「で、結局どうなったの?」
「携帯買ってご飯食べて寝てたら夜中に急患って呼び出された。おしまい」
「携帯は?」
「・・・これ」
鞄からまだ傷一つない携帯電話を取り出す
「最新型じゃない!これウソップが欲しがってたのよねー」
性能について色々聞かれるが全くわからない。電話とメールが出来ればそれで良いのに
目の前で嬉々として携帯を弄るナミにはつまらなさそうにカプチーノを飲んだ
囲って息も出来ない
「・・・で結局トラ男からのプレゼントな訳ね?」
「押し付けるをプレゼントって訳すようになったならね」
負い目を感じたまま携帯ショップに行ったのが間違いだった
ぶすくれたにナミは笑う
「男からのプレゼントに喜んであげるのも良い女の条件よ」
「私は良い女じゃない」
「まぁ確かにトラ男はやり過ぎね。」
ナミはの数少ない友人だ。
新しい携帯を使い始めて一番に連絡をくれたのはナミだった。というか前の携帯が死んでからナミは散々メールと電話を繰り返していたらしい。
謝ったがとにかく顔を見せなさいの一点張りで今日は久々の外でランチだった
常にお財布が侘しいは渋ったが・・・
「ナミすわーんちゃーんデザートお持ちしました!」
「ありがとサンジ君」
格安でランチできるお店を知ってるのよ。と連れ来られてみればこれまた元同級生がいた
「ん・・・美味しい」
「お代わりもあるからね!」
ウインクと共に投げられた言葉に苦笑いしてしまう
「殆どタダなのにお代わりなんて出来ないよ・・・」
「良いの良いの。今日は試作品会を兼ねてんだから」
相変わらず女の子に優しいなぁ。ナミはともかく私は愛想も何もないのにサンジ君は優しかった
「サンジ君はフェミニストだけどトラ男はにだけ優しいものね」
「・・・ローが優しい?」
わがままだったら分かるけど優しい・・・?
「だからアンタにだけ優しいからにはわかんないわよ」
横でサンジも同意している。更には膨れっ面になりナミとサンジは顔を見合わせて笑った
は残念な美人だ、と言うのはナミである。
恐ろしく変な男に言い寄られやすい
登下校中のストーキング、靴箱いっぱいの盗撮写真、彼女の借りた本を全て後追いするという珍業を行うものもいた。
勿論中にはノーマルな告白をする者もいたが時既に遅し。は恋をまるで疫病のようだとすっかり冷めていた。
性格はさっぱりしていて実は口下手。善くも悪くも飾らない。つまり気が合った。
『って好きな人とか居ないの?』
放課後、珍しくが残っていた時の話だ
ナミの問い掛けには首を傾げた
恋とか良くわかんないと言う
『ローを見てると男とかいらないって思うし』
ぽつりと呟いた言葉に思わず目を見開いた
誰よそれ!?
ここでに年上の幼なじみがいたことを知った。
好奇心から紹介して貰った時はこう思った
(成る程。同級生に見向きもしない訳だわ)
当時高校生だったトラファルガー・ローは校則破りのピアスにイレズミ。それでいて成績は学年トップ。
何よりイケメンだった(少々悪人面だが許容範囲だ)
物心ついた時から一緒だったというからは知らず知らずのうちに面食いになっていたに違いない
『の友達か』
おまけに声も良いんですか。そうですか。
『お前に友達いたんだな』
『いるよ!失礼な』
『ナミって言ったか?よろしく頼む』
そう言ったトラファルガー・ローは噂の二割増しくらいにイケメンだった(つまり悪人面がナリを潜めていた)
「ナミ!」
「え」
「アイス溶けちゃうよ」
パチリと瞬きをすると目の前にはが不思議な顔をして
「ア・イ・ス」
「あ、」
「何か考え事?」
慌ててアイスを掬うナミには首を傾げた
「ん、ちょっとね・・・とトラ男の関係について」
「・・・幼なじみだよ」
「初めて会った時からずーっと不思議だったのよ。二人が恋人じゃないことがね」
何故っては年上の幼なじみを大変慕っていたし傍目に彼も彼女を特別扱いしていた
そしてこの話題は一気にを不機嫌にさせた
「ローにはいっつも彼女がいるよ」
そう。トラ男は常に女を・・・とっかえひっかえしていた。モテる男というか女の敵というか。
「どんなに彼女がいてもは大事にされてたじゃない」
特にが引っ越した辺りから彼はを甘やかし始めた。高価なプレゼントが増えたのもそうだ。これを甘やかされてると言わないでどうする!
「私はローみたいな彼氏いらない」
ますます不機嫌そうな顔になったに思わず宥めるような声になった
「なんだかんだ言っても私、トラ男には感謝してんのよ。あいつが居なきゃと再会できなかったんだから」
高校3年秋にが突然転校してしまった時、の連絡先を教えてくれたのは他でもないトラファルガーローだった
「まぁちょっとのこと甘やかしすぎだと思うけど。もトラ男のこと大事にしなさい」
何となく、その話題はそこで終わった
+++
「またね」
「今度はみんなで集まりましょ」
ひらひら手を振ってはナミの後ろ姿を見送った
そして小さくため息をついた
友達はみんな私がローに甘えてる、という
それを肯定しないで苦く笑うのはただ2人
ペンギンとシャチだ
ナミは知らないのだ
私とローには触れられたくない部分があることを