寄っかかるようにして寝ている亮がいた

(本当にずっと傍にいてくれたんだ)

亮だって久し振りの帰宅でゆっくりしたかっただろうに

ずっと私の看病していてくれた

悪かったなぁって思う反面ずっと傍にいてくれて嬉しいとも思えてしまった

(喉、乾いたな)

きっと寝ている間に汗を沢山掻いたんだろう

(熱も下がったみたいだし)

亮を起こさないようにそっとベットから身を起こす



「何これ.............................」

台所を見て絶句してしまった

まな板の上に転がっているいくつもの

それは皮と実の厚さがほぼ一緒という素晴らしい代物に変わり果てているものばかりだった

ついでに言うならいくつかの血痕もある

「.......................」

どうりでカレーに具がないわけだ

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ハイホー☆
なんだか突発的に書き上げてしまった過去話でした
あんまり意味は無いし(^^;)
以前「はらまた本舗」のりいたさんに頂いたカレーとみかみんがモデルなんです。実は・・・
                          4月11日 砂来陸